トルソ - 渡まち子

◆生身の男性にカメラが向かない分、ヒロコが大切にするトルソは繰り返し描かれるのが面白い(55点)

 対照的な姉妹の再生を描く人間ドラマは、女性心理の深くてイタいところを突いている。アパレル業界で働く30代半ばのOLヒロコは、化粧もせず携帯も持たず同僚から合コンに誘われても断り続ける地味な女性だ。彼女は、顔や手足がない男性の身体の形をした“トルソ”という人形を恋人のように大切にして暮らしている。そんな彼女のマンションに、父親が違う妹のミナが恋人の暴力と浮気に耐えかねたと言いながら、強引に転がり込んでくる。図らずも共同生活をすることになった姉妹は、やがて少しずつ変化していくのだが…。

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Beautiful Islands ビューティフル アイランズ - 渡まち子

◆寡黙なこの内容は、作品としての強さはないのだが見終わった後に余韻となる(50点)

 やがて消えてゆくであろう美しい場所を巡る静かなドキュメンタリーだ。ナレーションやBGMを排除した作りは、一般観客に訴える力は削がれているものの、その分、作り手の“本気”を感じる。気候変動による悪影響を直接受ける、南太平洋のツバル、イタリアのベネチア、アラスカのシシマレフ島を舞台に、そこで暮らす人々、とりわけ子供たちにスポットをあてながら、今やグローバルな懸案事項になっている地球温暖化という問題を無言で訴えていく。

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トイ・ストーリー3 - 山口拓朗

◆綿密にドラマを練り上げた脚本家には、最大級の賛辞を送りたい(95点)

 おもちゃにとびきり魅力的な個性を与え、彼らの日常(人間の目が行き届かない時間帯)をユーモアたっぷりに描くピクサー製作の「トイ・ストーリー」(第1作は1995年/第2作は1999年)。そんな人気アニメシリーズが11年ぶりに送り出した第3弾は、持ち主アンディとおもちゃ、双方向の「卒業」を描いた物語だ。

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ぼくのエリ 200歳の少女 - 渡まち子

◆映像は静謐で冷やかだが、12歳の初恋はぬくもりに満ちている(75点)

 北欧特有の冷気と幻想の中で繰り広げられる残酷で美しいメルヘン。孤独な少年とヴァンパイアの少女の結びつきを、ポエティックに描いていく。12歳のオスカーはストックホルム郊外の街で暮らす繊細で孤独な少年。学校で深刻ないじめにあっているが、親も教師も彼の状況に気付かない。ある日、アパートの隣に引っ越してきたエリという少女に出会う。一方、街では、残虐な殺人事件が連発していた。夜しか会えないエリに、オスカーは心惹かれていくが、ある時、エリが人の血を吸って生きるヴァンパイアだと気付いてしまう…。

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恐怖 - 福本次郎

◆大脳の特定部位に電気的刺激を与えると、幽体離脱が起きる。幻覚なのか現実なのか、新たな進化のステージととらえる女医とその誘惑から逃れられない若い研修医の葛藤がホラー映画の常識を超えた衝撃を生む、はずだったが・・・。(40点)

 大脳の特定部位に電気的刺激を与えると、幽体離脱が起こる。意識は体内から乖離し、遠く離れた場所の情報を集めて戻ってくる。幻覚なのか現実なのか、人間の新たな進化のステージととらえる女医とその誘惑から逃れられない若い研修医。霊界と現世、生と死のはざまで繰り広げられる母娘の葛藤がホラー映画の常識を超えた衝撃を生む、はずだった。しかし、科学と心霊現象の混同が著しく、肉体と魂の定義も曖昧。何より死後の世界を真っ白な光でごまかしてしまったのがいけなかった。

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トイ・ストーリー3 - 福本次郎

◆無邪気な子供の想像力の中で命と物語を与えられ、その使命を果たすおもちゃたち。彼らの冒険と人間との関係のなかで、持ち主の思い出がしみついたおもちゃは心を持っていると思わせるほど、豊かな感情が描き込まれている。(70点)

 見渡す限りの平原で列車強盗と闘う保安官が宇宙人に囚われる・・・。無邪気な子供の想像力の中で命と物語を与えられ、その使命を果たすおもちゃたち。持ち主が成長するにつれ役割を終えた彼らはゴミとなるか、物置に放り込まれるか、いずれにしてもおもちゃは持ち主が大人になったら必要とされなくなる。そんな、自分たちが「価値のないもの」のレッテルを張られてしまったと誤解するおもちゃたちが哀れだ。彼らの冒険と人間との関係のなかで、持ち主の思い出がしみついたおもちゃは心を持っているのではと思わせるほど、豊かな感情が描き込まれている。

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必死剣鳥刺し - 福本次郎

必死剣鳥刺し

© 2010「必死剣鳥刺し」製作委員会

◆あくまでも寡黙。死ぬべき時に死ねずいまだに生きている居心地の悪さと、救ってもらった恩義、その板挟みになりながらも個を捨て忠義を全うする道を選ぶ武士の魂を、豊川悦司がわずかに背中に感情の一端をのぞかせて表現する。(50点)

 あくまでも寡黙、胸に秘めたる義憤は奥歯をかみしめてこらえる。乱れた世の中に心を痛め、その元凶を取り除くことに自らの最期をゆだねた侍が、運命のいたずらに命をもてあそばれる。死ぬべき時に死ねずいまだに生きている居心地の悪さと、救ってもらった恩義、その板挟みになりながらも個を捨て忠義を全うする道を選ぶ武士の魂を、豊川悦司がわずかに背中に感情の一端をのぞかせる演技で表現する。不可解な人事とその奥に隠された怨念、己の理想に背く命令への苦悩、組織のために捨て石にされる悲哀、そして決して口にできない愛。だれよりも強い正義感を持ちながらも、汚泥にまみれた現実に押しつぶされていく主人公が哀れなほど美しい。

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恐怖 - 渡まち子

◆本当に怖いのは学問や名声より“見えない何かを知りたい”という欲望を膨らませて、家族やついには自分まで使ってタブーの領域に踏み込んでいく母親の狂気(55点)

 世界が認めるジャパニーズ・ホラーの特徴は、何か分からないものが迫ってくる、核のない恐怖を描く点にあるが、本作もその系譜につながる作品だ。脳科学の研究者である太田夫妻は、戦前の満州で行なわれた脳の人体実験のフィルムに映った真っ白で不気味な光を目にするが、二人の幼い娘も偶然にその光を見てしまう。17年後、死への誘惑に取りつかれた姉・みゆきが失踪。姉の行方を捜す妹のかおりは、違法の脳実験を繰り返す母親・悦子と再会する。狂気の母親と二人の姉妹を待ち受けているのは、恐ろしい“もうひとつの現実”だった…。

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Beautiful Islands ビューティフル アイランズ - 福本次郎

◆次第に水浸しになるサンマルコ広場、即席の高架歩道を組み立ている間にも海水は街中に侵入し、市民はゴム長靴にはきかえて対応する。水没しつつあるベネチア、もはや慣れっこになっているのかその光景は日常の延長のようだ。(50点)

 ゴンドラに乗った歌手がギターの伴奏で高らかに歌いあげ、宮殿をそのまま改装し本物の美術品に囲まれたホテルのロビーからは歴史の重みが醸し出され、カーニバルの季節には仮面に素顔を隠した男女がダンスに興じる。そんな中世の街並みと雰囲気を残す水の都にも警報と共に高潮が押し寄せる。次第に水浸しになるサンマルコ広場、街の人々が即席の高架歩道を組み立ている間にも海水は街中に侵入し、ホテルや商店まで蝕むが、市民はゴム長靴にはきかえて対応する。水没しつつあるベネチア、もはや彼らには慣れっこになっているのか、その光景はどこか日常の延長のようだ。破滅は突然やってくるのではなくじわじわと予兆をはらんで忍び寄ってくる、危機感の希薄さが逆にその恐ろしさを増幅する。

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必死剣鳥刺し - 渡まち子

必死剣鳥刺し

© 2010「必死剣鳥刺し」製作委員会

◆クライマックスには怒涛の斬り合いと流血描写が用意され、理不尽すぎる展開に驚く(60点)

 組織と権力の悪意に、個人の正義が利用され踏み潰されるこの物語は、藤沢文学の中でも異色の苛烈さを持つ時代劇だ。江戸時代の海坂藩。兼見三左ェ門は藩主の失政の元凶である愛妾を城中で刺し殺す。死を覚悟したその行為には意外なほど寛大な処分が下り、再び藩主の傍に仕えることに。腑に落ちない思いを抱きながらも、亡妻の姪・里尾とのおだやかな日々の中で三左ェ門は再び落ち着きを取り戻す。そんなある日、中老・津田民部から、天心独名流の剣豪の三左ェ門に、必勝技“鳥刺し”をお上のために役立てろという秘命が下る…。

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バウンティー・ハンター - 渡まち子

バウンティー・ハンター

◆元夫婦ならではの騙し合いと微妙な愛情を組み合わせて、なかなかテンポがいい(55点)

 元夫婦が追うものと追われるものに、さらに二人揃って犯罪組織に追われるという二重の追いかけっこが楽しめるアクション・ラブコメディ。賞金稼ぎ(バウンティー・ハンター)のマイロは借金まみれ。返済金を返すために請け負った仕事は、懸賞金が懸けられた新聞記者で元妻のニコールを捕まえて警察に連行すること。妻に捨てられ、実はまだ未練があるマイロと、捕まってはすり抜けるニコールは互いに駆け引きを繰り広げる。だがそんな二人は、ニコールが追っていた特ダネから、いつしか犯罪組織から追われる羽目になり…。

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トイ・ストーリー3 - 前田有一

◆おもちゃを捨てられなくなるシリーズ3(95点)

 ピクサー製作のアニメーションは、頭ひとつ以上抜き出た脚本力により、もはや10割打者といってもいいほどの傑作率を誇る。その作品群は原作ものではないオリジナルにこだわった企画ばかりだが、中でも「トイ・ストーリー」は記念すべき第一作。社のアイデンティティーといってもいい、スタッフ全員の夢を託した渾身の一本だったわけだ。

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プレデターズ - 渡まち子

プレデターズ

© 2010 TWENTIETH CENTURY FOX

◆クドクドとした説明などなく一気にサバイバルに突入する展開が小気味良い(70点)

 最強の地球外生命体プレデターとの戦いは完全アウェイでの死闘。ゲーム的展開ながら独創的なストーリーは映画として見事に成立している。不気味なジャングルに人間の男女8人が放り出される。そこは未知の惑星で、恐るべき地球外生命体・プレデターの人間狩りの場だった。傭兵やスナイパー、特殊部隊やヤクザなど、戦闘のプロたちは、自分たちが狩りの獲物としてこの星に連れてこられたことを知る…。

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プレデターズ - 福本次郎

プレデターズ

© 2010 TWENTIETH CENTURY FOX

◆戸惑いや怯えは禁物、しかしどんな危険が迫ってくるかわかない状況では警戒心と慎重さも求められる。映画はプレデターの狩場に放り込まれた歴戦の勇士たちが味わう恐怖と、決して捨てない誇りや生き残る意思の強さを描く。(50点)

 目覚めると落下している。猛スピードで地面が近づいてくる中で、状況を把握し、何をすべきかを判断する冷静さを持つ者だけがパラシュートを開いて生き延びる。異境にいきなり放り出されたつわものたちのサバイバル本能を目覚めさせる見事な導入部だ。戸惑いや怯えは禁物、しかしどんな危険が迫ってくるかわかないシチュエーションで警戒心と慎重さも求められる。確実なのは自分たちが獲物で、油断すると即命を失うこと。映画はプレデターの狩場に放り込まれた歴戦の勇士たちが味わう恐怖と、決して捨てない誇りや生き残る意思の強さを描く。

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ぼくのエリ 200歳の少女 - 福本次郎

◆体温のない体にも心は宿り、好きという気持ちに応えようとする。最初は相いれない禁断の関係に少年を拒絶していたヴァンパイアの少女の、空白を埋めてくれる彼が愛おしくなっていく様子が、寡黙かつ繊細な映像で描かれる。(60点)

 永遠の若さと命を手に入れた代償は太陽を拝めない人生。昼間は暗くしたバスルームで息をひそめ、夜になると欲望を満たすために街を徘徊する。そんなヴァンパイアの少女が、誰にも愛されない少年と知り合いお互いに惹かれあっていく。体温のない体にも心は宿り、好きという気持ちに応えようとする。最初は相いれない禁断の関係に彼を拒絶していた彼女も、己の空白を埋めてくれる少年の存在が愛おしくなっていく様子が寡黙かつ繊細、余白をたっぷり取った寂寥感あふれる映像で描かれる。少年も少女も、感情表現を抑えることで不気味さの中に切なさを醸し出す。

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