果たしてこの演出でよかったのだろうか?(40点)
「自分探しの旅」が、ザックを背負って貧乏旅行をする沢木耕太郎の『深夜特急』のイメージだといえば、若い世代に“きょとん”とされるだろうか?
国が異なるからか、時代が異なるからか、はたまた性別のせいかなのか。ハリウッドの大物女優ジュリア・ロバーツを起用して描かれる「自分探しの旅」は、平穏な結婚生活を送り、お金も十分にあるキャリアウーマンが主人公。家族や仕事を投げ出して旅に出る主人公のメンタリティは、なんとも理解に苦しむ。ハタチ前後の小娘でもなかろうに。とはいえ、物質的にも環境的にも満たされている彼女が、説明のつかない「虚しさ」に襲われる心理は、意外に少なくない「満たされない症候群」を病む女性にはピンとくるかもしれない。
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◆ワレンチン自身が実体験を通じて、愛の本質を見極めていく姿勢がいい(70点)
スターやヒーローは、遠くの人には愛されるが、近くの人には恨まれる。よく耳にする話だ。肥大化しながら世の中を一人歩きする自分の虚像と、現実の自分(実像)とのギャップが生み出す皮肉のようなものである。
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東京島 - 山口拓朗
© 2010「東京島」フィルムパートナーズ
◆無人島が備える「極限状態」というアドバンテージをどぶに捨てたような作品(35点)
簡単に筋を説明すると、無人島に漂着した22人の男と1人の女。さてこのあとどうなるでしょう? という映画である。「22人VS.1人」という確信犯的な設定からも察しがつく通り、ドラマのキーマンは、紅一点の主人公、清子(木村多江)である。もし桐野夏生の原作を未読の方であれば、鑑賞前に、彼女がこの過酷な状況下でどのように生き抜くのか、予測してみるといいかもしれない(ただしその場合、この批評は読まないほうが賢明です)。
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◆本作ほど作り手の目論み通りに仕上がったドキュメンタリーも珍しい(80点)
アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞し、日本では上映中止問題で話題となった「ザ・コーヴ」。和歌山県太地町のイルカ漁に反対するクルーが撮
影したドキュメンタリーだ。
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◆綿密にドラマを練り上げた脚本家には、最大級の賛辞を送りたい(95点)
おもちゃにとびきり魅力的な個性を与え、彼らの日常(人間の目が行き届かない時間帯)をユーモアたっぷりに描くピクサー製作の「トイ・ストーリー」(第1作は1995年/第2作は1999年)。そんな人気アニメシリーズが11年ぶりに送り出した第3弾は、持ち主アンディとおもちゃ、双方向の「卒業」を描いた物語だ。
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◆クライマックスとなるユニオン社内での至近戦は、バイオレンス・アクションファンがヨダレを垂らすであろう壮絶さ(65点)
舞台は近未来のニューヨーク。世の中には人工臓器が普及し、誰もが「お金さえ払えば」人工臓器を装着することができる。心臓や腎臓、肝臓あたりまでかと思えば、人工臓器メーカーのユニオン社は、眼球や鼓膜、膀胱、関節までラインアップしている。なかには、体のありとあらゆる臓器を人工臓器に替えている強者も。それほど高度な医療技術をもつ医師がどれだけいるのか? 臓器移植による拒絶反応はないのか? そんな疑問に答える気などさらさらなく、映画は人工臓器ビジネスがスタンダード化した世界を描く。
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◆持ち前の美貌やスタイルにおごることなく、完璧なサービスを追求するプロフェッショナルな姿勢には脱帽せざるを得ない(75点)
「セックスと嘘とビデオテープ」(1989年)、「トラフィック」(2000年)、「オーシャンズ11」(2001年)シリーズ、「インフォーマント!」(2009年)などでおなじみのスティーヴン・ソダーバーグ監督が、主演に人気No.1ポルノ女優サーシャ・グレイを大抜擢した本作「ガールフレンド・エクスペリエンス」は、顧客に「恋人のようなひととき」を提供する高級エスコート嬢の日常を描いた物語だ。
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◆“ラブコメの女王”の異名を取るキャメロンの名前に釣られて劇場に足を運んだ人のなかには、あまりに予想外の結末に席から立てなくなる人もいるかも(65点)
舞台は1976年のヴァージニア州郊外。高校教師のノーマ(キャメロン・ディアス)とNASAに勤める宇宙飛行士志望のアーサー(ジェームズ・マースデン)夫妻は、ひとり息子と3人で仲良く暮らしていた。ある朝、自宅前に身に覚えのないボタン装置が置いてあった。
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© PFFパートナーズ=ぴあ、TBS、TOKYO FM、IMAGICA、エイベックス・エンタテインメント、USEN
◆演出にキレがある訳でもなく、ドラマ展開も冗長気味。汁系のユーモアに至っては完全にマニア好みだ。しかし同時に、息づかいと生命力が感じられる作品でもある(70点)
弱冠26歳の映画監督、石井裕也。「ぴあフィルムフェスティバル」のコンペティション第29回PFFで「剥き出しニッポン」がグランプリを受賞、アジアでは「第1回エドワード・ヤン記念 アジア新人監督大賞」を受賞するなど、国内外で高い評価を得ている注目の才能だ。
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© 2010 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
◆デジタルとアナログを巧みに使い分けた狼男のビジュアルは、いかにも着ぐるみ気分なB級路線とは一線を画し、狼男の野獣としての異様さを生々しく描き出す(70点)
1891年、ロンドン郊外の農村に建つタルボット城に、舞台俳優のローレンス(ベニチオ・デル・トロ)は帰ってきた。兄ベンの婚約者グエン(エミリー・ブラント)から、兄が行方不明になったとの連絡を受けたのだ。結局、兄は無惨に切り刻まれた死体となって発見された。ある満月の夜、ローレンスも野獣に襲われて重傷を負う。その日以来、ローレンスは満月の夜になると体が異状をきたす身となった。ローレンスは献身的なグエンに惹かれていく一方で、以前から確執のあった父ジョン(アンソニー・ホプキンス)の不可解な行動に疑念を抱きはじめる……。
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◆目新しさはないが、ひとりの少女の喜びと痛みを描いたオーセンティックな青春映画としてオススメ(75点)
「ハイ・フィデリティ」(2000年)や「アバウト・ア・ボーイ」(2002年)の原作者ニック・ホーンビィが、英国の辛口ジャーナリスト、リン・バーバーのとある回想録を脚色。監督に女流のロネ・シェルフィグ、主演に若手女優キャリー・マリガンを起用した本作「17歳の肖像」は、街並からファッションまで、1960年代の空気感をたっぷりと漂わせたイギリスを舞台に、大人の世界へと足を踏み入れる17歳目前の少女の成長と挫折を描いた秀作。キャリー・マリガンは、メリル・ストリープらオスカー候補者を抑えて、英国アカデミー賞の主演女優賞に輝いている。
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© 2008 - MNP ENTREPRISE - EXPLICIT FILMS
◆“狂気”という名の鼓動が聞こえてくる傑作だ(85点)
「ホテル・ルワンダ」(2004年)然り、「ツォツィ」(2005年)然りだが、貧困や紛争、暴力といったアフリカのリアルな社会問題に迫った映画には、しばしば打ちのめされる。それは、アジアの片隅で、貧困や紛争とは無縁の生活を送る私たちにとって、アフリカで起きている厳しい現実がまるで絵空事のように見えてしまう、その無自覚さに対する衝撃を含んでもいるのかもしれない。いずれにせよ、これほど強いインパクトをもつ作品が、全国の5つの劇場でしか見られないというのは、なんとも哀しいことである(現時点ではシアターN渋谷のみ)。
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◆意外性のあるミステリーのタネ明かしに加え、人類の未来に警鐘を鳴らしたストーリーテリングは、大胆な舞台設定の後押しもあって、ひねりの利いた作品を好む映画ファンを満足させるだろう(80点)
各地のインディペンデント映画祭で高い評価を受けた本作「月に囚われた男」は、かのロックスター、デヴィッド・ボーイの息子、ダンカン・ジョーンズが撮影した初長編監督作品。月で独りで暮らす男を主人公にしたサスペンスフルなSFミステリーだ。
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© 2009 by PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.
◆謎解きのプロットや結末に新味はないものの、「トラウマ」という人間心理を利用したミステリアスなストーリー展開と、スコセッシらしい力強い演出力が功を奏し、作品自体は手堅くまとまっている(75点)
「ギャング・オブ・ニューヨーク」(2002年)「アビエイター」(2004年)「ディパーテッド」(2006年)で3度コンビを組んだマーティン・スコセッシ監督×レオナルド・ディカプリオが、4度目のコンビ作品「シャッター アイランド」を完成させた。ふたりが挑んだのは「精神障害×犯罪者×孤島」をキーワードにしたサスペンス&ミステリー。「ミスティック・リバー」原作者デニス・ルヘインのミステリー小説を映画化したものだ。
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© 2010 浅野いにお・小学館/「ソラニン」製作委員会/写真:太田好治
◆映画が語るのは、夢と現実の板挟みにあいながら、悩み、傷つき、振り子のように心を揺らす若者たちの「命」そのもの(75点)
スタジオ練習を欠かさないバンドマンにしてフリーターの種田(高良健吾)。会社になじめずに入社2年目で辞表を提出した芽衣子(宮崎あおい)。ふたりは将来に不安を感じながらも、寄り添うように同棲している。あるとき、芽衣子に背中を押してもらうカタチで、種田は新曲「ソラニン」を創作。デモ音源をレコード会社に送るが、会社側の反応は厳しかった。追い打ちをかけるように種田の身に不幸がふりかかり……。
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