善と悪の間で心を引き裂かれるドラキュラは、混迷の時代に生きる我々にとって心を動かされずにはいられない(点数 87点)
(C)Universal Pictures
ドラキュラとオスマントルコの皇帝が会席する際、皇帝が貢ぎ物として千人の少年を差し出すようドラキュラに命じるが、ドラキュラはそれを拒む。
その時の「一緒にコーヒーを飲んだ仲ではないか」という台詞は、コーランでは依存性のある薬物は禁止されていたが当代のカリフがコーヒー好きだったため、コーヒーは禁止項目から除外されていた。
イスラム圏ではコーヒーは「アラブ人のワイン」の異名がある。
イスラム教国の人にとってコーヒーはアルコールの代替物なのだ。
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現代人の価値観を持つ主人公が生きる開拓時代の生き辛さをコミカルに描く(点数 87点)
(C)Universal Pictures
粗野な開拓時代の人間にはない繊細な現代人の感覚を持つアルバート(セス・マクファーレン)が開拓時代の人達を批判的な目線で嘆くストーリーが面白い。
西部劇を批判的によみといたパロディ仕立て。
世代間のギャップを笑うのが、バック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズ(以下BTFと略)だったが、観客が共感しやすいために主人公はどうしても現代人の感覚を持っていなければならないという時代劇の制約を逆手にとって明示的にパロディ化したのが本作である。
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異なる食の対立を通して描く、民族の融和 (点数 87点)
(C)2014 DreamWorks II Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.
村の長になる資格として村人を飢えさせないこと。なにか諍い事があれば当事者に腹いっぱいメシを食べさせて落ち着かせる。「食」は平和の別名である。
食べることは人の心を平和にする。料理は心を穏やかにするちからがある。
音楽に国境が無いように、料理も易々と国境を越える。
中国は世界を支配したわけでは無いが中華料理は政治の枠を飛び越えて世界を席巻している。それだけ食というものは普遍的でグローバルな要素を持っている。
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現代アメリカを象徴する家族の軌跡。(点数 85点)
(C)2014 boyhood inc./ifc productions i, L.L.c. aLL rights reserved.
道具を使って研磨したダイヤであれ、機械を使って研磨したダイヤであれ磨かれたダイヤであることには変わりがない。
素材の良し悪しはともかく完成した作品の出来そのものが評価される。
それが揺るがしようのない事実である。
映像作家は素材にこだわることがままあるが、いくら素材にこだわっても出来栄えとの因果関係はそれほど明確ではない。
素材が良くても失敗に終わった大作なら枚挙にいとまがない。
しかしながら12年間の撮影を通して家族の肖像を精緻に描いて見せた今作は成功であったと云える。
ストーリーに映画らしい起伏は無いものの大河のようにうねり、多くの時を呑み込んで生まれた今作は時間の経過と共に生じる人の『変化』と成長を上手く写実化している。
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荒唐無稽さに目をつむれば結構楽しめる作品。ノリの良い人向け。(点数 82点)
(C)2014 Universal Pictures
人間の脳が100%活動したにせよ、電波が可視化することは現実的にありそうも無いのだが、誰も経験したことが無い領域なので完全否定も出来ない。
だが、主人公の脳が覚醒するにつれ念動力が使えるようになるほか、テレポーテーションが出来るようになるのは、元々が、脳が活性化するだけの理由なのでリアリティがかなり希薄な感じがした。
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表舞台に出ているヒーローだけがヒーローではない。誰からも注目されない日陰のヒーローこそが真のヒーローなのかもしれない。(点数 87点)
(C)2014「イン・ザ・ヒーロー」製作委員会
『イン・ザ・ヒーロー』は『蒲田行進曲』を東映の視点で再解釈したものであり、ストーリーのポイントが似通っているのだが、コスチューム・プレイヤーに光り当てたのは仮面ライダーや戦隊ものを作ってきた東映ならではと言えるだろう。
これは縁の下の力持ちであるスーツ・アクターの労をねぎらうリデンプション・ソング(贖罪の唄)なのである。
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数あるソリッドシチュエーションサスペンスのなかでも平均点以上の出来映え。(点数 86点)
(C)2014 TF1 FILMS PRODUCTION S.A.S. – STUDIOCANAL S.A.
高度1万2000メートルの上空でNY発ロンド行きの旅客機がハイジャックされた!
飛行機に同乗する航空保安官のビル・マークス(リーアム・ニーソン)は携帯するページャーに脅迫のメッセージを受信するのだが、内容から判るのは犯人が機内に居ることだけ。
空港で待機中の際にも独りウィスキーをあおり、娘を喪った孤独を打ち消そうとするのだが、そんな緊急事態に本来の生真面目さを取り戻し、職務を遂行しようと我に返る。
だが、犯人の手掛かりは杳として知れず疑惑はビル本人にも向けられていく。アルコール依存症による心神耗弱か?
それとも、彼の言うように他に犯人がいるのか息つく間も無い展開の早さに固唾をのむ暇もない。
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この映画のなかで描かれる騒動は対岸の火事ではなく、どの国、どの地域にも当て嵌まる根源的な問題が含まれている。(点数 85点)
(C) 2012 Focus Features LLC. All Rights Reserved.
シェールガスは第3のエネルギー革命と呼ばれ、エネルギー供給の勢力図を塗り替える画期的なものだが、エネルギー供給を外部に頼っていた国が一転主要資源国になる変化が国内に様々な対立をもたらすことがある。
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未来に起こりうるプラトニックな恋愛(点数 87点)
Photo courtesy of Warner Bros. Pictures
以前のハリウッドでは異人種間の恋愛がテーマの作品が多かったが、今作では一歩踏み込んで人間と人工知能(AI)という肉体の無い恋愛が成立するのかその要件について肉薄している。
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CG(コンピュータ・グラフィック)無しのカースタントはビデオゲームの実写化である以上避けられない選択。(点数 85点)
(C)2014 DreamWorks ll. Distribution Co. All Rights Reserved.
主人公は逃げない。
ヒロインを置き去りにするようなカットがあるが実は逃げない。
親友の仇であっても見捨てない。
この映画が世界で先んじて公開され高い評価を得ている理由のひとつに主人公のヒロイズムにある。
もちろん超高級スポーツカーのスタントは見所なのだが、口数は少ないが熱いハートを持つ主人公にしびれる人もまた多いだろう。
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山椒は小粒でもぴりりと辛い。湯長谷の反骨心は福島人の誇りを呼び戻す(点数 86点)
(C)2014「超高速!参勤交代」製作委員会
東北地方の小藩、湯長谷藩は幕府から隠し金山の嫌疑を掛けられて5日間で参勤交代をするよう無理難題を押し付けられるというストーリーなのだが、現代風に言えば脱税を疑われて役所から廃業を迫られた会社が危機を乗り越えるという今でもありそうなストーリーが共感しやすい。
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翻訳とは全身全霊を賭けて取り組む行為であることが解るドキュメンタリー(点数 85点)
ドストエフスキーの大著を何冊もドイツ語に翻訳した翻訳者スヴェトラーナ・ガイヤーの文芸活動をつまびらかにするドキュメンタリー。
息子を見舞う母としての顔、孫達に囲まれて幸せの表情を見せる祖母としての顔。
そして時を超えてドストエフスキーと対峙する真摯な翻訳者としての顔。
どれも八十代とは思えない精気に満ちた表情だ。
ガイヤー女史がいかに自分の人生を全力で生きてきたのかが窺える。
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本来、クリエイターとは気難しいもの。そんな事情を垣間見ることが出来る作品(点数 86点)
(C)2013 Disney Enterprises, Inc.
映画化権の譲渡をひたすら拒絶するトラバースの頑固さ意地の悪さが観ていると最初はそれでこそ共感を阻むのだが、トラバースの過去がストーリーの中で交差するように現れると次第に彼女が頑なに映画化を拒む理由が明らかになってくるのだ。
終盤まで見ているとトラバースが『メアリー・ポピンズ』に託した想いが理解出来るようになる。それまではトラバースが小姑のごとく、作曲を担当していているシャーマン兄弟をいじめるシーンに苦笑しながら付き合わなくてはならない。
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アメリカンドリームの影に隠れた、その他大勢の人たちのかけがえのない物語(点数 88点)
(C) 2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
アカデミー賞主要6部門ノミネートの本作だが、それだけ評価されていることもあって、飄々としたおかしみのなかにじんわりとした感動が伝わる親子の絆を描いたロードムービーだ。
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わすれてはならないのは戦争の記憶だけでなく、そのなかでも生まれた信頼や友情という想い出である(点数 95点)
(C)JAME
色丹島に住む『銀河鉄道の夜』の登場人物にちなんだ名前を持つ兄弟、純平と寛太の四季折々の中で育む成長譚。やがてソ連軍の侵攻によって二人の運命が大きくゆらいでいく。
「北方領土は我が国固有の領土」とは言うが当事者でもない限り「故郷」とは呼べない。領土は国家に帰属するが故郷を結びつけるのは人だからである。領土ではない故郷がこの映画の舞台である。
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