最後までアクションの波状攻撃をやめないサービス精神に満ちた作品だった。(点数 50点)
(C) 2010,UNIVERSAL STUDIOS,GRAND PLENTIFULL HOLDINGS GROUP LIMITED.ALL RIGHTS RESERVED.
まるでヒップホップのように宙を跳ね、床で回転し、思わぬ角度とタ
イミングで拳を放ち脚を飛ばす。物語は、そんな予測不能な酔っ払い
の動きをカンフーの必殺技に昇華した男の有為転変の人生を追う。軍
を率いて戦場を駆け巡ったプロローグ、復讐のために武術鍛錬に励む
中盤、そして酔拳の創始者となる終盤まで、それぞれ趣向を変えて描
く。中国武術とは、単に肉体的トレーニングのみならず、気を高め、
哲学的思考を伴って初めて身につけることができるのだ。
この映画の批評を読む »
クライマックスは二転三転、もちろんアッと驚く結末が用意されているのだが。。。(点数 40点)
(C)2011 フジテレビジョン/東宝/電通/ポニーキャニオン/日本映画衛星放送/アイ・エヌ・ピー
スキーリゾートのホテルに残された日本人の死体に巨悪の臭いを感じ
取った3人の男女。パリ、アンドラ、バルセロナ、アンダルシア・・・
物語は舞台は南欧を転々とし、事件は壮大な国際犯罪に結びついてい
く。ところが、屋上屋を重ねた構成はどこかちぐはぐで、主人公が謎
をひとつずつ解決して核心に迫る過程もぎこちない。そういった脚本
の欠点もスピーディに展開させればごまかせるのだが、結局話がもた
ついてエピソードが間延びしてしまう。唯一、断崖の上に建築された
ロンダの街と中心部に架かる巨大な石橋の俯瞰だけは目を見張ったが。
この映画の批評を読む »
映画はウスバルの苦悩を浮き彫りにすることで、思い通りにならい“人生”の真実に迫っていく。(点数 60点)
(C)2009 MENAGE ATROZ S. de R.L. de C.V., MOD PRODUCCIONES, S.L. and IKIRU FILMS S.L
世界は苦痛にあふれ、死の影が濃厚に付きまとう。意に沿わないハプ
ニングでイライラが募るなか、それでも主人公は己が生きた証を残そ
うと、気力を振り絞って関わった人々のために奔走する。血尿、失禁、
そして気を失うほどの痛み。もはや与えられた時間はあとわずか、彼
が最期の時を有意義なものにしようとする過程は無様でみじめで薄汚
く、むしろ意向とは逆の結果をもたらしたりする。物語はドラッグ・
離婚・不法就労といった現代欧州が抱える社会問題を背景に、少しで
も未来に希望をもたらそうとする男の姿を描く。
この映画の批評を読む »
映像は彼女たちの人間らしさを前面に出し、生きている素晴らしさを謳いあげる。(点数 50点)
(C)2011「デンデラ」製作委員会
「めでてぇの~」と白装束を着せられて雪深い山に運ばれる老女。体
は動くのに、時期が来たからと村を追い出される。彼女自身、先にあ
るのは“死”だけと知りつつも無理矢理“極楽浄土”が待っていると
思い込もうとしている。まだ死にたくない、寒いのや痛いのはイヤ、
そういった本音を押し殺して運命を受け入れようとする彼女の姿が哀
しい。物語は姥捨ての犠牲になった彼女の「その後」。“一度死んだ”
者の生命力は強く、因習から解放された老婆たちはたくましく美しい。
この映画の批評を読む »
エンドロールが象徴する、“映画”そのものに対する愛情があふれる作品だった。(点数 80点)
(C) 2011 PARAMOUNT PICTURES ALL RIGHTS RESERVED.
家族が寝静まった深夜、自宅を抜け出して友だちと合流する5人の少年
と1人の少女。誰もいない小さな駅で始まる8ミリ映画の撮影は“大人
には教えたくない秘密”のワクワク・ドキドキ感がいっぱいだ。期待
と不安、そして自分たちが特別な何かになったかのような優越感など、
そろそろ親の束縛から自由になりたい少年少女たちの少し背伸びした
い思いが共感を呼ぶ。そこで生まれるのは、秘密を共有した者だけの
固い友情とほのかな恋心。さらに偶然「見てはいけないもの」を見て
しまった強烈な体験は、彼らの絆をより深くする。
この映画の批評を読む »
普段から身だしなみをきちんと整えていなければ恋も運命も引き寄せられない事実を実感する。(点数 50点)
(C) 2010 CJ Enertainment Inc. All Rights Reserved
初恋の人への思いを引きずっていて、いつまでたっても結婚できない。
そんな、ときめきを忘れてしまった三十女が仕事に打ち込んでしまう
心情がリアルだ。映画は、若いころの出会いを運命と信じ現実から逃
げているヒロインと、彼女のために“初恋の人探し”を請け負った男
との珍道中をコミカルに描く。いつもノーメークで作業着の彼女を見
ていると、普段から身だしなみをきちんと整えていなければ恋も運命
も引き寄せられない事実を実感する。
この映画の批評を読む »
もう少し登場人物の内面にまで踏み込んでいれば物語に深みが出たはずだ。(点数 40点)
(C) 2010 Black Monday Film Service, LLC. All rights reserved.
心を惑わす不思議な光に吸い寄せられ、人智を超えた圧倒的なパワー
になすすべもない。ミサイル攻撃も効果はなく、破滅の淵に向かって
逃げまどう。「地球が静止する日」の中で「二つの文明が遭遇したと
き、劣る方は滅ぼされるか奴隷にされる」というセリフがあったが、
この映画における地球のシチュエーションはまさに劣る方の典型。襲
い来るエイリアンには情けなど一切なく、ただ人間を資源として消費
する。その「劣る方」が感じる恐怖や無力感、そして最後まで捨てな
い誇り、それらは近世の欧州列強によって植民地化・奴隷化された新
大陸やアフリカの原住民の絶望そのものだ。
この映画の批評を読む »
心理描写がいかにも回りくどく要領を得なかった。(点数 40点)
(C) 2011「東京公園」製作委員会
血のつながらない姉、幼なじみの娘、ベビーカーを押す母親……。い
まだに将来の行き先を決めきれずにいる大学生が、彼女たちとの関わ
り合いの中で本当に己の人生に必要なものは何かを問いかけていく。
ところが、あまりにも曖昧で思わせぶりなシーンの連続は、答えなど
ないことをごまかすための手段にしか見えない。若い登場人物たちは
それぞれに“死”を身近に感じてはいる。だがその影が実生活に深い
影響を与えているわけではなく、生きている者同士で慣れ合っている
にすぎない。
この映画の批評を読む »
自分の人生はひとりだけで生きてきたのではない、多くの人々と関わって生かされてきたのだと気付く。(点数 70点)
(C) 2010 TWENTIETH CENTURY FOX
強靭な意志は時として人間に限界を超えた力を与えてくれる。身動き
がままならない状況を独力で切り抜けなければならない。襲い来る渇
きと空腹、痛みと絶望、映画は砂漠に取り残された主人公の壮絶な体
験を客観視するとともに、彼の脳裏に浮かぶ楽しかった思い出とこれ
から歩むであろう未来を映像化していく。そこにあるのは生まれ、今
まで生きてきたことへの感謝。明るい性格ではあるが、干渉を嫌い群
れるのを潔しとしない彼が、自分の人生はひとりだけで生きてきたの
ではない、多くの人々と関わって生かされてきたのだと気付く。
この映画の批評を読む »
本能というべき食べたい衝動を原点に立ってみつめなおす姿勢が好ましい。(点数 50点)
人はなぜ食べるのか、なぜ食べないといけないのか。飢餓から解放さ
れた21世紀の東京において“生きるため”という答えに意味はない。
調理する者、食事を拒む者、幸せそうに食べる者、一度呑み込んだモ
ノを吐きだす者、映画は3組の男女の「食」にまつわるスケッチを元に、
人と食べ物の関わりを描こうとする。原始より、人間は食べ物を巡っ
て争い、胃袋を満たして命の喜びを感じてきた。その本能というべき
食べたい衝動を原点に立ってみつめなおす姿勢が好ましい。
この映画の批評を読む »
極限状態における人間のメンタルだけで一本の作品を作ってしまうそのアイデアに敬服した。 (点数 80点)
(C) 2009 ALL RIGHTS RESERVED.
まったくの運任せ、プレーヤーが感じる無限の恐怖と緊張がスクリー
ン全体に漲っていく……。サークル状に並んだ17人の男が、それぞれ
前に立った男の後頭部に銃口を当て、ランプの点灯と共にトリガーを
引く。6分の1、3分の1、2分の1、3分の2、回を重ねるごとに死の確率
が上がり、脳みそが吹き飛ばされるか否かはすべて偶然に左右される、
そんな命がけのゲームに駆り出された男の心情が手に取るようにリア
ルで、思わず息を詰めて椅子から身を乗り出してしまった。
この映画の批評を読む »
時折挿入される“怪物目線”のショットは思わせぶりなだけで伏線として機能していない。(点数 40点)
(C) 2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
森や草原で共に過ごした幼い日々は遠く過ぎ去り、ヒロインはたくま
しく成長した青年と恋に落ちる。しかしそれは母が決めた結婚に背く
許されざる行為。ふたりは自分たちの未来をつかむために手に手を取
りあって村を出る。ところが、彼女の姉の死で駆け落ち計画はあっさ
り中止、その後は人間対人狼のぬる~い闘いに終始する。だが、人狼
の造形がいかにも安っぽく見える上に、時折挿入される“怪物目線”
のショットは思わせぶりなだけで伏線として機能していない。
この映画の批評を読む »
疑心暗鬼の中で言葉は鋭い刃となり、拳銃よりずっと強力に、人間を動かす武器になりうる恐ろしさをこの作品は教えてくれる。 (点数 70点)
(C) CINEMANX FILMS TWO LIMITED 2009
2人の犯罪者と1人の被害者、用意周到・完璧に練られた計画がわずか
なミスが原因でほころび始めるとき、3人の胸に秘めた企みが暴走する。
映画は誘拐犯と人質の3人のみで構成され、ほとんど会話だけで進行す
る。秘密と嘘そして罠、言葉という毒が登場人物の心に広がり、蝕ん
でいく様子が非常にリアルだ。若い犯人の苛立ちを“トイレの水に流
れない薬莢”で表現するあたり、小道具の使い方も洗練されている。
この映画の批評を読む »
精神的な成長こそが、この作品の真のテーマではないだろうか。(点数 70点)
X-Men Character Likenesses TM & (C) 2011 Marvel Characters, Inc. All rights reserved. TM and (C) 2011 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
人とは違う特別な能力があるゆえに異端視され、時に敵視される。だ
からその能力を隠し息をひそめて暮らさなければならない。映画はミ
ュータントたちが歩む苦難の歴史にスポットを当て、真の敵は人間の
胸に潜む未知なるものに対する偏見や恐怖心であると喝破する。見た
目がノーマルな者は能力を制御できればごまかせる、だが、姿形その
ものが突然変異の結果と分かる種類のミュータントにとって、生きる
ことは人目を避け続けるのと同じ。そんな、外見にコンプレックスを
抱くミュータントの苦悩と葛藤がリアルに再現されている。
この映画の批評を読む »
さや侍 - 福本次郎
主人公と協力者がネタを思いつき芸に昇華させる過程で、松本人志は“笑い”の本質に迫っていく。(点数 50点)
(C) 2011「さや侍」製作委員会
刀はないのに、その鞘だけは決して手放そうとしない。それは戦いを
避けてきた男に残った最後の希望。そして彼は、誇り高く死ぬために
道化になり、道化を続けて誇りを取り戻していく。映画は切腹の代わ
りに慣れない一発芸を披露する侍と彼の娘を通じ、親子の関係の中で
真剣に人生に向き合う姿を描いていく。主人公が生みだす凍りついた
場の空気はそのまま現代の芸人たちが無名時代にライブで体験してき
た試練。彼と協力者がネタを思いつき芸に昇華させる過程で、松本人
志は“笑い”の本質に迫っていく。
この映画の批評を読む »