◆プラマー&ミレンが今年のアカデミー賞にノミネートされた話題作!(70点)
19世紀を代表する世界で最も愛されている作家の1人、ロシアの文豪レフ・トルストイ。彼は82歳にして放浪の旅に出た。そして旅の途中、アスターポポ駅で肺炎が原因で果てた。年老いて体調もすぐれななかったにも関わらず、彼が旅へと出なければならなかった理由とは一体何だったのか。ジェイ・パリーニ原作の同名小説を映画化した『終着駅 トルストイの死の謎(原題:THE LAST STATION)』は晩年の文豪の葛藤と、彼を取り巻く者たちの姿を描いてゆく。
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◆18歳にして子持ちのスーパー大型新人女優が誕生した(80点)
短編映画『WASP』で2004年アカデミー短編映画賞を受賞し、2006年の長編映画初監督作品『RED ROAD』ではカンヌ国際映画祭で審査印象を受賞した、元女優の映画監督アンドレア・アーノルドの長編映画第2作目『FISH TANK』。いわゆるワイドスクリーン型ではなく、正方形に近い枠の中に映し出されるイギリスはエセックス郡の風景の中で行きの詰まる思いをしながら踊る 15歳の主人公ミア。彼女に扮する演技経験ゼロのケイティ・ジャーヴィスが男っ気の全くない家庭に育つ思春期の少女を熱演し、その個性的で、力強く、優れた感覚を備えた体から何かとてつもなく巨大なエネルギーが溢れ出している。
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◆ギリアムの魔法の世界でヒース・レジャーは永遠の喜びを手に入れた(50点)
『ダークナイト』のジョーカー役でアカデミー助演男優賞を受賞したヒース・レジャーにとって、遺作となってしまったテリー・ギリアム監督作『Dr.パルナサスの鏡(原題:THE IMAGINARIUM OF DR. PARNASSUS)』。本作が彼の亡霊に取り憑かれているかの様な印象を受けるのは仕方が無いが、奇しくも本作でのレジャーはそれまで演じたどの役よりも気持ち良く演技をしている印象を受ける。
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© 2009 Twentieth Century Fox
◆崖っぷちのカントリーシンガーが再起を図る(65点)
俳優としても活躍するスコット・クーパーの映画監督デビュー作『クレイジー・ハート(原題:CRAZY HEART)』。低予算の非常に小さな映画でありながらも、演技派の俳優たちが集い、彼らの技が物語の中で絶妙に映える。本作はアメリカ南西部の広大な自然を背景に、老年期に差し掛かろうとしているジェフ・ブリッジス扮するカントリーシンガーのミュージシャンとして、そして男としての葛藤を丁寧に描きだす。
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◆大事件! これはフェリーニの『8 1/2』に対する侮辱だ!(3点)
例えば、誰かに好きな映画は何かと聞かれたら、映画好きの多くがフェデリコ・フェリーニの『8 1/2』をその1つに挙げるだろう。それは製作年から40年以上たった今でも人々に愛され続けている世紀の作品であり、1982年にはブロードウェイミュージカル化もされ(2003年にはリバイバル上演された)、巨匠の魂は形を変えながらも時代を越え受け継がれている。『8 1/2』を基にした『NINE/ナイン(原題:NINE)』は『シカゴ』『SAYURI』で知られるロブ・マーシャル監督最新作。舞台出身の監督なだけに本作は『シカゴ』同様ミュージカル映画となっているのだが、これは衝撃的な事件だ。傑作が汚されてしまった。
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◆ガイ・リッチー監督作のホームズは喧嘩が強い!?(70点)
もう数えきれない程、映画化やテレビシリーズ化されている現代推理小説の生みの親アーサー・コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」。ベーカー街221Bにあるハドスン夫人の所有するアパートに住む細身の長身で、エレガントな風貌の私立探偵という基本的なホームズらしさを踏襲しつつも、主人公ホームズ像も作品によって様々に工夫されてきた。
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◆ウェス・アンダーソンの世界では父さん狐が渋くてカッコいい(85点)
アレクサンドル・デプラの軽快で心地良いサウンドトラックがまるでもう1つの脚本の様に、物語を綴ってゆくウェス・アンダーソン監督最新映画『すばらしき父さん狐(原題:FANTASTIC MR. FOX)』。ヘンリー・セリックに代わり、マーク・グスタフソンがアートディレクションを手掛け、哺乳類の動物たちを擬人化させた人形がストップモーションでアクションや家族ドラマを繰り広げる。それらの動物の人形の声に扮するのも、ジョージ・クルーニー、メリル・ストリープ、ジェイソン・シュワルツマン、ビル・マーレイ、マイケル・ガンボン、と演技派で豪華なハリウッドスター達。全てCGで作られるアニメが主流となり、加えアニメの3D化も進んでいるだけに、本作は新鮮で贅沢な時間を提供してくれる。
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◆強姦された上に殺害された少女の死後を描いた小説をP・ジャクソンが映画化(50点)
「小説を完璧に映画化するのは不可能だ」、とピーター・ジャクソンは言う。ニュージーランドの鬼才の監督最新作『ラブリーボーン(原題:THE LOVELY BONES)』では「死後」という、それこそ人それぞれ全く考え方の違う題材を扱っているため、原作である2002年のアリス・シーボルドの同名ベストセラー小説からは重要な要素だけを拾い、物語を再構築する形をとった。よって、"本と同じには成り得ない"という事をかなり意識した作品となっている。
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◆緻密で生命力溢れるジェームズ・キャメロンの革新的な映像の洪水(80点)
人類が利益を優先しなくなる日は訪れないのだろうか。実に1997年の『タイタニック』以来12年振りのジェームズ・キャメロン監督最新作『アバター(原題:AVATAR)』は22世紀が舞台。しかし、この映画の世界の人間も現在と同じくやはり貪欲で残酷。また、未来ではまだ貧富の差も存在し、貧困層は金に利用される。このキャメロン氏渾身の1作では、美しい大自然に覆われた神秘の惑星“パンドラ”を舞台に、金に執着した救い様のない人間の姿を映してゆく。
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◆イーストウッド監督30作目はネルソン・マンデラ!(75点)
知られざる物語。例えば、映画『ホテル・ルワンダ』の様に大きな出来事の裏にはわたしたちの知らない感動の逸話が隠されている事がある。そういった逸話を知る事によって、その出来事を以前とは違った視点で見る事が出来る様になる事も少なくない。昨年は『チェンジリング』と『グラン・トリノ』で大成功を収めたクリント・イーストウッド監督最新作『インビクタス 負けざる者たち(原題:INVICTUS)』はネルソン・マンデラが主人公のアパルトヘイト撤廃直後の激動の南アフリカが舞台。まるでフィクションであるかの様なドラマチックな展開の作品だが、これが真実だから一驚を喫してしまう。
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◆ジョージ・クルーニーが敏腕リストラ請負人に扮する問題作!(70点)
ジョージ・クルーニー扮する映画『マイレージ、マイライフ(原題:UP IN THE AIR)』の主人公ライアン・ビンガムはリストラ請負人。企業に雇われ人のクビを切りまくる彼の仕事は不景気の今最盛期を迎えている。酒もあるし、食事もある雲に囲まれた飛行機の中が、アメリカ各地を飛び回る彼にとってはまるでホーム。そんな生活が快適過ぎて、地に足を付けず、ずっと1人で気ままに生きてきたビンガム。しかし、彼は予期せぬ問題に直面する。それは今まで避けてきた、人との「つながり」を持つと言う事。
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◆ファッション界のカリスマ:トム・フォードが映画監督に!(65点)
2009年のヴェネチア国際映画祭でプレミア上映された『A SINGLE MAN』。過去にグッチやイヴ・サン=ローランのデザイナーを務め、自らのブランドをも立ち上げたトム・フォードが初めて監督した映画だ。「ファッションデザイナーが映画監督に挑戦」、という文句だけでも意見が賛否真っ二つに分かれてしまいそうだが、クリストファー・イシャーウッドの同名小説を基にデヴィッド・シェアースと共同で脚色を手掛け、スター級の俳優陣を集めたフォード氏は本作で世の普遍性を謳う。
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◆ヴィゴ・モーテンセン主演最新作、終焉を迎えた世界で描く親子関係。(70点)
ローランド・エメリッヒ監督作『2012』や、ドキュメンタリー映画『COLLAPSE』の様に、様々な見地から世界の崩壊を唱える映画が見られる様になってきた今日。『ノーカントリー』の作者コーマック・マッカーシー著の原作を基にジョー・ペンホールが脚色し、オーストラリア人映画監督ジョン・ヒルコートがメガホンを取った映画『THE ROAD』でも崩壊後の世界が舞台。ただ、世界に何が起こったのかは描かれず、彼らにも、わたしたちにも原因すら分からない。きっと本当に世界が崩壊してしまったら、人々は何が起こったのかさえ分からないのかもしれない。
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◆大爆笑!(85点)
ハリケーン・カトリーナの直撃を受けたニューオリンズの刑務所が水の下に沈もうとしているところからヴェルナー・ヘルツォーク監督作『バッド・ルーテナント(原題:BAD LIEUTENANT: PORT OF CALL NEW ORLEANS)』の幕が開く。1匹の蛇は暗い水の上をたゆたい、檻の中に取り残された1人の囚人が、恐怖に震え助けを求める。そんな中現れる2人の刑事。助けを乞う囚人を目の前に1人がこう言う、「お前のためにずぶ濡れになれって? 俺は$55もしたスイス綿の下着を履いてるんだぞ、こんな茶色で糞まみれの水に入れるかよ」。その態度の悪い奴はドラッグ大好きなテレンス。彼を演じるにニコラス・ケイジがハマり役で、本作では『リービング・ラスベガス』以来の名演技を見せる。
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◆エイリアンによる誘拐を題材にした残念な映画(10点)
ドキュメンタリーとフィクションがスクリーン上で所どころ同時に進行するというスタイルをとった映画『THE 4TH KIND フォース・カインド(原題:THE FOURTH KIND)』。2000年に実際にあったアビゲイル・タイラー博士にまつわる事件の一部始終を、ビデオ撮影された『ブレアウィッチ・プロジェクト』の様なドキュメンタリー的映像として見せ、それを基に制作されたミラ・ジョヴォヴィッチがタイラー博士に扮するストーリーはビデオで撮影されていなかった裏の出来事を描いてゆく。そのトリックによる効果が人々の恐怖心と好奇心を煽る事を期待した本作だが…。
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