© 2010「孤高のメス」製作委員会
◆医学に対する真摯な使命感に支えられた主人公はまさに絵にかいたようなヒーローだ。彼の、患者の命を救うためには法を犯すことも厭わずあくまで自分の信念を曲げない誠実無私な生き方は、カッコよすぎて非の打ちどころがない。(70点)
抜群の腕前と知見を持つのに人当たりは柔らかい。難しい手術に率先して挑むのに功名心とは無縁。ただ、医学に対する真摯な使命感に支えられた主人公は、女だけでなく男も惚れる、まさに絵にかいたようなヒーローだ。さらに看護師・助手などの尊敬を一身に集めても絶対に謙虚な態度を崩さない一方で、患者の命を救うためには法を犯すことも厭わず、あくまで自分の信念を曲げない過程はカッコよすぎて非の打ちどころがない。映画は1人の看護婦の目を通して、医師の本分を貫き通した男の誠実無私な生き方に迫る。
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© 2009 Brothers Production, LLC. All Rights Reserved.
◆懊悩が深く静かに確実に胸の奥に巣食っていく姿を、トビー・マグワイヤは、大きく見開いた目で演じる。その上で頬がこけ指輪が回るくらいやつれた肉体をさらすという外見的な変化を見せ、言葉にできない苦悩を饒舌に表現する。(60点)
戦場での過酷な経験が帰還兵の精神を蝕んでいく。生きて妻子のもとに帰れた喜びよりも、自らの手を血で染めた記憶が重く彼の心にのしかかる。“国に命を捧げた英雄”が決して言えない秘密を抱え、懊悩が深く静かにかつ確実に胸の奥に巣食っていく姿を、トビー・マグワイヤは、大きく見開いた目で演じる。その上で主人公のトラウマを、げっそりと頬がこけ指輪が回るくらいまでやつれた肉体をさらすという実際に身を削った外見的な変化で見せ、言葉にできない苦悩を饒舌に表現する。
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◆ドキュメンタリータッチで描いたことによって観る者にドラマであることを忘れさせ、作品の世界へと没頭させる(70点)
08年度カンヌ国際映画祭でパルムドールを獲得したローラン・カンテ監督・脚本の人間ドラマ。
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◆山田悠介原作の人気小説を映画化した前作は、思いがけない面白さを持つ小品だった(50点)
前作のラストのオチから、続編はいくらでも作れそう…との予感はやはり当たった。日本で一番多い姓「佐藤さん」迫害のゲーム・鬼ごっこで勝利した佐藤翼は、謎の独裁者“将軍”が支配する世界で妹の愛や幼なじみの洋たちと共にレジスタンス活動を繰り広げていた。将軍から受けた提案で半ば強制的に鬼ごっこに参加し、必死で逃げ回る中、なぜか翼だけが突然現実世界に戻ってしまう。鬼たちまでも一緒に連れてきてしまった翼は、現実世界でも逃げ回ることになるのだが…。
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告白 - 福本次郎
© 映画「告白」フィルムパートナーズ
◆あらゆる表現術を駆使して心理的リアリティを追求した映像は衝撃に満ち、一瞬の気の緩みを許さない緊張感を孕む。その強烈な磁力は、すでに原作を読んで物語を知っているものでさえスクリーンにくぎ付けにするほど圧倒的だ。(80点)
ブルーを基調にした無機質なトーンは人間の心の闇を象徴し、「罪を憎んで人を憎まず」の建前を徹底的に否定する。少年法によって罪に問われない年齢の少年であっても確実に邪悪の芽を成長させ、ちっぽけな自己顕示欲を満足させるという歪んだ理由で確信犯で他人を殺そうとする。様々な角度から撮影された短いカットを積み重ね、強調と省略、アップを遠景など、あらゆる表現術を駆使して心理的リアリティを追求した映像は衝撃に満ち、一瞬も気の緩みを許さない緊張感を孕む。その強烈な磁力は、すでに原作を読んで物語を知っているものでさえスクリーンにくぎ付けにするほど圧倒的だ。
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© 2010 New Line Productions, Inc. and Home Box Office, Inc.
◆華やかな消費を送ることが生きている証のようなヒロインが、欲望のおもむくままに暴走し、アブダビにまで飛んで傍若無人の限りを尽くす。人生を貪欲に迷いなく楽しもうとする突き抜けた哲学はもはや見事としか言いようがない。(40点)
どれほど景気が後退しようとも摩天楼の輝きはまったく色あせず、世界の中心としての魅力を放ち続けるニューヨーク。そこで、高級車に乗りコンドミニアムに住み華やかな消費を送ることが生きている証のヒロインが、欲望のおもむくままに暴走する。あまりにもバブリーなゲイカップルの結婚式に始まり、家事をまったくせずファッション誌のグラビアのような暮らし、さらに今回は中東・アブダビにまで飛んで傍若無人の限りを尽くす。わがままし放題なのに周りはひれ伏す、そんな彼女を見て同性の観客は日ごろのうっぷんを晴らし、溜飲を下げているのだろうか。
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© 2010「孤高のメス」製作委員会
◆医者にとっても患者にとっても希望を与えてくれるヒューマンドラマ(55点)
何かと問題の多い医学界にあって、実力と人徳を兼ね備えた主人公はまるでスーパーヒーローだ。1989年のある地方都市の市民病院に、外科医の当麻鉄彦が赴任してくる。見栄や体裁ばかりを気にする病院の悪しき体制に不満を感じながらも、優秀な外科医である彼は、困難なオペを成功させ、患者を救うべく全力を尽くし、病院のスタッフの信頼を勝ち得ていく。一方、当麻の存在を疎ましく思う医師もいた。そんな中、病院を支えてきた市長が倒れる。当麻は前例のない成人から成人への生体肝移植をすべきかどうかの選択を迫られるが…。
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© 2010「アウトレイジ」製作委員会
◆暴力をテーマに、ヤクザ同士の潰し合いを描いた北野武監督作。よく出来たB級バイオレンス映画(77点)
北野武監督は、テレビ番組のインタビューで、「どつき漫才」を例に出し、暴力は笑いと同じだと語っていた。漫才でどつかれれば笑いが起こるが、どつかれる方が流血すれば、暴力として恐怖を呼ぶことになる。見せ方によっては、「どつく」という行為は、暴力にもお笑いにもなる。また別の番組では、暴力は描写が過剰過ぎるとホラーになってしまうとも語っていた。ホラーは恐怖だが、血しぶきが過剰に飛び散るスプラッター映画は時として笑いに転化する。笑いにも恐怖にも狂気にも成り得る暴力を、いかに斬新に、痛みが伝わるように表現するか。本作は、エンタティンメントであると同時に、北野武監督による暴力論であるとも言えるだろう。
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◆他の部屋の人物との関係性に面白味が薄いので、普通のオムニバス映画といった印象(50点)
豪華キャストのアンサンブル・ストーリーだが、4つの話の絡み具合が物足りない。辺ぴな山奥にあるモーテルに、偶然11人の男女が集まる。4部屋それぞれの密室で繰り広げられるのは、予測不可能なドタバタ劇だ。インチキ美容クリームを扱うセールスマン亀田と三十路前のコールガールのキャンディの騙し合い。3,000万円の借金から逃げてモーテルに隠れるギャンブラーの朝倉と恋人の留衣の部屋にはヤクザが取立てにやってきてヤキを入れる。マンネリ気味の社長夫婦に、お目当てのキャバクラ嬢を連れ込んだ常連客も。ワケアリの男女が繰り広げる運命の一夜は、はたしてどんな朝を迎えるのか?!
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© 2009 Brothers Production, LLC. All Rights Reserved.
◆本作はオリジナルよりも、すさまじい体験を経たサムと家族が、本当の絆を見出すホームドラマの要素に重点を置いている(60点)
戦争がもたらす癒えない傷と、兵士を支える家族という普遍的なテーマを扱う人間ドラマである。米軍海兵隊の大尉サムは学生時代から優秀な青年だ。一方、サムの弟のトミーは問題ばかりおこし、今も刑務所に服役中。だが兄弟はとても仲が良かった。弟の出所と入れ替わるように兄はアフガニスタンに旅立つが、ある時、サムの訃報が妻グレースのもとに届く。絶望の淵に沈むグレースと二人の幼い娘たちを支えたのは、厄介者だったはずのトミーだった。グレースとトミーの距離が確実に縮まったその時、死んだはずのサムが生還する。グレースは喜ぶが、戻ってきたサムは驚くほど別人になっていた…。
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告白 - 渡まち子
© 映画「告白」フィルムパートナーズ
◆淡々としたモノローグに戦慄を覚える異色ミステリー。レディオヘッドの音楽がレクイエムに聞こえる。(70点)
とある中学校の終業式の日。1年B組の教室で担任の森口悠子は「私の娘・愛美が死にました。警察は事故死と判断しましたが、このクラスの生徒に殺されたのです」と語り出す。衝撃的な告白に教室内は騒然となるが…。
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殺人犯 - 福本次郎
◆主人公の不安定な精神を延々と再現するという、あまりに手垢のついた表現にウンザリしているときに突然投げ出される衝撃の真実。どんでん返しとはまさにこの展開、禁じ手スレスレのまったく予想外のオチに思わず膝を打った。(50点)
「もしかして」という疑念と「そんなはずはない」と否定する声が胸の奥で共鳴する。同僚が悲惨な目にあった現場で気を失っていた刑事が、捜査を続けるうちに犯人は自分ではないかという疑いを持ち始める。記憶喪失、妄想、悪夢…、謎が新たな謎を呼ぶ迷宮の中で立ち往生し、途方に暮れる彼の心理状態は壊れそうなほどデリケートに過剰反応していく。映画は、そんな主人公の不安定な精神を延々と再現し、今はやりのサイコホラーの様相を呈していく。そのあまりに手垢のついた表現にウンザリしているときに突然投げ出される衝撃の真実。どんでん返しとはまさにこの展開、禁じ手スレスレのまったく予想外のオチに思わず膝を打った。
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© 2010 New Line Productions, Inc. and Home Box Office, Inc.
◆大人気ドラマの劇場版の続編だが、雰囲気はゴージャスでも、物語に新鮮味が感じられない(50点)
仕事も恋も遊びも貪欲なあの4人が再び登場。浮世離れしたセレブ・ライフと下世話な本音トークに笑いがこみ上げる。結婚式ドタキャンという事件を乗り越えてようやく結ばれたキャリーとミスター・ビッグ。2年目の結婚記念日を迎えるが、どうやら倦怠期のムードだ。一方で、ミランダとシャーロットもそれぞれの問題で頭を悩ませていた。そんなとき、中東の都アブダビへの豪華旅行に招待されたサマンサが3人に一緒に行こうと提案する。夢のようなバカンスではしゃぐ4人だったが、キャリーは元カレのエイダンと偶然に再会し…。
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◆驚愕のラストに向けた伏線を見逃すな!(70点)
いやあ、たまげた。本作の最後に明かされる「ある事実」には心底、驚嘆した。本当はサプライズがあることすら知らずに劇場に行った方が衝撃度は増すのだけれど、「なになに? どんなビックリがあるの?」とワクワクしながら公開を持つのも、それはそれで楽しいだろう。だから言っちゃう。あなたは本作のエンディングに必ずや目を丸くするだろう。そして劇中にちりばめられた数多くの伏線を思い起こし、それを再確認するためにもう1度観たくなるだろう。観るがいい。それだけの価値はある。
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◆豪華だが物語に物足りなさを感じてしまう第二作目(50点)
2008年の第一作目と同じくアメリカのサマームービーの先陣を切って封切られたアメリカン・コミック原作の『アイアンマン2(原題:IRON MAN 2)』。主人公トニー・スタークは細々と俳優活動を行っていたロバート・ダウニー・Jr.をスターとして復活させ、その後の彼の俳優としての人生を大きく変えた。ダウニー・Jr.の演技というよりは彼の人柄が皮肉的でチャーミングな完璧な主人公像を作り上げ、人々は新しい物語でのあのトニー・スタークを待ち焦がれた。
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