◆サムライ、ブラックカルチャー、SFの融合が生み出す独特の世界。宮崎駿とは違う、もう一つの「世界標準」の日本アニメ(79点)
1970年代、ブルース・リーのクンフー映画や「座頭市」「子連れ狼」シリーズ、JJサニー千葉(千葉真一)の東映空手映画などをアメリカで最初に受け入れたのは、グラインドハウスに集まるハーレムの貧しい黒人たち(とタランティーノ)だったという。銃器を使わない生身のアクションやサムライのバイオレンスに満ち満ちた世界は、黒人たちにとって「クール」と映ったようだ。クンフーやサムライ映画とブラックカルチャーは、どこかで通じ合うものがあるのかも知れない。
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◆世界各国で映画賞を獲得した話題作(75点)
第81回アカデミー賞外国語映画賞の最有力候補に挙げられながら、その栄冠を日本の「おくりびと」に奪われたイスラエル映画「戦場でワルツを」は、1982年のレバノン侵攻でイスラエル軍に従軍したアリ・フォルマン監督が、自身の体験をもとにしたドキュメンターリー・アニメーション。独自の視点で戦争の苦しみや不条理を浮き上がらせ、世界各国で映画賞を獲得した話題作だ。
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◆ロバート・ゼメキス監督の3Dアニメーション。デジタル3Dとパフォーマンス・キャプチャーの技術が見事に生かされた映像が素晴らしい(80点)
デジタル3D技術に最も適しているのは、モーション・キャプチャーであると思う。実在の人物や物の動きをそのままアニメーションにする技術だ。実写とアニメの中間ともいえる。実写の3Dもかなり進歩したが、まだ違和感がある。変に飛び出すものを強調する映像ばかりになってしまったり、深刻な場面などで人物の腕がにゅっと前に出てくるのがおかしかったりする。逆にアニメーションの場合、3Dと親和性が高すぎて目立たない。最近のアニメは2次元のものを立体的に見せる3Dアニメ(ややこしいが、メガネをかけて見る立体映像のことではない)が主で、2Dでも立体的に見えるので、3Dの効果が今ひとつ分かりにくいのだ。
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◆人々が身代わりロボット「サロゲート」に自分の体験を代理させることで、「なりたい自分」になれる近未来を描いたSFサスペンス。ブルース・ウィリスの「なりたい自分」がふさふさの金髪というのが可笑しい(71点)
ブルース・ウィリス主演のSFアクションというと、リュック・ベッソンの「フィフス・エレメント」(1997)のような大作を予想するが、本作の上映時間は最近の映画では珍しく1時間29分しかない。ぎりぎり1時間半を切っているのである。CGによる派手な特撮場面もあり、B級というには規模が大きいが、よくある大味なSF大作とは違って、キリッと引き締まった作品になっている。監督はジョナサン・モストウ。「ターミネーター3」(2003)も大作にもかかわらずB級映画的なディテールに面白みのある作品だった。そんなモストウの持ち味が発揮された佳作。
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◆アニメだからこそ描くことができた(85点)
元イスラエル軍兵士であったアリ・フォルマン監督が、自身の戦争体験を基にしたドキュメンタリー・アニメ作品。
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◆ハワイを舞台にしたミラ・ジョヴォヴィッチ主演のサスペンス・アクション。ウソが本当に、本当がウソになる逆転が見事(72点)
この映画に関しては、何を書いてもネタバレしてしまいそうだ。一部に熱狂的なファンがいる「ピッチブラック」のデヴィッド・トゥーヒー監督らしい、凝ったストーリーには感心させられた。
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◆「マッハ!」「トム・ヤム・クン!」でアクション映画の歴史を変えたトニー・ジャーが、今回も人跡未踏の領域に踏み込んだ。次々と繰り出されるアクション場面は圧倒的に凄いが、これは「前編」に過ぎない。話が完結していないのだ(88点)
トニー・ジャーは、ジェット・リー、ジャッキー・チェンと並び、現代のアクション俳優の中で最高峰の一人だろう。「マッハ!」(2003)「トム・ヤム・クン!」(2005)の両作では、これまで見たことがないハイレベルなアクションに、本当に驚いた。この新作は、「マッハ!」の続編のようなタイトルだが、前作と話は別物だ。今度は、日本人町があり、山田長政も住んでいたというあのアユタヤ王国(1351?1767)の時代が舞台で、クンフー映画だが歴史ファンタジーの要素もある。
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◆年上女は奪わない(70点)
太平洋のあちらとこちらで時ならぬ“年の差恋愛”ブームが起きている。つい先日、サンドラ・ブロックがライアン・レイノルズを婿にしたと思ったら、TBSでは観月ありさが小池徹平を前におひとりさまの我が身を顧み、NHKでは黒木瞳が向井理をつかまえた。そして今度はキャサリン・ゼタ=ジョーンズが、ジャスティン・バーサ(『ナショナル・トレジャー』シリーズでニコラス・ケイジの手伝いをしていたお調子者ですね)の中に理想の彼氏を見出そうとしている。
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◆そのボタンを押すか押さないか、とんでもない結末を招く選択!(70点)
全ての原因は結果を伴う。始まりはどんなに小さな事象であっても、後にとてつもなく巨大な何かに繋がってしまう事もあるのだ。若手映画監督リチャード・ケリー最新作『運命のボタン』はそんな普遍の真理を扱った意欲作。本作の主人公のとある夫婦は、ある日突然、実に奇妙で辛辣な選択に直面する。そして同時に、本作は「あなただったらどうする?」と、観る側にもその選択を突きつける。
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◆映像の迫力には圧倒させられる(80点)
2009年。惑星が直列に並ぶ現象を受けて、太陽の活動が活発化。強い放射線によって地球内部の熱が上昇していた。この異状をいち早く察知したアメリカの地質学者(キウェテル・イジョフォー)は、3年後の2012年に地球が終末を迎えると政府に警告。アメリカ大統領(ダニー・グローヴァー)は、各国の首脳の協力を取り付けて、あるプロジェクトを秘密裏にスタートさせた……。
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◆ピクサー初の3D作品だが、3Dで見る意味は余りない。カールじいさんが風船で空飛ぶ旅に出るまでがセンチメンタルでとてもいい(73点)
ピクサー初の3D作品を、字幕、3Dで見た。結論から言って、本作を3Dで見る必要はないと思う。余り飛び出さないし、奥行きもそれほど感じなかった。むしろこの内容であれば、3Dメガネを外して2Dでじっくり見た方が良いだろう。
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◆広末涼子はミスキャストだが、犬童監督が見せる演出の「奇手」は素晴らしい(73点)
戦後64年が過ぎて、昭和も遠くなった。我々の年代なら僅かにリアリティを感じられるストーリーも、今の若い世代にどれだけ実感として伝わるのか疑問だ。松本清張の原作自体が、もはや時代遅れなのかも知れない。さらに、本作は犯人が途中で分かってしまい、推理ものとしての面白みは余りない。むしろ、犯人の動機に焦点が当てられる。それが社会派推理と言われる所以だ。動機がテーマだとすると、クライマックスは回想場面になりがちだ。映画としては構成が難しい。この難問に、犬童一心監督は驚くべき「奇手」で答える。それは実に鮮やかな手で、本作の面白さは全てそこにある。
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◆全編を通じて、皮肉あり、オマージュあり、メタファーあり、ユーモアありの会話劇(85点)
「レザボア・ドッグス」(1992年)、「パルプ・フィクション」(1994年)、「キル・ビル」(2003年)、「デス・プルーフ in グラインドハウス」(2007年)など、撮るたびに話題を巻き起こすクエンティン・タランティーノ監督の最新作。ただでさえ注目度の高い監督だが、主演にブラッド・ピットを迎えたとあれば、話題としては"鉄板"だろう。
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◆就職活動中の者にはオススメしたい一作(75点)
残業は当然どころか膨大な仕事量に徹夜残業の連発、安月給、理不尽な社員連中といったマイナス要素がズラリと並ぶブラック会社(ブラック企業とも言う)。不況真っ只中の近年、この手の会社は多く存在し、今後も増加すると言われている。
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◆易しい映画ではありません(70点)
ニューヨーク在住の劇演出家ケイデン(フィリップ・シーモア・ホフマン)の結婚生活は破綻し、自身も原因不明の病に冒されてしまった。優柔不断な性格が災いして、新たな恋愛もうまくいかない。そんなある日、ある賞を受賞した彼のもとに多額の賞金が転がり込んだ。人生をやり直す決意をしたケイデンは、多額の費用を投じて、ニューヨークのとある巨大倉庫のなかに、自分が思い描く理想のニューヨークを作り上げて、前代未聞の舞台を上演するプロジェクトに乗り出した……。
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