マチェーテ - 岡本太陽

◆ロバート・ロドリゲス監督による今まさにタイムリーな映画(75点)

 2007年にクエンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲスが監督した、70年代のB級映画を色濃く反映した映画『グラインドハウス』。その中に実際には存在しない映画の予告編がいくつかあったが、中でもとりわけぶっ飛んでいた事で話題をさらったのはロドリゲス氏が監督した予告編『マチェーテ(原題:MACHETE)』。その人気の高さからDVDスルーの映画として制作する企画があったが、なんとロドリゲス氏は長年彼の作品の編集等に携わったイーサン・マニキスと共同監督で、ファンのためと謳い同名の劇場用長編映画にしてしまったのである。

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SCOTT PILGRIM VS. THE WORLD - 岡本太陽

◆エドガー・ライトのハリウッド進出第一弾(85点)

 男の子達に人気のゲームや漫画の醍醐味は襲ってくる敵を次々と倒してゆくというもの。ブライアン・リー・オマーリー原作で、『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』のエドガー・ライト監督が映画化した『THE SCOTT PILGRIM VS. THE WORLD』はまさにそんな作品。映画で人気のゲームと同じ様なスタイルを取ってしまったら惰性により飽きてしまうのが通常。しかし、本作はコメディ、アクション、ミュージカル、そしてラブストーリーと、いろんな要素がミックスされて作られた一瞬たりとも飽きさせない傑作なのだ。

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THE KIDS ARE ALL RIGHT - 岡本太陽

◆レズビアンカップルが精子提供者に出会うとき(80点)

 映画『しあわせの法則』等で知られるリサ・チョロデンコ監督最新作『THE KIDS ARE ALL RIGHT』では、アネット・ベニングとジュリアン・ムーアの演技派の2大女優が2人の子を持つカップルを演じている。本作を観るまでは、そういった現代ではあまり多くない家庭環境を描くという事が本作をユニークなものにしている様にも見受けられるが、チョロデンコ監督とスチュアート・ブラムバーグ氏が手掛けた脚本は、そこに重点を置かず、あくまでも自然な家庭を描き出す。

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インセプション - 岡本太陽

インセプション

© 2010 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

◆クリストファー・ノーランの新しいコンセプト(80点)

 『ダークナイト』で『タイタニック』に迫る興行成績を叩きだした映画監督クリストファー・ノーラン。彼の手掛ける『バットマン』シリーズの続編が期待される中、レオナルド・ディカプリオ主演のSFアクション映画『インセプション(原題:INCEPTION)』が先に世に送り出された。『メメント』から始まったノーランの伝説。明晰夢にインスパイアされた本作もまた彼ならではの感覚を刺激する作品。1億6千万ドルという巨額な制作費を投じた本作にわたしたちの常識は覆されるばかりだ。

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トイ・ストーリー3 - 岡本太陽

◆あのピクサーの名作アニメが11年振りに帰って来た!(80点)

 本編よりも面白いのではと思わせられた1999年『トイ・ストーリー2』の約5分間のオープニングシーン。スターウォーズを思わせる凝った演出で冒頭からわたしたちは心を鷲掴みにされてしまったが、11年の後に3D映画としてスクリーンに登場する事になったシリーズ最新作『トイ・ストーリー3(原題:TOY STORY 3)』ではちょっとハラハラする西部劇風のオープニングで物語の幕を開ける。ウッディ(トム・ハンクス)、バズ・ライトイヤー(ティム・アレン)、ジェシー(ジョアン・キューザック)、ミスター&ミセス・ポテトヘッド(ドン・リックルズ&エステル・ハリス)、ハム(ジョン・ラッツェンバーガー)やレックス(ウォーレス・ショーン)といった主要キャラクターを総登場させるこのオープニングはまさにピクサーの余裕を感じさせる。

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ベスト・キッド - 岡本太陽

ベスト・キッド

◆「ジャケットかける、ジャケットとる」?(70点)

 「ワックスかける、ワックスとる」ではなく、「ジャケットかける、ジャケットとる」になった84年のリメイク版『ベスト・キッド(原題:THE KARATE KID)』。物語の舞台も中国・北京に移し、異国の地で12歳のアメリカ人の主人公ドレ・パーカー(ジェイデン・スミス)は“カンフー”に魅せられる。「え、空手じゃないの?」と疑問を抱く人も少なくないだろうが、物語の中で主人公の母親が言う様に、そのあたりの事情は「Whatever(どうでもいい)」なのだ。

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サバイバル・オブ・ザ・デッド - 岡本太陽

◆今回のロメロ作品はゾンビ西部劇だ!(70点)

 『ドーン・オブ・ザ・デッド』や『ザ・クレイジーズ』等ジョージ・A・ロメロ監督作のリメイクがチラホラ見当たる昨今。彼の作品に影響を受けた映画監督は数多くいるが、若い世代にはゾンビ映画の巨匠の生み出した世界観を体現するのは難しく、リメイクものはどれも芳しくない印象。それを余所見に巨匠は70歳の今もなおゾンビ映画にこだわり作品を作り続ける。そして新しく彼のライフワークの仲間入りを果たしたのが『サバイバル・オブ・ザ・デッド(原題:SURVIVAL OF THE DEAD)』。各地で議論を巻き起こした前作『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』のその後を描く。

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アイアンマン2 - 岡本太陽

◆豪華だが物語に物足りなさを感じてしまう第二作目(50点)

 2008年の第一作目と同じくアメリカのサマームービーの先陣を切って封切られたアメリカン・コミック原作の『アイアンマン2(原題:IRON MAN 2)』。主人公トニー・スタークは細々と俳優活動を行っていたロバート・ダウニー・Jr.をスターとして復活させ、その後の彼の俳優としての人生を大きく変えた。ダウニー・Jr.の演技というよりは彼の人柄が皮肉的でチャーミングな完璧な主人公像を作り上げ、人々は新しい物語でのあのトニー・スタークを待ち焦がれた。

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ロビン・フッド - 岡本太陽

◆ラッセル・クロウとリドリー・スコットがロビン・フッドの起源を描く超大作映画(45点)

 アカデミー賞俳優ラッセル・クロウが英国伝説のアウトロー集団の首領に扮するアメリカの今年の夏の超大作映画『ロビン・フッド(原題:ROBIN HOOD)』。ここ数年毎作クロウとタッグ組む映画監督リドリー・スコットがメガホンを取る本作は、彼が初めてクロウを主演に起用しアカデミー作品賞や主演男優賞受賞に導いた『グラディエーター』を彷彿とさせるアクション満載の作品。物語の中で血湧き肉躍る戦いが繰り広げられ、吠えるロビン・フッドに注目だ。

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HOT TUB TIME MACHINE - 岡本太陽

◆世の中にファックユーと言いたい大人の男達の為の応援歌(70点)

 40代の迷える3人の男達を主人公としたスティーヴ・ピンク長編初監督映画『HOT TUB TIME MACHINE』。まだマイケル・ジャクソンの顔の色が黒かった時、彼らは人生最高の日々を送っていたが、その時想い描いた未来予想図とはまるで違う現実に打ちのめされ現在人生座礁中。モトリー・クルーの「ホーム・スイート・ホーム」を始めとする、全編80年代のヒットソングで飾られる本作はとことん馬鹿で楽しく、『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』を彷彿とさせる、男たちが日常を忘れハメを外そうとするコメディ。しかし、本作がタダのお馬鹿映画ではないのは、悲しい悲しい要素が底辺に広がっているから。

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GREENBERG - 岡本太陽

◆シリアスかつコミカル、本作でも映画監督ノア・バームバックの才能が光る(85点)

 『イカとクジラ』や『マーゴット・ウェディング』で知られる映画監督ノア・バームバックの新作『GREENBERG』の主人公は無職の40歳、ロジャー・グリーンバーグ(ベン・スティラー)。ニューヨークの生活の中で精神的に疲れ果て病院に入院していた彼は、15年の後に出身地ロサンゼルスに戻り、とりあえずは職は探さず、しばらく休暇で家族とベトナムに行く弟フィリップ(クリス・メッシーナ)の豪邸の留守番役を受け持つ事にする。家の玄関のドアを修理したり、マメに苦情の手紙を書いたり、犬の世話をしたりしながら、旧友アイヴァン(リス・エヴァンス)やフィリップのパーソナル・アシスタントであるフローレンス(グレタ・ガーウィグ)らに会い、一度は去った土地に再び繋がりが芽生える。

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アリス・イン・ワンダーランド - 岡本太陽

◆ティム・バートンが生み出した新しいアリスの冒険物語(30点)

 ルイス・キャロル著のあまりにも有名な小説『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』(1951年には2つの物語を絡めたディズニーが映画『ふしぎの国のアリス』が公開)の続編にあたるディズニー映画『アリス・イン・ワンダーランド(原題:ALICE IN WONDERLAND)』は前2作のアイデアを継承し、鬼才ティム・バートン監督と、多くのディズニーアニメ映画の脚本を手掛けたリンダ・ウールヴァートンによって作られた新しいアリスの物語。今回のアリスは多感な19歳で、物語は彼女の不思議な冒険ではなく、彼女の内面により焦点が当てられる。よって本作はアリスが彼女自身が何なのかを探る成長物語となっているのが大きな特徴だ。

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A PROPHET - 岡本太陽

◆数々の映画祭で大絶賛を浴びた感動の名作(85点)

 『リード・マイ・リップス』『真夜中のピアニスト』のジャック・オーディアール監督最新作『A PROPHET (原題:UN PROPHETE)』の主人公マリック(タハール・ラヒム)は6年の刑を受けた19歳のアラブ系の青年。外の世界でも塀の中でも独ぼっちの彼だが、刑務所内を操るセザール・ルチアーニ(ニエル・アレストリュプ)率いるコルシカ系マフィアグループに、入所早々殺しを強要される。そして鏡の前で1人、殺しの練習をするマリック。通常刑務所が舞台の映画やマフィアものとなると主人公はタフガイな場合が多い。ところが本作の主人公マリクは黒いピュアな眼差を持つストリート育ちの普通の青年。これは彼が刑務所にいる間に成長し、マフィアの新しいタイプのリーダーとなる物語だ。

 塀の外でも中でも結局権力抗争はあり、刑務所の中では昔から存在するコルシカ人マフィアグループと、彼らに比べれば新しいイスラム教徒のアラブ人マフィアが火花を散らしている。そんな中では一匹狼を貫こうとするマリックは隙だらけの存在。すぐに足を掬われてしまう。殺しの経験のない彼がルチアーニの依頼を渋々引き受けたのは生きるか死ぬかの選択を彼に迫られたため。断る事は出来ない。しかし、殺しが成功すれば、ルチアーニに守られる保障が付くという。無防備なマリックは、誰かの保護が無ければ遅かれ早かれ殺されてしまうだろう。

 フランスには現在多くの移民がいるが、中でも特にアラブ系が多く、その多くはフランスの植民地であったアルジェリアやモロッコやチュニジアから来ている。マリックもアルジェリア移民の子で、コルシカ人らが「アラブ人め!」等と差別的ニュアンスを含む言葉を吐く様に、フランスでは肩身の狭い思いをして来た事が伺える。2005年10月にフランスで移民達による暴動事件が起きた。これは本作の背景を知る上で不可欠であろう。なぜなら、マイノリティの立場である移民達が力を持ち始めたという証拠であるからだ。オーディアール監督は本作に政治的な要素は特に含めていないというが、アラブ系移民の立場や、今後のフランスが辿る道筋が本作に反映されているように見受けられる。

 殺しも、運び屋業も、服役中に学んでゆくマリック。殺人というものがどういう事なのかも身をもって体験するシーンは生々しく、観る側には少々凝視困難だ。殺そうと意を決するものの、初めての殺人はもちろん思った通りに行かず、狭い部屋で揉み合いになる肉体と肉体。マリックはとにかく必死でその場を乗り切ろうとするが、事がきれいにはいかないどころか滅茶苦茶。そんな混乱した様子をカメラは映し出し、殺しはやはり恐ろしい犯罪として、そのシーンが私たちの脳裏に焼き付いてしまう。

 マリックは犯罪と学業の両面で教養がなく、読み書きが出来なかった彼は刑務所の中で勉強を始める。マリックは教師に「読み書きを覚えたいか?」と問われ、とりあえず頷いてはみるものの複雑な表情をする。読み書きが出来るという事がどんな事か分からない彼の素直な表情を、新星タハール・ラヒムが見事に表してみせる。教科書をめくり一語一語言葉を覚えてゆく様に、徐々に知恵を身に付け、また犯罪の経験を重ね、マリックはルチアーニから信用を得てゆく。そしてマリックの信頼が厚くなる毎に、刑務所内での勢力の変動も生じる。

 「予言者」の意味を持つタイトルは、マリクがイスラム信者で神のお告げを聞く事が出来る等、宗教的見地からではなく、彼がマフィアの異種である事を指す。また監督のオーディアールは本作同様、主人公が徐々にマフィアのボスの力を超えてゆく『スカーフェイス』のトニー・モンタナの様なクレイジーな人物としてではなく、感情移入しやすいリアルな人物としてマリックを描きたかったという。彼は刑務所の中でも夢や悪夢を見たり、ミッション中にも関わらず初めて乗る飛行機に感動したり、銃を懐に抱え、人を殺そうという時でも靴屋のウインドウに飾られている美しい靴に目を奪われる。そんな人間的な心が本作の主人公には宿っており、また彼がある時ビーチに行った際には、感慨深げに水に足を浸す。彼は海の水の心地良さを心で感じる事が出来るのだ。

 オーディアール監督の見せる世界は、殺伐としているが、どこか神秘的で、素直で嘘がない。酷い事が起きても、そこには不思議と人間性がある。わたしたちの住む世界の何気ないものが崇高で美しく映される瞬間、純粋な青年を通して、監督自身の純粋な心の眼の映す世界を目撃した気がした。

ビルマVJ 消された革命 - 岡本太陽

ビルマVJ 消された革命

© 2008 Magic Hour Films

◆報道規制と闘い続けるVJ達が伝えたい真実。アカデミー賞最有力作品。(90点)

 2007年にミャンマー(旧名称:ビルマ)で大規模な反政府デモが起こった。今年のアカデミー賞ドキュメンタリー映画賞候補5作品に名を連ねる『ビルマVJ 消された革命(原題:BURMA VJ: REPORTING FROM A CLOSED COUNTRY)』はそのデモを記録したデンマーク人・アンダース・オステルガルド監督作品。本作は、多くの国民が団結し政府に抗議の意思を表したにも関わらず、酷い弾圧を受けた大事件を、厳しい報道規制の下、世界に伝え忘れさせまいと勇敢にもビデオを回す手を止めなかったビデオジャーナリスト(VJ)達の願いと血と涙の結晶だ。

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渇き - 岡本太陽

◆鬼才パク・チャヌク監督によるリアルなセックス描写が魅力の異色ヴァンパイア映画(80点)

 ヴァンパアが血を欲しがる衝動は常に性的な臭いを持つ。記憶に新しい映画『トワイライト』シリーズでも主人公の少女がヴァンパイアに噛まれる事をセックスに例えて演出している。その傾向は第62回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した異質な韓国産ヴァンパイア映画『渇き(英題:THIRST)』にも見られるが、本作ではフランスの自然主義文学家エミール・ゾラの小説「テレーズ・ラカン」の展開に沿って、その血と欲望の切り離せない関係を斬新な切り口で描いてゆく。

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