◆ストーリーが進むに連れてじわじわと心にしみてくる(70点)
「ボルベール<帰郷>」(2006年)のペドロ・アルモドバル監督が、全幅の信頼を寄せるペネロペ・クルスを主演に起用(ふたりが組むのは4度目)。スペインならではの極彩色に彩られたスクリーン上で展開されるのは、愛と嫉妬と憎悪と復讐が渦巻く濃厚なドラマだ。
◆ストーリーが進むに連れてじわじわと心にしみてくる(70点)
「ボルベール<帰郷>」(2006年)のペドロ・アルモドバル監督が、全幅の信頼を寄せるペネロペ・クルスを主演に起用(ふたりが組むのは4度目)。スペインならではの極彩色に彩られたスクリーン上で展開されるのは、愛と嫉妬と憎悪と復讐が渦巻く濃厚なドラマだ。
◆母性愛と友情を内包したヒューマンドラマ(85点)
気鋭の女性監督コートニー・ハントの初長編監督作品となる「フローズン・リバー」は、低予算のインディペンデント作品ながら、2008年のサンダンス映画祭でグランプリに輝くほか、第81回アカデミー賞(2009年)では、デビュー作にしてオリジナル脚本賞にノミネートを果たすなど、世界中で高い評価を受けた。
◆家族の絆が薄れつつあるこの時代に、改めて家族のあり方を見つめさせてくれる"人間讃歌"の秀作(80点)
日本映画界を代表する巨匠、山田洋次監督が「十五才 学校IV」(2000年)以来、10年ぶりに撮影した現代劇「おとうと」は、そのキャリアにおいて常に日本の家族と、その精神性を描き続けてきた山田監督の集大成的な1本。涙あり笑いありの感動作だ。
◆白黒をはっきりさせたがる大人には向かない作品(55点)
27歳の書店員、夏樹(佐藤江梨子)は、本好きを買われ、「愛のわからないひとへ」というコーナーを任されていた。ある日、夏樹は万引きをしたはずの女性を捕まえるが、彼女のかばんからは何も出てこなかった。店長共々、女性の家に出かけて謝罪するも、女性の夫の怒りを買ってしまう。ところが翌日、女性の息子、光治(柳楽優楽)が書店にやってきた。彼は夏樹や店長に、もう謝りに来なくていいと伝えるが……。
◆何が飛び出してくるのか予測不能(60点)
ヒース・レジャーの遺作になったことに加え、撮影途中で急逝したヒースの代りに、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルという3人の人気俳優が撮影に参加。誰もが予期しないところで注目を集めてしまったテリー・ギリアム監督の最新作。ヒースの急逝で万事休すかと思いきや、幸いにも「Dr.パルナサスの鏡」は、「現実世界」と「鏡の向こうの異世界」というふたつの世界をもつ物語で、ヒースが亡くなったのは「現実世界」の撮影を終えた直後だったという。
◆これまでの海洋ドキュメンタリーとは一線を画す(75点)
海に住む生き物たちの行動にカメラが迫ることの難しさは想像に難くないが、本作「オーシャンズ」は、生き物たちのありのままの生活ぶり、その決定的瞬間を「CGではないのか?」と勘ぐりたくなるほどのタイミングと距離でカメラに収めている。海洋生物だけでなく、その映像演出の巧さ、美しさにも注目したい1本だ。
◆これぞキング・オブ"トンデモ"な結末(55点)
舞台は昭和初期。すでに2度脱獄経験のある囚人、鈴木雅之(板尾創路)が信州第二刑務所に移送されてきた。その後も彼は、独創的な手法を駆使して、次々と脱獄を成功させる。世間は彼のことを"脱獄王"と呼んだが、なぜか彼は毎回脱獄直後に、しかもきまって線路上で捕まってしまうのだ。看守長の金村(國村隼)は、そんな鈴木に興味をもつ。果たして脱獄をくり返す鈴木の本当の目的とは?
◆SFの醍醐味を十分に味わわせてくれる(90点)
ときは22世紀。車いす生活を余儀なくされていたジェイク(サム・ワーシントン)は、事故死した双子の兄に代って、地球から5光年離れた衛星パンドラへ向かった。彼は特殊な装置を使って、人間と現地人のナヴィ族のハイブリッドであるアバター(分身)なるものへ意識をリンクし、その肉体を自由に操ることに成功した。ある日、アバターの肉体を借りて森を探索していると、ジェイクは獣のヴァイパー・ウルフに襲われそうになる。が、運よくナヴィ族長の娘ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)に助けられて……。
◆ふたりが生涯のパートナーとして絆を深めて行くくだりが感動的(70点)
1837年のイギリス。ときの国王ウィリアム(ジム・ブロードベント)は病に苦しみ、自身の死を予感していた。王位継承者のヴィクトリア(エミリー・ブラント)はまだ十代で、母から摂政政治を承認するように迫られていたが、これを断固拒否し続けた。そんな折、ヴィクトリアは、ベルギー国王の甥、アルバート(ルパート・フレンド)と出会う。ヴィクトリアは、誠実で公正中立なアルバートに惹かれ、少しずつその距離を縮めていくが……。
◆混じりけのない壮大な大自然と、清濁を併せ呑む人間。そのコントラストが、見る者の心をゆさぶる(85点)
"神が住む山"と称されるチベット山岳地帯の秘境"ココシリ"──。海抜4700m、零下20℃、空気濃度は地上の1/3という想像を絶する過酷な大自然を舞台にくり広げられる物語。実話に基づいた見ごたえのある骨太映画である。
◆心に残るものがあまりに微量(40点)
「銀河鉄道999」や「鉄腕アトム」などの名作を手がけてきた日本アニメ界の巨匠"りんたろう"が、「DETH NOTE」「時をかける少女」「サマーウォーズ」などを制作してきたマッドハウスとタッグを組み、「よなよなペンギン」を制作。ペンギンコートを着る少女ココが、勇気と愛をもって仲間たちを救う冒険ファンタジーだ。
◆ナチス統治下の重苦しい時代の空気感を巧みに表現している(70点)
1944年。ナチス占領下のデンマーク。ナチス・ドイツに対するレジスタンス(地下抵抗活動)の一員であるフラメン(トゥーレ・リハンハート)とシトロン(マッツ・ミケルセン)は、上層部からの命令にしたがって、ナチスになびいた売国奴の暗殺を実行していた。ある日、組織の上層部はフラメンの恋人ケティ(スティーネ・スティーンゲーゼ)を密告者と見なし、ふたりに殺害を命ずる。ところが、当のケティからは逆に「組織の上層部が自分たちに都合の悪い人間を『売国奴』としてフラメンとシトロンに殺させている」という旨を告げられる。ふたりは「自分たちは組織にだまされて、無実の人間を殺していたのか?」という罪の意識に呵まれ、しだいに疑心暗鬼になっていく……。
◆荒唐無稽ともいえる仮想空間を実写で表現した手腕はお見事(65点)
「イノセンス」(2004年)、「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」(2008年)などで知られる鬼才、押井守監督が、オンラインゲームの仮想空間に広がる大砂漠を舞台に、3人の美女ハンターとどう猛なモンスターの対決を活写。70分間、独創性豊かな押井ワールドが堪能できる実写SFアクション・ファンタジーだ。
◆デリンジャーを義賊たらしめている根源的な動機が見えない(60点)
大恐慌時代(1930年代)に実在した伝説のアウトロー、デリンジャーは、大胆不敵な銀行強盗であると同時に、強者をくじく義賊的存在として国民から英雄視された人物。そんなカリスマ犯罪者の逃亡劇に加え、美女ビリーとのロマンスをシリアスタッチで描いた作品だ。
◆終盤の凄惨な描写は、覚悟はしていても見るに耐え難い(75点)
アンジェイ・ワイダ監督の「抵抗三部作」と呼ばれている「世代」(1954年)、「地下水道」(1956)、「灰とダイヤモンド」(1958)と、本作「カティンの森」を見比べると、ワイダ監督が50年以上に渡って変わらぬ映画作りをしてきたことが分かる。氏の作品は、戦争を歴史的な記号として扱うことをヨシとしない。