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◆「命のリレー」に感涙するもよし、医学の意義を再考するもよし(60点)
現職医師・大鐘稔彦の医療小説を『フライ,ダディ,フライ』の成島出監督が映像化。1989年、腐敗した市民病院に赴任した米国帰りの外科医、当麻(堤真一)は、卓越した手技と医療への熱意によってナースや若手医師を感化していく。世話になった市長(柄本明)が肝硬変で倒れると、当麻はまだ法律で認められていなかった脳死患者からの肝臓移植を決断。しかし当麻を快く思わない外科医長の野本(生瀬勝久)は、それを追い落としの口実にしようと目論み……。
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◆ナタリー・ポートマンも菩薩である(70点)
スザンネ・ビア監督のデンマーク映画『ある愛の風景』(04)を、『マイ・レフト・フット』のジム・シェリダン監督がリメイク。よき夫、よき父、よき海兵隊将校である兄のサム(トビー・マグワイア)は、厄介者の弟トミー(ジェイク・ギレンホール)が出所するのと入れ替わりにアフガニスタンに出征し、乗っていたヘリを撃墜される。自堕落だったトミーは、悲しみに沈む兄嫁のグレース(ナタリー・ポートマン)と2人の姪を支える中で次第に更生していくが、彼らの間に絆が芽生え始めた頃、死んだはずのサムが別人のようになって生還し……。
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◆ニュージーランド、エジプト、日本の自然と世界遺産を、地球観測衛星からの映像と、4K3Dデジタルカメラによる映像で描いた立体映画。38分の短編だが、3D本来の魅力が存分に味わえる(71点)
日本における「3D元年」といわれた昨年から今年にかけて、デジタル3D作品が次々と公開されている。アニメーションやモーション・キャプチャーについては、立体効果に満足した作品が多かったが、実写となるとどうか。モーション・キャプチャーと実写が融合した「アバター」は別として、「アリス・イン・ワンダーランド」は妙に画面が暗く、「タイタンの戦い」は殆ど飛び出す感じがなかった。実写の3Dは果たして成功しているといえるだろうか。
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殺人犯 - 小梶勝男
◆人間の心に潜む異常なまでの邪悪さを描くサスペンス・スリラー。連続殺人の残虐な描写の果てに、衝撃のラストが待っている(68点)
この作品が長編デビューとなるロイ・チョウ監督は、アン・リーの助監督をやった人で、Jホラーの直接的な影響はさほど受けていないという。だが、冒頭から途中までの展開は黒沢清の「叫」(2006)によく似ている。そして後半のどんでん返しは、書くとネタバレになるのでタイトルを書けないが、「ある映画」と全く同じネタだ。「パクリ」なのかと思ったら、監督がこの話の元になる新聞記事を読んだのは2004年という。偶然、同じネタとなったようだ。作品としては「ある映画」の方がよく出来ているが、こちらもなかなか面白い。もし「ある映画」を見ていなかったら、かなり衝撃的なラストだと思う。
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◆モダン・ゾンビの祖、ジョージ・A・ロメロのゾンビ・サーガ最新作。これまでの作品に比べ、緊迫感は薄れたが、人間同士の戦いをメーンに新しい切り口に挑戦している(79点)
すでに70歳を超えるジョージ・A・ロメロの新作を見ることが出来るのはとても嬉しい。「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」の製作は1968年。それから42年がたち、ロメロの生んだ(ブードゥーではない)モダン・ゾンビは世界中で様々に進化し、増殖してきた。その間、ロメロも常に新しいゾンビ映画を、一種のサーガとして作り続けてきた。本作はロメロの6本目のゾンビ映画だ。これまでの作品と大きく違うのは、人間とゾンビの戦いではなく、人間同士の戦いがメーンとなっていることだろう。人間もゾンビも、「攻撃してくる者」「戦う相手」として、同じように描かれている。
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◆イタリアン・ホラーの巨匠ダリオ・アルジェントの「動物3部作」最終章。日本では1973年に公開されたものの、その後ソフト化されず、再公開が待たれていた。アルジェントらしいトリッキーなカメラワークが駆使されたジャーロの秀作だ(80点)
日本劇場初公開から37年ぶりに本作がリバイバル・ロードショーされるというのは、衝撃的なニュースだ。「サスペリア」(1977)などで知られるイタリアン・ホラーの巨匠、ダリオ・アルジェントは、日本では非常に人気が高く、その作品のほとんどがソフト化されている。だが、1971年に発表された本作だけは、何故かこれまでソフト化されていないため、もう一度見たくても見ることが出来なかったのだ。
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◆デンゼル・ワシントン主演のアクション大作。最終戦争後の荒廃した世界を舞台に、「ある本」を運ぶ男をスタイリッシュな映像で描く。驚きのラストまで、ドラマとアクションがうまく噛み合っているが、「ある本」の意味が日本人にはピンとこないかも知れない(79点)
監督のアルバート・ヒューズとアレン・ヒューズは双子の兄弟だという。製作がジョエル・シルバーで監督が兄弟と聞けば、「マトリックス」シリーズのウォシャウスキー兄弟を思い出すが、ヒューズ兄弟も彼らに負けないくらい映画マニアであるようだ。様々な映画へのオマージュを感じさせる。それがストーリーにうまい具合にはまっているのに感心した。日本の「あの映画」へもオマージュが捧げられているが、「落ち」に関わることなので、タイトルが言えないのが残念だ。
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◆地方の市民病院を一人の医師が変えていく医療ヒューマンドラマ。手術場面のリアルさと、堤真一の演技が素晴らしい(78点)
現職医師である大鐘稔彦の小説を「ミッドナイトイーグル」(2007)「ラブ・ファイト」(2008)の成島出が監督した、医療ヒューマンドラマ。地域医療の問題を真っ向から捉えて、実に見応えがあった。
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◆崖っぷちのカントリーシンガーが再起を図る(65点)
俳優としても活躍するスコット・クーパーの映画監督デビュー作『クレイジー・ハート(原題:CRAZY HEART)』。低予算の非常に小さな映画でありながらも、演技派の俳優たちが集い、彼らの技が物語の中で絶妙に映える。本作はアメリカ南西部の広大な自然を背景に、老年期に差し掛かろうとしているジェフ・ブリッジス扮するカントリーシンガーのミュージシャンとして、そして男としての葛藤を丁寧に描きだす。
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◆アメリカに豊かな暮らしを求め旅をする中米移民の現状をリアルに描く(70点)
アメリカに豊かな暮らしを求め、毎年特に中米から多くの移民がメキシコ、アメリカ間の国境を越えてやって来る。移動手段は電車やトラック等があるが、彼らは警察に逮捕されたり、時には殺される事もあり、多くの者は夢半ばで敗れてしまう。2009年のサンダンス映画祭で旋風を巻き起こした日本語で「名無し」の意味を持つ映画『闇の列車、光の旅(原題:SIN NOMBRE)』では移民の少女とメキシコのギャング集団に所属する少年の織りなす物語の中で、移民達がアメリカに辿り着く過程をリアルに描く。
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◆カンヌ映画祭で審査員全員一致でパルム・ドールを受賞したあの映画!(85点)
カンヌ映画祭で審査員全員一致でパルム・ドールを受賞したあの映画!(85点)
教師と生徒を描く映画は多い。例えば、『青春の輝き』や『デンジャラス・マインド』、最近では『フリーダム・ライターズ』等、挙げれば切りがない。 2008年のカンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞したフランス映画『パリ20区、僕たちのクラス(仏題:Entre Les Murs)』も学校が舞台だが、この映画は上に挙げた様な作品とは随分とアプローチが違う。普段こういった映画では学校外での教師と生徒の生活も描かれるのだが、この映画では彼らの学校内での姿しか映されないのだ。
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