◆深津絵里がモントリオール世界映画祭で最優秀女優賞を受賞した話題作だが、面白くない。誰が悪人かというテーマが、分かりやすすぎる(72点)
周囲の評価が相当に高い作品だが、私には、余り面白いとは思えない。確かに力作ではある。前半から中盤にかけては、実に丁寧に芝居を撮っている。深津絵里はモントリオール世界映画祭で最優秀女優賞を受賞した。それだけでも立派な映画なのだろう。だから面白いかというと、はっきり言って面白くない。
◆深津絵里がモントリオール世界映画祭で最優秀女優賞を受賞した話題作だが、面白くない。誰が悪人かというテーマが、分かりやすすぎる(72点)
周囲の評価が相当に高い作品だが、私には、余り面白いとは思えない。確かに力作ではある。前半から中盤にかけては、実に丁寧に芝居を撮っている。深津絵里はモントリオール世界映画祭で最優秀女優賞を受賞した。それだけでも立派な映画なのだろう。だから面白いかというと、はっきり言って面白くない。
◆高知のよさこい祭りを舞台に、青春の夢を追う青年が難病の少女との約束の中で人生で大切なものは何かを問うていく。自分ひとりの名声と仲間と分かち合う喜びを秤にかけ、二者択一を迫られる主人公の成長していく姿がまぶしい。(50点)
動きを合わせた踊りは躍動感に富み、派手な衣装の裏地や扇の裏表を使って見せる様々な色彩の変化は視覚的に楽しませてくれる。若さあふれる肉体から発散されるエネルギーは自由と歓喜を表現し、一方で仲間と一緒に同じ目的に向かう過程で団結と友情を固めていく。映画は高知のよさこい祭りを舞台に、青春の夢を追う青年が難病の少女との約束の中で人生で大切なものは何かを問うていく。自分ひとりの名声と仲間と分かち合う喜びを秤にかけ、二者択一を迫られる主人公の成長していく姿がまぶしい。
◆味覚の記憶が過去を美しい思い出に変え、傷ついたヒロインを癒していく。映画は行き詰ったピアニストと巻き添えで死んだ料理人、そして料理人を想いながら他の男と結婚する女の再生を通じて、人生の素晴らしさを謳いあげる。(40点)
舌の上でとろけるオムライスの卵、サクサクと香ばしいカツレツ、荒れた胃に優しく病気の体に滋養をつけるおかゆ。男の作った食べ物はヒロインの心で生きている。口にした人が笑顔になる料理、それは彼の思いがこもっているから。味覚の記憶が何気ない出来事を美しい思い出に変え、傷ついた彼女を少しずつ癒していく。映画は行き詰ったピアニストと巻き添えで死んだ料理人、そして料理人を想いながら他の男と結婚する女の悲しみと再生を通じて、人生の素晴らしさを謳いあげる。
◆圧倒的な情報不足を不親切と見るか、想像力を刺激する演出スタイルと見るかで評価が分かれそう(55点)
殺し屋とその標的の許されない恋というと過激で情熱的に思えるが、この物語はどこかポエティックで不思議なムードが漂っている。築地の魚市場で働きながら、凄腕の殺し屋として闇の仕事を請け負う女・リュウ。ある時、新しい仕事が入り、抹殺するターゲットでスペイン人のダビが営むワイン店を訪れる。誰とも打ち解けず生きる孤独な女と、愛する妻を自殺によって亡くしたばかりの男は、出会った瞬間に恋に落ちる…。
◆ワレンチン自身が実体験を通じて、愛の本質を見極めていく姿勢がいい(70点)
スターやヒーローは、遠くの人には愛されるが、近くの人には恨まれる。よく耳にする話だ。肥大化しながら世の中を一人歩きする自分の虚像と、現実の自分(実像)とのギャップが生み出す皮肉のようなものである。
◆ほとんど夫婦漫才(めおとまんざい)の世界(55点)
フランス発の人気絵本が初のアニメーション映画になった。ウサギでもイヌでもない不思議な生物リサとガスパールのキャラは、シンプルで可愛らしい。お茶目で元気な女の子リサと心優しい男の子のガスパールは、大親友。パリに住んでいて、人間と同じ学校に通っている。人間の友達はいっぱいいるけれど、2人は特別の仲良し“永遠の友達(トワトモ)”なのだ。そんなリサとガスパールは、今日もいたずらをして思わず叫んでしまう。「ひゃー、やっちゃったー!」。
◆孤独を友とし絶望と添い寝する謎に満ちたヒロイン。そんな彼女が殺すべき男と恋に落ちた時、運命の歯車が狂い始める。大都会の空虚と寂寥、映画は夜の東京を舞台に、胸に哀しみを湛えた殺し屋の切ない感情を切り取ろうとする。(40点)
孤独を友とし絶望と添い寝する女。他人とのかかわりを最小限にとどめ、深夜に働き昼間は息をひそめている。彼女の事情を録音技師は探ろうとするが、プライベートはほとんど明かさない。そんな謎に満ちたヒロインが殺すべき男と恋に落ちた時、運命の歯車が狂い始める。映画は夜の東京を舞台に、胸に哀しみを湛えた殺し屋の切ない感情を切り取ろうとする。不眠症ゆえに、考えすぎるのを避けるために黙々と肉体労働にいそしむ姿が、大都会の空虚と寂寥を象徴しているようだ。
◆金持ちの男友達の前では可愛い女のフリ、不細工な同僚や貧乏な男の前では悪意をむき出しにする女を満島ひかりがさまざまな表情で演じ分ける。欲望に忠実で人を傷つけるのは平気という、女のイヤらしさを巧みに表現していた。(60点)
祖父母の世話をする青年、父親から娘への一方通行の愛情、胸の空白を埋めるために求めあう孤独な男女。そんな優しさが映画には溢れているのに、人の心に潜む“見下す気持ち”が殺伐とした空気を生み出す。単調で苦労の多い人生にうんざりしながらも懸命に生きる人間と、彼らを笑い飛ばす人間。その二種類の人間が交差した悲劇は、他人からバカにされたに女が他人をバカにしたときに起きる。金持ちの男友達の前では可愛い女でいようとするが、父を利用するときだけ笑顔を見せ、不細工な同僚や貧乏な男の前では悪意をむき出しにする被害者の女を満島ひかりがさまざまな表情で演じ分ける。己の欲望に忠実で人を傷つけるのは平気という、女のイヤらしさを巧みに表現していた。
◆映画は安易な難病ものではなく、悩みながら生きる主人公・新平が、故郷の祭りを通して自分らしい生き方を模索する物語になっている(60点)
挫折しながらも追いかける夢。好きな人を思い続ける気持ち。高知よさこい祭りの高揚感。それらをミックスして、病と闘う少女の実話を単なる難病ものだけに終わらせず、さわやかな青春映画に仕上げている。高知出身の新平は、東京でプロのカメラマンを目指して厳しい修行の日々を送っていた。5年ぶりに帰郷した新平のもとに、別れた恋人の香織が会いに来て「一緒によさこい祭りに出てほしい」と懇願する。難病を患う香織の幼い妹・さくらの生きる支えがよさこい祭りなのだ。最初はとまどったが、新平は、かつてのチーム「いちむじん」を再結成し、踊りの練習を始める…。
◆最後の最後まで、巧妙な仕掛けで悪を制裁するリスベットの知性に、溜飲を下げる(70点)
スウェーデン発ミステリー「ミレニアム」三部作の完結編。権力側の陰謀に決して負けないヒロインの反骨精神に尊敬の念を覚える。自分に罪をきせ命を狙った敵と対決し、瀕死の重傷を負ったリスベット。病院から退院後、収監されてしまう彼女はほとんど身動きがとれない“眠れる女”だ。だが彼女の無実を信じるジャーナリストのミカエルは、ひそかに連絡をとる術を見つけ出す。一方、ミカエルの妹で弁護士のアニカや、リスベットのハッカー仲間らも、独自の方法で調査を進める。なぜリスベットは12歳で精神病院に入れられ「無能力者」として後見人制度の下に置かれたのか。ついに始まった裁判で、リスベットは自分に起こった忌わしい出来事を話し始める…。
◆事件の解決は3に持ちこされるが、次回への興味を最高の形でつなぐ巧みなストーリーテリングに、引きつけられる(65点)
世界的ベストセラーのミステリー小説を映画化した「ミレニアム」3部作の第2弾。天才ハッカーのリスベットとジャーナリストのミカエルがほとんど別行動なので前作に比べて少し物足りないが、リスベットの過去が現代の事件とつながる展開が面白い。孤独に生きてきたリスベットが、愛してしまったミカエルの前から姿を消して1年。社会派雑誌「ミレニアム」で少女売春組織の特集の準備を進めていたジャーナリストが殺害される。現場にはリスベットの指紋がついた銃が残されていた。その後、リスベットの後見人のビュルマンも殺害され、リスベットは容疑者として指名手配されてしまう。彼女の無実を信じるミカエルは、雑誌発売に関する脅迫を受けながらも、リスベットの嫌疑をはらそうとする…。
◆秘書の目を通して見たトルストイ夫妻の愛と、理想を追う側近たちの葛藤。そこにあるのは、自由を標榜する人間ほど目的の達成のためには他人の自由を制限するという皮肉だ。それは後の社会主義の独裁者に通じるものがある。(60点)
ベッドに伏せる文豪の様子を知ろうと、病院代わりとなった駅舎の周りにできた“記者村”。大勢の報道陣のために脈拍・血圧などの病状が定期的にブリーフィングされる。昭和末期にも日本で見られた光景だが、この物語の主人公・トルストイがいかに大衆の関心を集めていたかを雄弁に語るシーンだ。映画は、彼の秘書の目を通して見た老夫婦の愛と、理想を追う側近たちの葛藤を描く。そこにあるのは、自由を高らかに標榜する人間ほど目的の達成のためには他人の自由を制限するという皮肉。それは後にマルクス主義を拡大解釈し政権をほしいままにした社会主義の独裁者に通じるものがある。
◆ひとつの殺人事件が重層的にあぶりだす人間の心の闇。愛を渇望する男女の逃避行が胸を打つ。(75点)
長崎在住の土木作業員の祐一と、佐賀に住む紳士服量販店店員の光代は、携帯の出会い系サイトで知り合い、強く惹かれ合う。だが祐一は、今世間を騒がせている女性保険外交員殺害事件の犯人が自分であることを告白する…。
◆胸に宿る復讐の炎に気づかぬ者は大やけどをし、明晰な頭脳をみくびる者は罠にはまる。さらに恐れを知らぬ勇敢さはどんな屈強な男でもぶちのめす。パンクファッションで法廷に現れる雄姿は、あらゆる権威・権力に対する抵抗だ。(80点)
精神病院で手足を縛められ、「無能力者」のレッテルを張られたヒロイン。彼女を社会から抹殺しようとする男たちは、統合失調症として片付ける。その虐げられた胸に宿る復讐の炎に気づかぬ者は大やけどをし、明晰な頭脳をみくびる者は罠にはまる。さらに恐れを知らぬ勇敢さはどんな屈強な男でもぶちのめしてしまう。鼻ピアスにパンクファッション、髪を逆立てて法廷に現れる雄姿は、あらゆる権威・権力に対する抵抗。反面、今回はハッカーの友人や弁護士、そしてジャーナリストや医者など、味方をしてくれるものには少しだけ胸襟を開くという成長も垣間見せる。
◆忌まわしい過去と巨大な秘密に対峙するヒロイン。壮大な仕掛けと張り巡らされた伏線、よりミステリー色を前面に出し、ダークサイドに堕ちた人間の魂をのぞきこむような映像と意表を突く展開に、スクリーンから目を離せない。(80点)
小柄で華奢、まるで世界を敵に回すかのごとき憎悪をむき出しにする反面、ハッカーとしての天才的能力、何ものをも恐れぬ勇気と行動力を持つヒロインの強烈な個性はこの続編でも健在。まともに言葉を交わせないほどの他人に対する圧倒的な不信感を、なぜ彼女は抱くようになったのか。今回は偶然巻き込まれた殺人事件をきっかけに、彼女は封印されていた忌まわしい過去と巨大な秘密に対峙せざるを得ない状況に陥っていく。壮大な仕掛けと張り巡らされた伏線、よりミステリー色を前面に出し、ダークサイドに堕ちた人間の魂の奥をのぞきこむような映像と意表を突く展開の連続は一瞬たりともスクリーンから目を離せない。