やはり持つべきものは友、言い古されたことをさらりとしかししみじみと感じさせる。(点数 70点)
(C)2011 IWC Productions, LLC
5年後生存率が50%なのに、実感がわかずどこか他人事のよう。母親は
過剰に干渉し、恋人は逃げ出してしまっても、対応に追われる自分を
別の自分が観察しているかのごとき距離感が心地よい。そんな、いつ
もはにかんだ笑顔で感情をコントロールし、なるべく周囲に迷惑をか
けまいと振る舞う主人公の心情が濃やかに描きこまれる。もちろん死
ぬのは怖い、だがじたばたする姿を見せるのもみっともない。重篤な
病に侵されながらも事実を受け止め、悲壮感を漂わせず淡々と治療を
受けていく過程が清々しい。
【ネタバレ注意】
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3Dへの変換が体感型ゲーム機のシュミレーターに乗っている気分にさせてくれる。(点数 60点)
(C)2011 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
ちりばめられた財宝への手がかりは謎に満ち、容赦なく襲いかかって
くる敵は何度撃退してもまた姿を現し、目くるめくカメラワークは疾
走するバイクのスピード感と飛行機が空中を舞う浮遊感を味あわせる。
映画は、息もつかせぬ展開で観客の目を釘付けにしようとする「レイ
ダーズ」シリーズで徹底的に追及してきた冒険活劇の神髄を、洗練さ
れた表現技術でスクリーンによみがえらせる。デジタル合成でハイパ
ーリアルに再現された小道具や背景は実物以上の質感を持ち、登場人
物の所作や感情もより細かい筋肉の動きで見せ、人間の目では処理し
きれないほどの膨大な情報量だ。
【ネタバレ注意】
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触れると切れるギラギラした肉体性は危うさと脆さの両刃の剣、狂気が正気とも思える感覚を見事に体現していた。(点数 40点)
(C)2011「ハードロマンチッカー」製作委員会
顔が腫れあがっても殴り続け、のた打ち回っても蹴り続ける。時に鉄
パイプや金属バットでぶちのめし、女でも手加減しない。喧嘩の強さ
がものをいう荒れ果てた町、己の腕力と度胸を頼りに生きる一匹狼。
その研ぎ澄まされた目はいつ暴走のスイッチが入るかわからない危険
を孕んでいる。映画はそんな主人公の殺伐とした日常に観客を放り込
み、まるで異邦人のごとく方向性不明の不安を味わせてくれる。
【ネタバレ注意】
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戦争映画とスパイアクションを融合したスタイルのプレゼント配布大作戦は、圧倒的なスリルとスピード感で見る者の目を引き付けて離さない。(点数 60点)
夜空を覆い尽くす巨大なステルス機から数百人のレンジャー隊員が街
に降下、窓や煙突から民家に忍びこんでロックを解除して、子供たち
が寝静まった部屋にプレゼントを置いて誰にも見つからずに撤収する。
戦争映画とスパイアクションを融合したスタイルのプレゼント配布大
作戦は、圧倒的なスリルとスピード感で見る者の目を引き付けて離さ
ない。映画は、クリスマスイブの夜、世界中の子供たちの願いを叶え
るサンタクロース一家と妖精たちの奮闘ぶりから、ブランドイメージ
を守る大切さを説く。
【ネタバレ注意】
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日々の出来事にはすべて人の思いがこもっていることを思い出させてくれる作品だった。(点数 60点)
(C)2011「RAILWAYS2」製作委員会
妻を労ってやるのが思いやりと考えている夫、しかし妻が求めていた
のは優しさなどではなく夫の理解。家族のために頑張ってきたと信じ
ている彼と、これからは自分のために時間を使いたい彼女は、それぞ
れが転機を迎えて決断を下す。峻嶮な山脈が町に迫り、単線を2両電車
が走る田園、そして人々の小さな日常。平凡な人生にもひとつひとつ
にドラマがあり、日々の出来事にはすべて人の思いがこもっているこ
とを思い出させてくれる作品だった。
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コミカルな演出とエスプリのきいたセリフで最後までテンポよく楽しませてくれる作品だった。 (点数 60点)
(C)2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
テーブルの下で足を絡ませ、磨き上げた靴のつま先で囁きあう男と女。
ディナーの後の愉しみを先取りするかのようなエロティックなショッ
トの直後、冴えないスニーカーを履いた男の足が映される。もちろん
会話は弾まず女は退屈している。そんな、男の魅力磨きを怠った夫を
見限った妻の苛立ちを足元のみで表現する導入部はセクシーなほど洗
練され、たちまち物語の中に引き込んでくれる。
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絶望と死の影に押しつぶされそうなゆっくりとしたテンポの映像からは、繊細な主人公の喪失感が重くのしかかってくるようだ。(点数 70点)
(C)2011「アントキノイノチ」製作委員会
遺品に焼き付けられた故人の思い、それは残された者に思い出となっ
て直接語りかけてくる。愛した記憶、愛された記憶、忘れていた場面
が脳裏によみがえる時、人は命のつながりを感じるのだ。一方で、無
念をいだたまま死んだ人、過去を共有する血縁者のいない人もいる。
それでも、他人に覚えていてもらうことで、確かに存在したという証
を残す。物語は、心が壊れた青年が遺品整理の現場で働くうちに、す
べての人間は誰かと繋がっていると気づいていく過程を描く。絶望と
死の影に押しつぶされそうなゆっくりとしたテンポの映像からは、繊
細な主人公の喪失感が重くのしかかってくるようだ。
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頭を丸めて煩悩を払おうとする候杰の決意は、人は何歳になってもやり直せることを教えてくれる。(点数 60点)
(C)2011 Emperor Classic Films Company Limited All Rights Reserved
拳銃や小銃を持った兵士に対しても手にする武器は棍棒や剣。武術鍛
錬を通じて己を高めようとする僧たちは、圧倒的な不利にもかかわら
ず敵に背中を見せない。それは西洋の物質文明には屈しない、科学力
では劣っていても4000年の歴史を持つ文化の力では決して負けていな
いという中国人の矜持。革命と内戦・欧米の介入、時代の荒波は外界
とは隔絶した寺院の中で修業を積む僧たちにも襲い掛かり、容赦なく
戦乱に巻き込んでいく。
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結婚を目の前にした男の、「この女でいいのか」の気持ちがリアルだ。(点数 50点)
(C)2011 Kino Films. All Rights Reserved.
気がつくと3人の女が婚約者になっている。美しく頭脳も明晰な完璧な
同僚、セクシーでさばさばした性格の風俗嬢、古風で尽くすタイプだ
がずれている人形劇師。それぞれに魅力を感じつつも、誰が本物の婚
約者か見当がつかない。映画はそんな主人公の幸せな災難をコミカル
に描く。なくした記憶を取り戻すために彼女たちと愛を確認していく
姿は、まさに彼自身の自分探し。その過程で、1人を選べない心の弱さ
が露呈していく。決められないのは逃げているだけ、結婚を目の前に
した男の、「この女でいいのか」の気持ちがリアルだ。
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少し己を客観視できず感情を抑制できないおばさんをレスリー・マンヴィルが好演。(点数 70点)
(C)2010 UNTITLED 09 LIMITED, UK FILM COUNCIL AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION
まるで沈黙を恐れるかのように絶え間なくしゃべり続ける中年女。寂
しさを隠そうとしている反面、孤独な心を理解してもらいたいと強く
願っているようでもある。夢はあった、そして叶った、しかし現実と
いう嵐の前で徐々に色あせ、ついには無残に壊れてしまった。映画は
そんな彼女の心境を赤いクルマで象徴する。きっといい人なのだろう、
ただ少し己を客観視できず感情を抑制できないおばさんをレスリー・
マンヴィルが好演。まだまだチャーミングだと思い込んで頑張ってい
るけれど、どこかズレている女心のイタさと哀しさを見事に表現して
いた。
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当時の中国の文化・文明の洗練度の高さを再現する作業は難しかったに違いない。 (点数 60点)
(C)2009 DADI CENTURY(BEIJING)LIMITED ALL RIGHTS RESERVED
学識と武術を兼ね備えた中国思想家の太祖、彼の目はすべてを見通す
一方で、あらゆるものを包み込む懐の深さも併せ持つ。物語は、そん
な主人公が政に参加し、広く自身の思想を敷衍ようになった中年以降
にスポットを当て、人と人・人と社会の関わり合いの基本となる道徳
はいかにして生まれ流布されたかを描く。経世済民とは見識の高い者
が一般庶民をより幸福へ導く道。少数のエリートが国家を統治する中
国の伝統は2500年も前に確立されていたと思うと、衆愚政治に陥って
いる今の日本の“民主主義”に疑問を持たずにはいられない。
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現代のプロ野球界がいかにマネタリズムに蝕まれているかがよくわかる作品だった。(点数 60点)
(C)Columbia TriStar Marketing Group, Inc. All rights reserved.
ファンのノスタルジアを刺激する野球の魅力とは一線を画し、過去の
データだけを頼りに選手起用を決断する主人公。少ない予算で才能の
ある選手を集め結果を導こうとする手法は、チームを強くする情熱に
はあふれていても、野球に対する愛情は感じられない。それは若き日
に大志を抱いてプロ入りしたにもかかわらず選手としては大成しなか
った者だから到達できた、“ビジネス”の感覚から生まれたものだ。
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追い詰められた人間が次第に本性を露わにしていく様子がスリリングだ。(点数 40点)
(C)2011 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED
逃げ場のない施設で作業員たちが謎の怪物に次々と襲われる。外部と
の通信は途絶え、協力し合わなければならないはずの仲間に秘密を隠
している者がいる。未知の生物からの攻撃とクルーの間に芽生えた疑
心暗鬼、物語は2つの恐怖と戦う人々のサバイバルを通じて、勇気や責
任感といったリーダーの資質を問うていく。命の危険を顧みない者、
足手まといになる者、身勝手な者、極限状態に追い詰められた人間が
次第に本性を露わにしていく様子がスリリングだ。
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高齢化社会の理想像を示したいのならば、せめて空の青さや芝生の緑、木のぬくもりが感じられる鮮やかな映像で見せてほしかった。(点数 40点)
(C)2011「シェアハウス」製作委員会
広々とした吹き抜け、会話が弾む楽しい食卓、パーティに息抜きにた
びたび利用される見晴らしのいいバルコニー、そして何よりお互いを
思いやる友情以上愛情未満・男子禁制の心地よい他人との距離感。寡
婦、離婚、恋愛下手、挫折など様々な理由でひとりっきりになった女
たちが、孤独を癒すために一つ屋根の下で同居を始める。干渉しすぎ
ないようにしているつもりでもいつしか家族のように心配になってい
く、その気持ちの変化が温かい。
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恋の罪 - 福本次郎
性と生の地獄を見た主婦が体験する禁断の解放感と心の闇を通じて、人間の本質に迫る。(点数 70点)
(C)2011「恋の罪」製作委員会
たとえ性欲でしかなかったとしても、他人から求められ必要とされる
快感に目覚め、期待に応えようとするヒロイン。異様なまでに潔癖な
夫との上品な生活、その一方で生きている実感には乏しい。そんな主
婦が落ちた陥穽は底なしの深さで彼女の本性を解き放つ。映画は、昼
間は大学助教授・夜は売春婦の顔を持つ女に、性と生の地獄を見た主
婦が体験する禁断の解放感と心の闇を通じて、人間の本質に迫る。
【ネタバレ注意】
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