私の優しくない先輩 - 渡まち子

◆とりあえずポップな青春映画として楽しんでほしい(50点)

 主人公の自意識や妄想を過剰な演出で描く、いわゆるセカイ系青春映画は、アニメーション出身の監督のカラーが色濃く出ている。都会から小さな島に引っ越してきた女子高生のヤマコは、憧れの南先輩を遠くからみつめるだけで幸せ。告白もできずに妄想ばかりが膨らんでいたが、ずっと渡せずにいたラブレターの存在を、天敵の不破先輩に知られてしまう。おせっかいな不破先輩は無理やりヤマコの告白計画を打ち立て“夏祭りたこ焼き大作戦”がスタートすることに。地味な同級生のキクコをも巻き込んで、次第にその気になるヤマコだったが…。

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エアベンダー - 福本次郎

◆若い主人公が信頼できる仲間とともに冒険を続けるという、ありきたりな成長物語であるにもかかわらず、へんてこりんなカンフー映画を見た気分。しかし、その珍妙さもこれほどまで極めれば高尚なジョークように感じられる。(40点)

 中国武術の達人のごとき流麗な体術で気を操る少年が、乱れた世界を正すために運命を受け入れる。その他にも土を操る部族や水を操る部族もなぜかその動きは中国風。彼らが一団となって修行に励む様は、少林寺を舞台にした数々の映画を彷彿させる。また、武装した軍団同士が激突する戦闘シーンでは、干戈を交えるものの血や肉が飛び散るリアルな残酷さとは程遠く、ほとんど死人が出ない。そもそも物語の世界観が曖昧で、若い主人公が信頼できる仲間とともに冒険を続けるうちに使命に目覚めるという、ある意味ありきたりな成長物語であるにもかかわらず、へんてこりんなカンフー映画を見た気分になる。しかし、その珍妙さもこれほどまで極めれば高尚なジョークように感じられ、結果として不思議な味わいを残す作品となった。

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インセプション - 福本次郎

インセプション

© 2010 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

◆複雑な構成は主人公が軸足を置いている現実も夢なのではという疑問にさらされる。時間も空間も歪み重力さえなくなる夢の世界は細部にまでリアリティが宿り、圧倒的な情報量は視覚的表現の可能性のさらなる進化を実感させる。(80点)

 夢の中では夢こそがリアル。他人の潜在意識に侵入し、同じ夢をみることで秘密を盗み出す技術を生業にしている男が、ターゲットの頭の中にアイデアを植え付ける=インセプションに挑む。もはや夢と覚醒の境界線は曖昧になり、夢の中の夢の中の夢の中の夢という恐ろしく複雑で壮大な構成に、主人公が軸足を置いている現実でさえ夢なのではという疑問にさらされる。時間も空間も歪み重力さえなくなる夢の情景を描いた映像は細部にまでリアリティが宿り、圧倒的な情報量は視覚的表現の可能性のさらなる進化を実感させる。

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借りぐらしのアリエッティ - 福本次郎

借りぐらしのアリエッティ

© 2010GNDHDDTW

◆小人という、閉じられた世界の住人が人間と出会った時の恐れと驚き、そして心の交流を通じて、“信じること”とは何かを問う。サイズは人間の1/10以下なのに日々の生活は人間とかわらない、そんな彼らの日常に親しみを覚える。(50点)

 床下から壁の隙間に入り、釘の階段を登ってロープを伝い食器棚の裏にある秘密の扉からキッチンに入る。ありふれた古い家の内部を動き回るのは小人たちにはスリルに満ちた大冒険。特に好奇心旺盛な少女にとって、人間の暮らしは刺激にあふれ目にするモノすべてが新しい。映画は閉じられた世界の住人が外界の人間と出会った時の恐れと驚き、そして心の交流を通じて、“信じること”とは何かを問う。サイズは人間の1/10以下なのに日々の生活は人間とかわらず、妖精のように空を飛べるわけでもなく魔法を使えるわけでもない、そんな彼らの日常に親しみを覚える。

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華麗なるアリバイ - 渡まち子

◆思わせぶりな登場人物を配しているだけで、人間描写に深みはない(45点)

 アガサ・クリスティーらしい華麗なムードのミステリーだが、謎解きの快感やスリルより、犯罪の裏側にある複雑な愛憎劇が主流の物語だ。フランスの小さな村にある上院議員夫妻の邸宅に9人の男女が集まる。そのパーティには、何人もの女性と関係を持つ精神分析医のピエールと、その妻クレールが招待されていた。そこにピエールの現在の愛人や過去の火遊びの相手、復縁を迫る元恋人らが加わり、パーティの場は独特の緊張感が走る。翌日、一発の銃声が。プールサイドには撃たれて血を流すピエールと放心状態のクレールの姿があった…。

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小さな命が呼ぶとき - 町田敦夫

小さな命が呼ぶとき

◆難病ものというよりも経済映画、バディ映画として観たい(65点)

 92年作品の『ロレンツォのオイル/命の詩』は、難病の息子を持つニック・ノルティとスーザン・サランドンの夫婦が、「まだ効果が証明されていない」と渋る医師を説得して新薬を試させるという物語だった。日本だったら「功名心にはやる医師が親の反対を押し切って新薬を試す」ということはあっても、その逆はあまり考えられないので、大いに文化の違いを感じたものだ。『小さな命が呼ぶとき』も、『ロレンツォ~』と同様、実話をもとにした物語。ただしこちらの父親は、我が子の治療薬を開発するためだけに、なんと製薬会社を作ってしまう。

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ゾンビランド - 町田敦夫

◆アクションあり、ロマンスあり、笑いありの健全ホラー(70点)

 映画ライターがどんな映画でも観るかというと、決してそんなことはないわけで、たとえば私はホラーは観ない。理由は簡単、夜ひとりでトイレに行けなくなっちゃうから。今回はそんな恐がりでも安心して観にいけるゾンビ映画をご紹介しよう。何たってこれ、登場人物が不気味なゾンビに食い殺される不健全な映画ではなく、登場人物がゾンビをジャンジャンぶっ殺していく健全な(?)作品。おまけにアクションあり、ロマンスあり、胸を打たれるシーンありの痛快コメディなのですよ。

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おのぼり物語 - 渡まち子

◆主人公の年齢が29歳というビミョーなところが上手い(50点)

 夢に向かってゆる~く頑張る若者の姿がリアルだ。気合は感じないが譲れない一線があるところがいい。マンガ家を目指して故郷の大阪から無計画に上京した29歳の聡。なんとかみつけたおんぼろアパートで、クセのある住人たちとともに、貧しくも楽しい生活が始まった。だが唯一連載していた雑誌が休刊に。ただの無職の男になって途方にくれる聡は、仕事が上手くいかず大阪に戻ろうかと悩むが、その矢先に父親がガンで入院したことを知る…。

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インセプション - 前田有一

インセプション

© 2010 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

◆たいした超大作、休養をとって本気で挑むべき(65点)

 どんな分野であろうと、すべてを知っている人間などいない。つまりは、誰もがあらゆる物事を、不十分、不完全にしか知らないということだ。だからすべてを把握し、忠実だと思っていた奥さんが隣の大学生と浮気していたとしても、あなたはショックを受ける必要などない。

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ゾンビランド - 前田有一

◆気持ちのいい連中が活躍する、万人むけ大ヒットゾンビ映画(75点)

 ゾンビ映画といえば、娯楽映画のド定番。予算の大小にかかわらず面白いものが作れるし、コメディから恋愛、アクション、サスペンス、セクシー、そしてもちろんホラーと、どんなジャンルの要素も包み込む懐の深さがある。これはもう、ホラーではなく「ゾンビ」というジャンルで捉えたほうがよほどわかりやすい。

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シュアリー・サムデイ - 渡まち子

◆若さゆえの無謀と情熱を感じる青春映画(50点)

 人気俳優の小栗旬の初監督作品は、彼の人脈をいかしたキャストのイキの良さが伝わる青春ムービーだ。過去の悪ふざけのツケで目標のない毎日を生きている若者たちが、冴えない人生を変えようと暴走する。タクミら5人の高校生は、バンドを組み文化祭に向けて練習していたのに、文化祭が中止になると知り激怒。抗議するために狂言の爆破事件を予告するが、手違いで本当に爆発が起きてしまう。それから3年、学校を退学になった彼らは、自分たちが起こした事件が引き金で、親しかった人の人生が大きく狂ってしまったことを知る…。

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エアベンダー - 渡まち子

◆とりあえず物語の続きを待つしかない(50点)

 良くも悪くも観客を翻弄するシャマラン監督の新作だが、なんと物語半ばでプツリと終わる。これでは映画の評価は難しいのだが、とりあえずは、シャマランがストーリーより映像に重きを置いた点は注目したい。有史以前、気・水・土・火の4つの王国が均衡を保つ世界。各国にはそれぞれ4つのエレメントを操る“ベンダー”がいた。だが火の国が反乱を起こし世界を征服する力を得ようとして争いが起こる。4つのエレメントすべてを操ることができる“アバター”である、気の国のエアベンダー・アンに、世界の希望が託されるが…。

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シュアリー・サムデイ - 福本次郎

◆鬱積したエネルギーを爆発させるようなテンションと躍動感がスクリーンを彩り、荒削りでパワフルな映像は小栗旬の熱き感性がほとばしる。目標なく生きる若者たちが仲間に対する信頼を再構築していく姿は熱い一方でほろ苦い。(60点)

 若気の至りで高校中退、青春を棒に振った若者たちが失われた時間を取り返すかのように疾走する。大金強奪事件に偶然遭遇してしまった彼らが、ヤクザに追われ謎の女の消息をたどるうちに、明かされていく子供時代の強烈な思い出と3年前の後悔。映画は鬱積したエネルギーを爆発させるかのごときテンションと躍動感でスクリーンを彩り、荒削りながらもパワフルな映像からは小栗旬の熱き感性がほとばしる。失うものがない者の強さと、まだまだ走ることができる喜び、目標なく生きる彼らがそれらを最大の武器にして暴れまわる中で仲間に対する信頼を再構築していく姿は熱い一方でほろ苦い。

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ザ・ホード 死霊の大群 - 福本次郎

◆いかに残酷に倒しまくるかを競うかつてのゾンビ映画と比較して、ゾンビに素手の格闘を挑むところが目新しい。ゾンビ相手に洗練されたマーシャルアーツを見せる登場人物の身のこなしには、格闘ゲームのような爽快感を覚える。(50点)

 十数発の銃弾を撃ち込んでもひるまないゾンビに対して、パンチやキックを見舞った上に関節技で首をへし折ろうとする。いかに残酷に倒しまくるかを競うかつてのゾンビ映画と比較して、ゾンビに素手の格闘を挑むところが目新しい。ゾンビたちも昔ながらの動きの鈍い種族とは違い、格闘技こそ身につけていないもののいくら殴られても蹴られてもすぐに反撃する打たれ強さと敏捷さを発揮する。対ゾンビ戦法としては無駄の多い闘い方だが、数体のゾンビ相手に洗練されたマーシャルアーツを見せるギャングの用心棒や女刑事の身のこなしには、格闘ゲームのような爽快感を覚える。

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ザ・コーヴ - 福本次郎

◆深夜、立ち入り禁止区域に高価な機材を密かに運び込み、ペンライトだけを頼りに、岩に偽装したカメラやマイクを仕掛けていく。その様子をサーモカメラでとらえたシーンはサスペンスに満ち溢れ、スパイ映画を見ているようだ。(60点)

 住民が寝静まった深夜、尾行に注意を払いながらミニバンを走らせ、フェンスを乗り越え立ち入り禁止の入り江に潜入する撮影クルー。特注した高価な機材を密かに運び込み、ペンライトだけを頼りに、岩に偽装したカメラやマイクを仕掛けていく。その様子をサーモカメラでとらえたシーンはサスペンスに満ち溢れ、スパイ映画を見ているかのよう。隠し撮りをする過程を記録する行為がこれほどまでにスリリングとは思わなかった。米国的な「正義の押し売り」的な方法論は別にして、地元漁師をすべて敵に回したスタッフが監視の目をかいくぐって“真実”を告発しようとする姿勢はあくまで戦闘的で、危険を顧みない勇気と行動力は称賛に値する。

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