モダン・ライフ - 福本次郎

◆山奥のやせ細った土地の農家が直面する厳しい実態を、ひたすら農民たちへの聞き取りという構成で明らかにしていく。エコロジーやスローライフなどの耳に心地よい言葉は一切なく、農村への憧れなど所詮は幻想であると喝破する。(50点)

 山奥のやせ細った土地にしがみつくように農家の人々は暮らしている。耕作地も牧草地も少ないためにスケールの小さな農業しか展開できず、事業としては先細りするばかり。家族の結びつきを大切にし地元を守ろうとしているにもかかわらず、未来に明るい展望を抱けず後継者不足も深刻。そんな農業従事者が直面する厳しい実態を、ひたすら農民たちへの聞き取りという構成だけで明らかにしていく。エコロジーやロハス、オーガニックやスローライフなどの耳に心地よい言葉はここでは一切口にのぼることはなく、農村への憧れなど所詮は広告会社が作り出した幻想であると喝破する。

この映画の批評を読む »

イエロー・ハンカチーフ - 前田有一

◆山田監督の偉大さ再確認(55点)

 山田洋次監督が手がけた多くは大衆に愛される映画作品だが、その最高峰に「幸福の黄色いハンカチ」(77年)を独断で挙げたとしても、反論の声はそう多くあるまい。国産ロードムービーの大成功例にして、あまりにも有名な号泣エンディング。日本人の琴線に触れる一途な愛の物語の、しかし原作はベトナム帰還兵のエピソードを綴ったアメリカ人ピート・ハミルによるコラムである。そんな縁もあってか、このたびアメリカで「幸福の黄色いハンカチ」がリメイクされることになった。

この映画の批評を読む »

アルゼンチンタンゴ 伝説のマエストロたち - 渡まち子

◆歌手で女優でもあるビルヒニア・ルーケの貫録の美しさにも見惚れてしまう(60点)

 タンゴを愛する人たちにとって至福の音楽ドキュメンタリーだろう。高齢だが音楽への情熱がほとばしる巨匠たちの演奏に感動必至だ。2006年、40年代から50年代にかけて活躍し、アルゼンチンタンゴの黄金期を築いた世界的音楽家たちが、ブエノスアイレスに集まる。アルバム「CAFE DE LOS MAESTROS」に収める曲を演奏するためだ。タンゴに一生を捧げた彼らは、タンゴの魅力と共に自らの激動の人生を語り始める…。

この映画の批評を読む »

エルム街の悪夢 - 前田有一

エルム街の悪夢

© MMX NEW LINE PRODUCTIONS, INC.

◆マニア受けが悪そうな分、一般人には普通に楽しい(70点)

 多くのホラーヒーローが活躍した80年代。ここ数年はあたかもブームのように、「ハロウィン」のブギーマンや「13日の金曜日」のジェイソンが、リメイクによりカムバックを果たした。そしていよいよ『エルム街の悪夢』のフレディが、満を持して登場する。

この映画の批評を読む »

ザ・ロード - 前田有一

◆胃が痛くなるほどの絶望感(75点)

 この前週公開となった「ザ・ウォーカー」と本作は、世界設定もプロットもほとんど同じである。文明が崩壊し、靴やら石鹸が一番の貴重品。大事なものを抱えた主人公は、ひたすら目的地へ孤独な旅を続ける。

この映画の批評を読む »

イエロー・ハンカチーフ - 渡まち子

◆オリジナルや原作を知る観客にとっては、結果は分かっているのだが、それでも何ともいえない幸福感がじんわりと胸に広がる(60点)

 日本映画「幸福の黄色いハンカチ」のハリウッド・リメイクだが、欧米で“黄色の布”と言えば、それは「Tie a Yellow Ribbon」の歌を連想し、兵士の無事と帰還を祈るというもの。その意味で黄色の布のモチーフは、日本とアメリカでは少し受け取り方が違うのかもしれない。6年の刑期を終えて出所した中年の男ブレッド。出迎えもなく一人で街の食堂でビールを飲む。偶然出会った若い娘マーティーンと、変わり者の青年ゴーディと共に、元妻メイが暮らすニューオリンズを目指す旅に出ることに。やがてブレッドは自分とメイとの間に起こった不幸な出来事と、ある約束を話し始めた…。

この映画の批評を読む »

SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム - 福本次郎

◆平凡な日常から脱却しようともがく、もはや青春を卒業した女たちの魂の叫びを短く刻んだリズムで解き放つ。セリフにすればクサすぎる思いもラップだとストレートに口にできる、その素直なエネルギーがスクリーンに爆発する。(90点)

 カッコつけるのではなく、いちばん弱いところダメなところカッコ悪いところを脚韻を踏んだ言葉でさらけ出す。冷静に己を見つめ、客観的に対峙し、「ダサくても一生懸命に生きているんだ」と主張する。思い通りにならないもどかしさと周囲に理解されない不満、そんな日常から脱却しようともがくもはや青春を卒業した女たちの冒険と挫折。映画は彼女たちの魂の叫びを短く刻んだリズムに乗せて解き放つ。セリフにすればクサすぎる思いもラップだとストレートに口にできる、その素直なエネルギーがスクリーンに爆発する。

この映画の批評を読む »

ボローニャの夕暮れ - 福本次郎

◆高校生の娘にかいがいしく世話を焼く父親は、彼女にボーイフレンドの手配までする。そんな彼らから少し距離を置いている母親の姿が対照的。第二次大戦をはさんだ激動の時代を生きぬいた親子を通じて、家族の絆とは何かを問う。(60点)

 高校生にもなった娘にかいがいしく世話を焼く父親は、彼女にボーイフレンドの手配をして楽しい青春を過ごせるように気を使う。普通の父親ならば結婚前の一人娘に男が近寄るのを快く思わないはずなのに、クラスメイトの少年を買収してまで彼女に接近させる。あらゆるものを犠牲にしても娘に無償の愛をそそぐ父親と、彼らから少し距離を置いている母親の姿が対照的だ。映画は第二次大戦をはさんだ激動の時代を生きぬいた親子を通じて、家族の絆とは何かを問う。

この映画の批評を読む »

さんかく - 福本次郎

◆女子中学生がいい歳した男の前に餌をたらし、食いついてくると身をかわす。気まぐれなのか確信犯なのか、男はずるずると彼女のペースに引き込まれていく。そのリアルなセリフと軽妙な語り口が、そこはかとない笑いを誘う。(70点)

 ふとした言葉に期待して、ちょっとした仕種に妄想を膨らませる。そんな単純な男の思いを翻弄する少女の言動が恐ろしい。まだ中学生なのに巧みに表と裏を使い分け、いい歳した男の前に餌をたらし、食いついてくると身をかわす。気まぐれなのか確信犯でからかっているのか、男はずるずると彼女のペースに引き込まれていく。映画はその、恋人の妹に心を奪われた主人公に潜む、人間の愚かさと浅はかさをユーモラスに描く。ありふれた暮らしがいつしか予想外の修羅場になっているという本来は深刻な物語なのに、泥臭いまでにリアルなセリフと軽妙な語り口のおかげでそこはかとない笑いを誘う。

この映画の批評を読む »

エルム街の悪夢 - 渡まち子

エルム街の悪夢

© MMX NEW LINE PRODUCTIONS, INC.

◆フレディを演じるジャッキー・アール・ヘイリーは、ほとんど素顔を見せないが、それでも存在感は抜群(50点)

 1984年の同名ホラー映画のリメイクだが、本作は、夢の中に現われる殺人鬼で、最強のホラーキャラ・フレディの新たな物語だ。郊外のエルム街に住むティーンエイジャーのナンシーやジェシーたち5人の男女は毎晩同じ悪夢に悩まされてた。それは、顔にはやけど、フェドーラ帽、赤と緑のストライプのセーターを着た醜悪な殺人鬼フレディ・クルーガーから襲われる夢だった。夢の中で執拗に襲い掛かるフレディだが、やがて仲間の一人が死んだことで、悪夢は現実とつながっていることを知る。なぜ自分たちが? 眠らずにいるにはどうすれば? やがて彼らは自分たちの両親がひた隠す、ある恐ろしい事実を知ることになる…。

この映画の批評を読む »

ザ・ロード - 福本次郎

◆太陽が隠れた空はどんよりとした雲が立ち込め、建物は廃墟となり木々は立ち枯れている。そんな崩壊した地上で、ひたすら南に向かって歩く一組の父子。先に希望があると無理にでも自身を納得させる姿は、哀しみに満ちている。(60点)

 果てしない絶望が支配する世界では、死ですら甘美な夢に思えてくる。ほとんどの生物は絶滅、少ない食料を奪い合うだけでなく、人間が人間を食らう倫理の断末魔のごとき状況で、父は息子に何をしてやれるのか。せめて盗んだり殺したりする悪人にはならないでいてほしいと願う。太陽が隠れた空はどんよりとした雲が立ち込め、建物は廃墟となり木々は立ち枯れている。そんな崩壊した地上で、父子はひたすら南に向かって歩く。先に希望があると信じて、いや無理にでもあると自身を納得させる姿は、力強い半面、恐怖に爆発しそうなほど脆い哀しみに満ちている。

この映画の批評を読む »

パリ20区、僕たちのクラス - 福本次郎

◆もともと個人主義が徹底している上に、多種多様な人種・民族・宗教が混在しているクラス。人は違っていて当たり前という考え方のフランスでは、日本のように“異質なものを排除する”タイプのいじめが存在しないのが新鮮だった。(60点)

 14~5歳の少年少女が集う教室、生徒たちは少しだけ世界の広さを知り、それまで絶対的だった大人に疑いを持ち始め、先生や親も実は欠陥を持つ人間であることに気づいている。そして自分のわがままがどこまで許されるのか、自分の声をどう受け止めどんな答えを返してくれるのかを観察して、常に大人を試すような挑発的な態度を取り続ける。映画はあるクラスの9ヶ月間の出来事をカメラに収め、今学校で起きている問題をリアルに再現する。もともと個人主義が徹底している上に、多種多様な人種・民族・宗教が混在している状態。人は違っていて当たり前という考え方のフランスでは、日本のように“異質なものを排除する” タイプのいじめが存在しないのが新鮮だった。

この映画の批評を読む »

ザ・ロード - 渡まち子

◆荒廃した大地を旅する父と子のロード・ムービー。淡々としてストイックな終末譚だ。(65点)

 文明が崩壊し人類のほとんどが滅亡したアメリカ。僅かに生き残った人々が互いの人肉を食らう狂気の生き物と化す中、かすかな希望を求めて南を目指す父子がいた。父は幼い息子に、人間のモラルと生きる術を教えるが…。

この映画の批評を読む »

ザ・ウォーカー - 前田有一

◆今のアメリカを象徴するようなストーリー(75点)

 『ザ・ウォーカー』は、オープニングの狩りのシーンからどこか腰のすわりの悪さを感じる不穏なつくりの映画である。だがそれは巧妙に仕掛けられた伏線であることが、そのうち観客にもわかる。さらにストーリーにはあらゆる比喩が含まれており、現代社会に生きるアメリカ人に対する重要なメッセージや皮肉も込められている。

この映画の批評を読む »

闇の列車、光の旅 - 前田有一

◆至福のラストシーン(65点)

 近くに豊かな国があれば放っておいても……というより、たとえ禁止しても隣国の貧しい人々が殺到する。あらゆる豊かな国は、そうした不法移民をどう食い止めるかに日々悩まされている。「豊かな」宗主国にむりやり強制連行された、なんて主張する人もたまにはいるが、これは世界史の常識である。

この映画の批評を読む »

【おすすめサイト】