日本のいちばん長い夏 - 渡まち子

◆この座談会の再現は、戦争を子孫に伝える未来へのバトンの役割を担っている(55点)

 第二次世界大戦末期の日本の実情とそれぞれの立場で終戦を迎えた人々の体験を語る作品で、文士劇というスタイルがユニークだ。平成22年、1人のTV演出家が終戦についてのある番組を企画する。それは、昭和38年に文藝春秋が企画した座談会を再現するという試みだった。政治家、元軍人、ジャーナリスト、作家、民間人など、さまざまな立場の人々が終戦間際の戦地の様子や、国内外の政治の動きを、彼らの心情を交えて語り尽くしていく。

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フローズン - 渡まち子

◆ほんの少しの不注意とわがままが恐ろしい状況を生むという、このバッド・シチュエーション映画はかなり怖い(60点)

もしかしたら自分にも起こるかも…。そんなリアルな恐怖に襲われるシチュエーション・スリラーだ。主な登場人物は3人だけだが、不安やエゴが交錯し、緊張感が途切れることはない。スキー場にやってきたダン、ジョー、パーカーは、夜、最後の滑りを楽しもうとリフトに乗りこむが、山頂へと向かう途中でリフトが突如ストップしてしまう。氷点下の気温の中、携帯電話も食料もなく、助けの声も届かない。ゲレンデの再開は1週間後で、宙吊り状態のままでは確実に凍死してしまう。3人はなんとか脱出を試みるのだが…。

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セラフィーヌの庭 - 渡まち子

◆ヒロインを演じる実力派女優ヨランド・モローがすさまじいまでの名演技で圧倒される(70点)

 芸術に神に愛された者は、こんなにも心が繊細で傷つきやすい存在なのか。素朴派の女性画家セラフィーヌ・ルイの“描くこと”への本能的な情熱を描く伝記映画だ。20世紀初頭のパリ郊外・サンリス。貧しく孤独な中年女性セラフィーヌは、家政婦として働きながら、自室でもくもくと絵を描く毎日を送っていた。神への信仰、自然との対話、何よりも絵を描くことが、彼女の生きがいだった。そんなある日、高名な独人画商ウーデが彼女の才能を見出す。ウーデの経済的援助を受け、才能を開花させるセラフィーヌだったが、戦争や大恐慌が起こり、ウーデは彼女を援助することができなくなる。やがてセラフィーヌは精神のバランスを崩していき…。

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フローズン - 小梶勝男

◆男女3人がスキー場のリフトに取り残される雪山版「オープン・ウォーター」(2003)。新鋭アダム・グリーン監督の手腕は確かだが、ストーリーにひねりが欲しい(67点)

 「HATCHET/ハチェット」(2006)が日本で劇場公開されなかったのは残念だった。スプラッター映画が全盛だった1980年代を彷彿とさせるホラーの秀作だったと思う。監督はこれが劇場向け長編デビューとなるアダム・グリーン。新人だが、確かな演出力を感じた。

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ヒックとドラゴン - 渡まち子

ヒックとドラゴン

© 2009 by PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.

◆大空を自由に舞うドラゴン側からの物語もぜひ見てみたい(80点)

 敵同士が歩み寄って互いのことを理解する。言うは易し行うは難しのこの行動を、弱虫の主人公がやってのけるファンタジー・アニメの秀作だ。現状に風穴をあけるのは、いつの時代も意外性である。遠い昔、バイキングとドラゴンは長きに渡って戦いを繰り返していた。バイキングの少年ヒックは族長の息子なのに何をやっても冴えない弱虫。そんなヒックがある日、天敵のドラゴンと巡り会う。トゥースと名付けたそのドラゴンは伝説の“ナイト・フューリー”だったが、怪我をして飛べなくなっていた。心優しいヒックにはどうしてもトゥースを殺すことができず、おそるおそる近付き、好物の魚を差し出す。2人の間には、秘密の友情が芽生えるが…。

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セラフィーヌの庭 - 福本次郎

◆彼女の筆致は独創性にあふれ、細部まで観察された果物や生い茂る木の葉は、リアリズムを超越した生命力に漲っている。余計な装飾をそぎ落とした物語は、神にささげるかのように過ごしたヒロインの生き方を反映させている。(60点)

 動物の血や灯油を盗み、泥や植物を採取して、さまざまな材料と混合して自家製の絵の具を作るヒロイン。昼間は家政婦の仕事に追われ、夜ろうそくの明かりを頼りに絵筆を握る。彼女の筆致は独創性にあふれ、細部まで観察された果物や生い茂る木の葉は、リアリズムを超越した生命力に漲っている。物語は独学で絵画の技法を編み出した悲運のアーティストの後半生を、余計な装飾をそぎ落として描く。そのそっけなさは、他人との交流を極力避け、人生を神にささげるかのように過ごした彼女の生き方を反映させている。

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ヒックとドラゴン - 福本次郎

ヒックとドラゴン

© 2009 by PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.

◆少しの勇気と誠意を持ってコミュニケーションを取ればきっとわかりあえる。映画はバイキングの少年とドラゴンの交流を通じて、己の論理を相手に押しつけるのではなく、お互いが幸せになる道を探り合うことの大切さを描く。(40点)

 倒すべき敵として憎んでいたのに、傷ついて心細そうにしている。話が通じないと思っていたのに、相手も同じ思いを抱いている。心を持つ者同士なら、少しの勇気と誠意を持ってコミュニケーションを取ればきっとわかりあえる、そんな願いが作品からにじみ出る。重要なのは相手を思いやる気持ち、そして本当に闘うべき相手を見きわめることなのだ。映画はバイキングの少年とドラゴンの交流を通じて、己の論理を相手に押しつけるのではなく、お互いが幸せになるような道を探り合うことの大切さを描く。

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フローズン - 福本次郎

◆救助の見込みは薄く、生き残る可能性は時間と共に萎む。空中高く取り残されたリフトという限定空間における会話を中心に、楽観が怒りに、戸惑いが恐怖に、勇気が諦めに、希望が絶望に変わっていく心理をリアルに再現する。(60点)

 極寒のスキー場、突然停止したリフトに置き去りにされた3人の男女に迫りくる吹雪と低温、足下では猛獣が舌なめずりして待つ。救助が来る見込みは薄く、生き残る可能性は時間と共に萎んでいく。じわじわと訪れる凍傷と体力の低下に、彼らの胸にはさまざまな感情が交差する。映画は空中高く取り残されたリフトという限定空間における会話を中心に、楽観が怒りに、戸惑いが恐怖に、勇気が諦めに、そして希望が絶望に変わっていく心理をリアルに再現する。

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日本のいちばん長い夏 - 福本次郎

◆元高級官僚・日本軍首脳部の面々からは、死なずに済んだ民間人・軍人への謝罪や反省の弁は一言もない。安全な場所で戦争の行方を決定する彼らと前線の一兵卒を比較したとき、国の首脳の無能と無責任にはあきれ果ててしまう。(60点)

 もはや降伏は避けられない状況なのにポツダム宣言を“黙殺”したゆえ無駄に失われた十数万の命。元高級官僚・日本軍首脳部の面々は、1945年の夏に己がどれほど国のために最善を尽くしたかを滔々と訴える。そこには死なずに済んだ民間人・軍人への謝罪や反省の弁は一言もなく、ただ自己弁護に終始する。屁理屈や言い逃れるようなそぶりは見せず、自分たちがおかれた立場を冷静かつ客観的に顧みる風を装って巧みに政府というシステムや物故者へ責任転嫁するのだ。もちろんこの座談会が敗戦を総括する場でないことは分かっている、それでも安全な場所で戦争の行方を決定する官僚・参謀と戦場で明日をも知れない一兵卒を比較したとき、国の首脳たちの無能と無責任にはあきれ果ててしまう。

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シルビアのいる街で - 福本次郎

◆女が同じ場所を何度も通ったり、ショーウインドウに映る男を認めたりするたびに、男はばれるのではないかという緊張感と見失うのではという焦燥感に襲われる。その感情が絡み合い、映画はただならぬサスペンスに満たされる。(40点)

 カフェで偶然見かけた女の、男は後をつける。通りを渡り、繁華街を抜け、迷路のような裏路地を足早に歩く彼女を、少し距離を置いて追う。そのお世辞にも上手とは言えない尾行術は、女がいつかは男の存在に気付くのではないかという予感をはらみ、顔のアップと遠景の繰り返しでセリフがほとんどない展開の乏しい映像に奇妙なテンションをもたらしている。女が同じ場所を何度も通ったり、ショーウインドウに映る男を認めたり、突然振り返ったり立ち止まったり、角を急に曲がったりするたびに、男はばれるのではないかという緊張感と見失うのではという焦燥感に襲われる。彼のそれらの感情がみごとに絡み合い、映画はただならぬサスペンスに満たされていく。

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セラフィーヌの庭 - 佐々木貴之

◆セラフィーヌのキャラや行動だけでも印象深いものが多く、これだけでも十分に面白く観られる作品(85点)

 素朴派の女性画家セラフィーヌ・ルイの生涯を描いた人間ドラマで2009年度のセザール賞で作品賞をはじめ最多7部門を獲得した。

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フローズン - 佐々木貴之

◆驚愕させられるようなシーンでもリアルな設定も手伝って恐怖や戦慄を存分に味わわせてくれる(75点)

 極寒のスキー場を舞台にした体感型シチュエーション・スリラー。監督はホラー映画界の新鋭アダム・グリーンで、製作には『ソウ』シリーズのピーター・ブロックが携わっている。

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テコンV - 小梶勝男

◆1976年に公開されて大ヒットした韓国初の本格的ロボットアニメの最新デジタルリマスター版。日本のアニメが洗練されすぎて失ったプリミティヴな魅力がここにはある(66点)

 韓国では伝説的なアニメという。「マジンガーZ」にかなり似たデザインのロボットに、テコンドーの使い手が「ガッチャマン」みたいなヘルメットで乗り込み、テコンドーを駆使して悪のロボット軍団と戦う。相手は北朝鮮を思わせる「アカ帝国」で、試合で負けたテコンドー選手、プロレス選手、剣道選手などをロボットに改造し、操って人類を滅亡させようとする。なぜ試合に負けた選手ばかりを選んでいるかというと、「負けた恨み」を利用するから。さすがは「恨(ハン)」の国である。

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テコンV - 前田有一

◆竹島防衛キャンペーンなんかに利用しなきゃ可愛げがあるのだが(60点)

 「あんなオトコ大嫌いよ」といいながら、別れた男の影響を受け続ける女性がたまにいる。音楽の好みだったり、服装のセンスだったり、あるいは性癖だったり。嫌よ嫌よといいながら、高いプライドと自己愛の結果、影響を受けた自分を変えられない。日本と韓国の関係は、そんな滑稽な男女関係に似ている。

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ヒックとドラゴン - 前田有一

ヒックとドラゴン

© 2009 by PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.

◆文句のつけようのない横綱相撲(97点)

 『ヒックとドラゴン』は、いくらほめてもたりないほどの傑作であるが、それは様々な要素が高いレベルで融合された、すなわち完成度の高さによるもの。何かが突出して良いのではなく、すべてがハイクオリティ。まさに死角のない横綱。事件前の朝青龍みたいなものである。

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