◆純粋恋愛映画?? と首をかしげちゃいました(40点)
歌手の一青窈さんの代表曲、『ハナミズキ』をモチーフに造られた作品です。
◆深夜のスタジオでひとり開脚の練習に励み、砂袋を足首に巻きつけて跳躍力をつけようとする。教官の指導は厳しく未熟者は容赦なく罵声を浴びせられる。素質のほかに不断の向上心を持つ者が生き残るバレエの世界を再現する。(50点)
同輩たちが寝静まった深夜のスタジオでひとり開脚の練習に励み、砂袋を足首に巻きつけて跳躍力をつけようとする。教官の指導は厳しく未熟者は容赦なく罵声を浴びせられる。まるでスポ根マンがさながらの合宿生活、素質のほかに誰にも負けない向上心を持つ者だけが生き残るバレエの世界を再現する。彼らに求められるのは革命への強い意志と国家・党への忠誠心、自分のために踊ることを禁じられた感情のないロボットのような表情が悲しい。物語は、1980年代に米国に亡命した中国人バレエダンサーの“現在”と“過去”を交互に織り交ぜ、思想や権力では決して魂の自由を奪えないことを描く。
◆無人島が備える「極限状態」というアドバンテージをどぶに捨てたような作品(35点)
簡単に筋を説明すると、無人島に漂着した22人の男と1人の女。さてこのあとどうなるでしょう? という映画である。「22人VS.1人」という確信犯的な設定からも察しがつく通り、ドラマのキーマンは、紅一点の主人公、清子(木村多江)である。もし桐野夏生の原作を未読の方であれば、鑑賞前に、彼女がこの過酷な状況下でどのように生き抜くのか、予測してみるといいかもしれない(ただしその場合、この批評は読まないほうが賢明です)。
◆絶海の孤島で特別な地位を手に入れた女が、それを楽しみつつも何とか助かろうとエゴをむき出しにしていく。女だからとあがめられ、女だからとさげすまれ、それでも女だからこそ生き延びようとする強烈な決意が浮き彫りになる。(40点)
絶海の孤島、10数人の男の中のたった一人の女。彼女はその立場を利用して女王のごとく振舞い、男たちを操っていく。水も食料も豊富にあり、贅沢をいわなければ結構快適に暮らしていける環境で、いつしか男たちは島の日常になじんでいる。脱出の機会をうかがう女にはそんな男たちが不満でたまらない。映画は図らずも特別な地位を手に入れた女が、それを楽しみつつも何とかわが身だけでも助かろうとエゴをむき出しにしていく過程を描く。女だからとあがめられ、女だからとさげすまれ、それでも女だからこそ生き延びなければならない強烈な決意が浮き彫りにされていく。
◆男たちの間を渡り歩いて、まるで柳の枝のしなやかさとしぶとさで生き抜く清子というキャラクターが素晴らしい(60点)
人間の生存本能と社会性を問う、桐野夏生の同名小説の映画化だが、ヒロイン役の木村多江が絶妙にフィットしている。夫婦二人旅の途中で嵐に遭った清子と夫は、無人島に漂着。意外なほどたくましくサバイバルする清子に対し、夫はたちまち衰弱する。その島に、16人の若いフリーターの日本人の男たち、さらに6人の中国人密航者の男たちが流れ着き、男23人に女は清子1人という奇妙な共同生活が始まった。その島は東京島と名付けられ、清子はただ1人の女性として女王のように君臨するが、次第に島のバランスが崩れていく…。
◆自由を奪われたもどかしさと裸であられもない姿をさらす恥ずかしさに打ちひしがれながらも、いつしかその愉悦にヒロインの意識はとろけていく。それは抑圧していた自我の発見、本能に忠実に生きる人間の満ち足りた表情が美しい。(50点)
拉致され、監禁され、縛られ、吊るされ、人目にさらされる。それは女の胸の奥深くに潜む快楽を求める部分を道徳や羞恥心から解放するための儀式。自由を奪われたもどかしさと裸であられもない姿をさらす恥ずかしさに打ちひしがれながらも、いつしかその愉悦に彼女の意識はとろけていく。「やめて」と言っている唇が「やめないで」と口走りことでヒロインは本当の自分に目覚めるのだ。それは抑圧していた自我の発見、本能に忠実に生きる人間の満ち足りた表情が美しい。
◆いつも不機嫌そうな顔の老婆は、自己主張の強い北米の若者から見たデフォルメされた日本人像。彼女の孫たちは心をこめて話せば気持ちが伝わることを発見する。家族という社会の最小単位でも努力しなければ維持できないのだ。(60点)
いつも不機嫌そうな顔で、トイレを出た後にため息をつく。一切話さず、ただ一瞥をくれるだけ。ほとんど表情を変えないこの老婆は、自己主張の強い北米の若者から見たデフォルメされた日本人像だ。彼女の孫たちは試行錯誤の末、心をこめて話せばコミュニケーションを取れることを発見していく。映画は、家族という社会の最小単位ですらお互いが努力しなければそのつながりが維持できない現実を描くとともに、かけがえのない絆が血縁を超えた結びつきを生む幸福も教えてくれる。
◆不器用な3兄妹の成長と家族の絆が少ない言葉で語られる。ベタつかない家族愛が心地よい。(70点)
『セブンデイズ』(07)で脚本を手懸けたユン・ジェグの監督デビュー作となるサスペンス・スリラー。
◆不器用な3兄妹の成長と家族の絆が少ない言葉で語られる。ベタつかない家族愛が心地よい。(70点)
プラモデルオタクの青年レイは、母の死後、やむなく実家に戻る。そこには、引きこもりの兄モーリーと生意気な妹リサ、そして死んだ母が日本から呼び寄せた “ばーちゃん”がいた。誰とも深く係わらず生きてきたレイだったが、この奇妙な共同体で暮らすうちに、次第に変化していく…。
◆あくまでも子供向けで、TV感覚で気軽に楽しむ作品(30点)
松谷みよ子のロングセラー児童文学が、劇場版の映画として登場。アニメ、CG、実写の融合とのキャッチコピーだが、実態はアニメパートと実写パートにくっきりと分かれていて、この内容で“融合”とまで呼ぶのはちょっとズルい。山桜市では、死神からのメールを受信したものが連れ去られてしまう事件が頻発。自称怪奇現象専門の探偵で、中学生のハルは、行方不明になった妹のマイを探して、第一の被害者の少年・リュウの友人のカオル、カオルのクラスメートの少女ジュンと共に、不気味な廃墟の洋館、通称「怪談レストラン」に向かう…。
◆四季折々の風景の一瞬のきらめきを切り取る素晴らしい映像に、恋人たちの出会いから別れ、再生までの10年に及ぶ時の流れが余情たっぷりに焼きつけられる。離れていても一緒に眺めた景色や共に過ごしたときめきは忘れない。(60点)
黄金色に染まった夕暮れの空に浮かび上がる灯台、雪のちらつく夜道で肩を並べて歩く高校生の後ろ姿、無数の陽光を反射する鈍色の海、青々と茂った草原を走る単線列車。四季折々の風景の一瞬のきらめきを切り取るかのような素晴らしい映像に、青春の輝ける瞬間を共有したいと願う恋人たちの出会いから別れ、再生までの10年に及ぶ時の流れが余情たっぷりに焼きつけられる。離れていても一緒に眺めた景色や共に過ごしたときめきは忘れない。物語の底に流れる一途な思いは決して色あせない情熱に満ちている。
◆荻上直子が一皮むけた(70点)
乳児を何週間も放置する親がいるかと思えば、親の遺体をミイラ化させる子がいたりと、何だか最近、家族がおかしい。そんな中で公開される荻上直子監督の3年ぶりの新作は、切っても切れない家族のつながりを、独特のセンス・オブ・ユーモアでくるんだ良作だ。
◆ストリップ劇場に行かなくても“みなたん”のヌードが見られるぞ!(50点)
清純派グラビアアイドルから、すっかりお騒がせタレントになってしまった小向美奈子が、団鬼六原作のSM映画で堂々、主演。SM趣味のない筆者としてはどれほど集客に貢献するのかよくわからないが、とにかくプレス資料に記載の売り文句をそのままご紹介しておこう。なんと本作では「芋虫ころがし、生け捕り揚羽締め、三点逆股くぐり図といったオリジナル緊縛の数々が惜しげもなく披露」されているのだあ!
◆007をはるかにしのぐ秘密兵器の数々、ネコ界のハンニバル・レクターの登場以外にも、映画のファンならばワクワクするようなパロディが満載だ(50点)
大ヒットした動物映画の続編の本作は、共通の敵に対してライバル同士の犬と猫が手を組む展開が笑いを誘う。猫のスパイ組織の元エージェント、キティ・ガロアが、犬や猫、人間までも自らの支配下に置くという恐ろしい策略を企てていた。かつてない危機にさられたネコたちは、ずっと敵対してきた犬スパイ組織とも手を組むことを決心する。ネコ界からは名実ともトップ・エージェントのキャサリン、イヌ界からはすぐに暴走するが潜在能力を秘めた元警察犬のディッグス、なぜかハトのシーマスも加わって、打倒キティ・ガロアのチームを組むことに。果たして彼らはガロアの陰謀から自分たちと人間、引いては地球を守れるのか?!
◆ある殺人事件の担当になった刑事が捜査を進めていくうちに、犯人は妻ではという疑念が胸に巣食い始める。真相を追うほどに逆に追い詰められ、苛立ちが焦燥に、怒りが恐怖に変わっていく主人公の心理描写が非常に繊細でリアルだ。(50点)
交通事故の被害者はなぜプライベートを詳しく知っているのか。美しい妻は何を隠しているのか。そして謎の電話の主とどこからか自分を見張っている目。ある殺人事件の担当になった刑事が捜査を進めていくうちに、犯人は妻ではないかという思いが胸に巣食い始める。やがてその疑念は確信になり、犯行の目的がわからぬまま彼女をかばおうとして苦悩にさいなまれて行く。真相を追うほどに逆に追い詰められ、苛立ちが焦燥に、怒りが恐怖に変わっていく主人公の心理描写が非常に繊細でリアルだ。