◆観客の想像を超えられないものを、描かないことによって、観客の想像を超えようとした意欲作(72点)
次々と大作、話題作を手掛け、ヒットを飛ばしている堤幸彦監督は、一般の観客に支持されていると言っていいだろう。しかし、周囲の映画記者や関係者にそう言うと、強烈に反論され、バカにされることが多々ある。コアな映画ファンの一部には、堤作品が大嫌いな人たちが存在するのである。堤監督が一般の映画ファンに受け入れられるのに、一部のコアな映画ファンに嫌われるのは、なぜなのだろうか。
◆観客の想像を超えられないものを、描かないことによって、観客の想像を超えようとした意欲作(72点)
次々と大作、話題作を手掛け、ヒットを飛ばしている堤幸彦監督は、一般の観客に支持されていると言っていいだろう。しかし、周囲の映画記者や関係者にそう言うと、強烈に反論され、バカにされることが多々ある。コアな映画ファンの一部には、堤作品が大嫌いな人たちが存在するのである。堤監督が一般の映画ファンに受け入れられるのに、一部のコアな映画ファンに嫌われるのは、なぜなのだろうか。
◆薄型テレビと携帯電話と宮崎あおいという小顔の女優が出てこなければ、40年前のホームドラマを見ているような錯覚を起こしかねない舞台設定。家族の絆と近隣同士の交流が盛んだったころの暮らしの原風景を見ている気にさせる。(70点)
同じ敷地内に母と娘が生活する家と大家のばあさんが住む古い木造家屋が庭を挟んで立っている。高度成長期以前に建てられたのか、時代から取り残された佇まいは、この3人の長く深く濃い人間関係を象徴している。訪れるのも近所の主婦だけの女の世界、薄型テレビと携帯電話と宮崎あおいという顔の小さな女優が出てこなければ、40年前のホームドラマを見ているような錯覚を起こしかねない舞台設定と交わされる会話の内容は、家族の絆と近隣同士の交流が盛んだったころの庶民の暮らしの原風景を見ている気にさせる。
◆冒頭から取り調べ室で延々と続く映画オタクのポールの名作のセリフの連打に、あっけにとられる(45点)
ジャンルは刑事アクションだが、何しろ監督がクセモノのケビン・スミスなので、オタク趣味全開のトボけた映画になっている。NY市警で長年コンビを組む刑事のジムとポール。性格は正反対だが仕事の息はピッタリの彼らは、捜査中のミスで停職をクラうことに。そんな時、娘の結婚費用のためにレアものの野球カードを売ろうとしたジムは、強盗に遭い、貴重なカードを盗まれてしまう。そのカードを追ううちに残虐なメキシコ系ギャング“ポー・ボーイ”がからむ殺人事件に巻き込まれてしまうのだが、同じ署内の別の刑事コンビも事件を追っていた…。
◆舞台は大阪だが、登場人物の描写はありがちなコテコテでベタついたものではなく、感情を抑えた静かな演出なのが好感が持てる(60点)
軽すぎず、重すぎず。演出の抑制が絶妙な人間ドラマだ。初共演の大竹しのぶと宮崎あおいが母娘を演じるが、フワフワした雰囲気が共通していて本物の親子のよう。陽子と月子は、長年、母1人子1人で仲良く暮らしてきた。ある晩、陽子が、若い金髪の男・研二を連れてきて「おかあさん、この人と結婚することにしたから」と爆弾発言。あまりに突然の陽子の言葉に、月子は裏切られた思いで家を飛び出してしまう。周囲の者たちは、なんとか二人をとりなそうとするが、母娘にはそれぞれ、心に傷があったり、言い出せない秘密があって…。
◆何のとりえもないのを自覚しているOLがAVの世界で未知の自己を“発見”していく。誰からも必要とされていなかったのが、周りにおだてられる快感。褒められているうちにユニークなキャラを構築していく過程が楽しくも切ない。(60点)
家では母に邪険にされ、会社では要領のいい後輩の陰で存在感が薄い。そんな、何のとりえもないのを自覚しているOLがAVの世界で未知の自己を“発見”していく。誰からも必要とされていなかったのが、周りにおだてられ頼られ慕われている快感。褒められているうちに、彼女にしかできないユニークなキャラを構築していく過程が楽しくも切ない。孤独と不安を抱えながら必死で生きていこうとするヒロインを安井紀絵が好演。映画は、大量に“女優”が使い捨てにされる AV業界の現実に触れつつ、そこにしか居場所を見つけられなかった女の絶望からの再生を描く。
◆ティーン・エイジャーが、音楽を通して自分の秘めたポテンシャルを自覚していく姿は、青春映画ド真ん中の展開で、ストレートに感動できる(50点)
打ち込むものをみつけた喜びとかけがえのない仲間との友情が熱く伝わってくるバンド系青春音楽映画だが、サウンドの演出には疑問が残る。平凡な毎日をおくる内気な高校生コユキは、ある日、NY帰りの天才ギタリストの竜介と出会い、バンドに誘われる。千葉、平、コユキの親友のサクも加わってバンド BECKが結成された。コユキは懸命にギターを練習し、内に秘めたヴォーカルの才能を発揮、バンドも少しずつ成功を重ねていった。そんな時、竜介のNY時代のトラブルと、ライバルバンドの敏腕音楽プロデューサーの陰謀に巻き込まれたBECKは、大きな試練に見舞われる…。
◆頭を空っぽにしてただコレを存分に楽しむだけで良い(75点)
“オシリーナ”の愛称で知られる人気グラビア・アイドルの秋山莉奈を主演に迎えたバイオレンス系アクション・ホラー。様々な作品でアクション監督を務めた小原剛の『芸者VS忍者』に続く監督第二弾作品。
◆見た目はハリウッドの雛形映画、だけど中身は……。(40点)
バディムービーというのは、いまやすっかりアメリカ映画のお家芸となっている。その多くは刑事もので、相棒の片割れはおしゃべりな調子者の黒人。そのマシンガントークに白人の主人公がうんざり顔で応対しつつも、決めるべきところは二人で決めるという友情アクション映画──。
◆デニーロ主演、プロデューサーはつらいよ(55点)
スレンダーな黒髪ロングの美女とめくるめく夜をすごす濡れ場が映画の中であったとすれば、男の観客は相手の男を羨ましく、幸せな奴だと思うだろう(むろん、美女の修飾語句は各自の好みに読み替えていただいて結構だ)。
◆AV版、下妻物語(55点)
日本のアダルトビデオは一日に50本以上も作られており、もはや世界トップ級の映像産業といっても差し支えない。ファンの熱狂度も半端ではなく、そうしたマニアが集まる掲示板等で無名女優の写真を一枚見せると、それだけで即座に出演作から名前まで返答があるほど。くれぐれも、ふざけ半分で奥さんの若いころの写真などは見せないことである。知らぬが仏という、えらい人の言葉もある。
◆「悪魔の凶暴パニック」を思わせるパニック・ホラー「ツキモノ」と正統派Jホラー「ノゾミ」。ホラー・マニアの篠崎誠監督による、対極的な2本立ては、どちらも一筋縄ではいかない面白さがある(68点)
篠崎誠監督はホラー・マニアである。ホラーを巡って、黒沢清監督との対談本を出しているくらいだ。その篠崎監督が、期待通りの一筋縄ではいかないホラーを見せてくれた。