◆説明的台詞の雨あられ、各女優はそれぞれの女優にしか見えず(30点)
資生堂のCMでおなじみの6人の女優を競演させる企画もの映画。とはいえメガホンをとるのが好編「ガチ☆ボーイ」の小泉徳宏監督ということで、多少の期待とともに試写室に出かけた。
◆説明的台詞の雨あられ、各女優はそれぞれの女優にしか見えず(30点)
資生堂のCMでおなじみの6人の女優を競演させる企画もの映画。とはいえメガホンをとるのが好編「ガチ☆ボーイ」の小泉徳宏監督ということで、多少の期待とともに試写室に出かけた。
◆美しい風景と、一人生き残った罪悪感で抜け殻のようなヒロインがくっきりと対比する(55点)
不幸な事故で恋人を失ったヒロインが、失った記憶をたどる喪失と再生の物語だ。泉美は恋人の淳一とバイクで花見に出かけた帰り、交通事故に遭ってしまう。一人だけ生き残った彼女は、事故当日の記憶を失ってしまい、精神科で治療を受けながら失意の日々を過ごしていた。偶然知り合った女性弁護士の真希子の力を借りて、失われた記憶を取り戻そうと決心し、事故原因の解明を真希子に依頼する。自らも心に傷を負っている真希子は、最初は「知らないほうがいいこともある」と断ろうとする…。
◆余裕ある大人向けコメディ(65点)
セックス・アンド・ザ・シティに夢中になる女子(参考年齢平均38歳)を見ていると、たしかに少々イタい。だが、セックス・アンド・ザ・シティの女性観を必死に叩く、余裕のない人たちの姿はもっとみっともない。なにごとも、ゆったりした心構えで楽しみたい。そんな大人のたしなみを理解したカップルなどにこの作品は、なかなか楽しい時間を与えてくれる。
◆常に黒いサングラスで無表情のデンゼル・ワシントンの圧倒的な存在感とともに、緊張感を持続させる演出が素晴らしい(65点)
文明が崩壊し、荒廃した世界で、一冊の本を運ぶ孤独な男の物語には、ラストに驚きが隠されている。すべてを失った近未来。イーライはこの世に一冊だけ残る本を運んでいる。彼自身、その旅の目的や到着地を知らないのだが、ひたすら西へと向かうことだけを手がかりに旅を続けているのだ。本に近づくものは容赦なく殺すイーライ。そんな中、その本を狙う独裁者カーネギーが現われ、イーライの前に立ちはだかる…。
◆夢を抱いて豊かな国を目指す。命を落とす者、強制送還される者、そして幸運にも国境を越えても明るい展望があるとは限らない。社会の底辺から抜けようとする少女と組織を裏切った少年の逃避行の中で、中米の貧困の現実に迫る。(70点)
故郷にいても未来はない。正規のルートで出国する手立てもカネもない。そんな無産階級が夢を抱いて豊かな国を目指す。それは常に死の危険が伴う過酷な旅。命を落とす者、強制送還される者、そして幸運にも国境を越えられても、明るい展望があるとは限らない。映画は経済格差の底辺からなんとか這いあがろうともがく少女と、組織を裏切った少年の逃避行を通じて、中米の貧困の現実に迫る。無賃乗車で何日も過ごす彼らの忍耐の背景にある道徳心の高さは、信仰の深さからくるものなのか。
◆中南米から米国を目指す若い男女の逃避行を描くロード・ムービー。厳しい現実の中の希望に感動する。(75点)
ホンジュラス移民の少女サイラは、より良い暮らしを求めて父と共に米国を目指す。メキシコ人ギャングの少年ガスペルは、強盗目的で乗り込んだ列車で、サイラを襲おうとした仲間を殺めてしまう。ガスペルは追われる身となるが…。
◆命の重さを心の底から考えさせられる映画(85点)
発行部数70万部を突破し、本屋大賞を受賞した、湊かなえさんのミステリー小説「告白」を映画化したものです。
◆まるで自分の人生を繕うように丁寧に針仕事をする姿が何よりも切ない(55点)
演技初挑戦のアントニオ猪木の存在感なしには成立しない作品だが、北の町・函館の風景が一人の登場人物のような役割を担っている。時代に取り残されたようなさびれた団地には、生活保護を受ける住人たちが暮らしている。元・覆面プロレスラーの大魔神は、用心棒の役を務めていた。学校でイジメを受け、母親からもかまってもらえない孤独な少年タクロウが、偶然、ひと夏を大魔神のもとで暮らすことに。親の愛を知らない少年と、事故で死んだ息子に十分な愛を与えられなかったことを悔やむ初老の男は、いつしか心を通わせていく…。
◆夫への愛や尊敬は結婚してからでも十分に育むことができ、家族が増えるとともに喜びとなってわが身に返ってくる。映画は3世代6人の女の生き方を通じて、人生とは人を愛し人に愛されて初めて豊かになれることを教えてくれる。(50点)
花嫁衣装に身を包んだまま自宅を飛び出し、あぜ道を走り出すヒロイン。親同士が決めた結婚にどうしても納得がいかず、こらえてきた感情が爆発する。それは真実の愛をいまだ知らない若さと自由への憧れ。このプロローグが、旧弊に満ちた戦前から21世紀の自立した女性の系譜の始まりとして象徴的に描かれる。愛や尊敬は所帯を持ってからでも十分に育むことができ、家族が増えるとともに喜びとなってわが身に返ってくる。映画は3世代6人の女の生き方を通じて、人生とは人を愛し人に愛されて初めて豊かになれると教えてくれる。
◆漫然と日々を過ごす老境に差し掛かった主人公に突然降ってきた恋と復活のチャンス。長髪にジーンズ、バーを渡り歩く旧世代の残骸のような彼のライフスタイルが、砂漠と太陽に彩られた米国中西部の風景にとてもマッチしていた。(50点)
街から街をおんぼろSUVで旅し、酒とタバコを友に場末のステージに立つ男。若き日の栄光はすでになく、わずかなギャラでやる気のないライブをこなしている。そんなドサ回りのカントリー歌手の前に現れたシングルマザー。過去を忘れられない一方で漫然と日々を過ごしている老境に差し掛かった主人公が、突然降ってきた恋と復活のチャンスにもう一度賭けようとする。長髪にジーンズ、バーを渡り歩く旧世代の残骸のような彼のライフスタイルが、砂漠と太陽に彩られた米国中西部の風景にとてもマッチしていた。
◆殻にこもっていたヒロインが、濃密な人間関係に心地よさを感じる過程は、米国南部の観光用広報フィルムのよう。ウミガメが産卵する海岸、ビーチバレーを楽しむ若者、水族館とショッピング、すべてが思い出作りの演出に見える。(40点)
家族と離れて暮らしていた父と過ごした夏の日々。固く閉ざしていた少女の心が徐々に明るさを取り戻していく。あらゆる大人はうざい、ナンパしてくる男も目障りなだけという自分の殻にこもっていたヒロインが、小さな街の濃密な人間関係に心地よさを感じていく過程は、舞台となった米国南部の観光用広報フィルムのよう。ウミガメが産卵する美しい海岸、ビーチバレーを楽しむ若者、水族館とショッピング、すべてが思い出作りのための演出に見えるほど安っぽい。
◆わずか25歳でこの世を去ったロマン派の詩人ジョン・キーツの純愛物語は、プラトニックゆえの官能性に満ちている(65点)
夭折した天才詩人キーツの恋を描く繊細な恋愛ドラマだ。1818年、ロンドン郊外に若き詩人のジョン・キーツがやってくる。親友のブラウンの家で暮らす彼は、隣家に住む、刺繍やダンスが大好きな娘ファニーと惹かれ合う。詩人として駆け出しのキーツは、評論家の酷評や弟の死、貧しさなどに苦しみながらも、ファニーとの淡い恋の中で、次々に完成度の高い作品を生み出していく。だが、キーツは弟と同じ肺患を患ってしまい…。
◆長州を知る者は、彼の好演ぶりに笑わずにはいられないだろう(75点)
喜多一郎監督がデビュー作『星砂の島、私の島 ~アイランド・ドリーミン~』(03)に続いて再び沖縄の竹富島を舞台にしたドラマを完成させた。
◆物語は大河ドラマというほど大げさなものではないが、ひとつひとつの物語が丁寧で、演じる女優たちも力まずにさりげない演技をみせているのが好ましい(60点)
今の日本映画界を代表する若手美人女優がここまで勢揃いしてくれるとは、何とも豪華な企画だ。昭和11年、進歩的な娘・凛(りん)は親同士が勝手に決めた結婚に納得できず、式の当日に花嫁姿のまま家を飛び出してしまう。昭和30年代、凛の3人の娘、薫(かおる)、翠(みどり)、慧(さと)は、それぞれ悩みを抱えながらも、高度経済成長を遂げる日本で懸命に生きていた。そして現代、平成の時代を生きる娘・奏(かな)と佳(けい)は、母である慧からの手紙によって生きる素晴らしさと母の愛を知ることになる…。
◆ヒロインの感情を大きな窓から入る陽光で代弁する映像を見ていると、映画もまた光の恩恵に与るアートであることを改めて認識させられる。そしてそれは、朗読の響きと記された言葉によって補強され、官能の香りさえ帯びてくる。(50点)
まだ電気がなかった時代、人は窓辺で本を読み文をつづり服を縫っていた。そんなごくありふれた日常の風景なのに、ジェーン・カンピオンの感性を通すと人生における大切な1コマのごときかけがえのない美しさを放つ。ヒロインの喜怒哀楽を大きな窓から採り入れられた陽光が代弁するような映像を見ていると、映画もまた光の恩恵に与るアートであることを改めて認識させられる。そしてそれは、口に乗せた時の響きと手紙に記された言葉によって補強され、禁欲的な愛のはずが逆に官能の香りさえ帯びてくるのだ。