◆全編とても寡黙だが、静かで抒情的な演出がじんわりと染みるようで、愛する人に伝えれられない恋心の物語にフィットしている(60点)
詩を通して結ばれる3人の男女を、リリカルに描くラブ・ストーリーだ。1987年、韓国の全羅道では、ソウル五輪に向けて高速道路の建設が急ピッチで進められていた。在日韓国人の幸久は日本で非常勤講師をしながら詩人を志していたが、祖父の葬儀のために、数年ぶりに故郷の村を訪れる。従兄で兄貴分のカンスと再会し、日本で働くよりも韓国で暮らすべきと誘われる。しばらく村に滞在することにした幸久は、カンスが想いを寄せる女性ソンエに、恋の詩を書くため、カンスに詩を教えることになるが、やがて幸久もソンエに惹かれていく…。
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◆アイデンティティーとは、自分の手で掴み育てて確立するしかないのだ(60点)
まるでドキュメンタリーのような作品だがれっきとした劇映画で、フランスの“今”を切り取った作品といえる。国語教師のフランソワは、24人の中学生たちに手をやく毎日だ。スラングばかり使う、反抗的な態度をとる、出身国が違うためにケンカが絶えないなど、問題はさまざまだ。そんな中、自己紹介文を書かせる課題が、生徒たちの間で大きな波紋を巻き起こすことに。さらに問題児スレイマンがささいなことから授業中にキレてしまい大問題になる…。
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◆家庭では妻娘に愛想を尽かされ、職場でもうだつが上がらない男が、守るべき対象が現れると人が変わる。負け組に甘んじていた彼が人生に積極的に立ち向かい、不器用ながらもあきらめず目標を目指す姿は思わず応援したくなる。(50点)
自分が傷つきたくないから他人を恐れている。そのままではダメなのも分かっている。でも、その一歩を踏み出すための背中を押してくれるようなきっかけがない。家庭では妻娘に愛想を尽かされ、職場でもうだつが上がらない、教師を辞めてしかたなくタクシー運転手になった男が、守るべき対象が現れると人が変ったように周囲とかかわりあいを持ちはじめる。負け組に甘んじていた主人公が人生に積極的に立ち向かい、不器用ながらもあきらめず、一生懸命に目標を目指す過程は思わず応援したくなる。
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◆もともと個人主義が徹底している上に、多種多様な人種・民族・宗教が混在しているクラス。人は違っていて当たり前という考え方のフランスでは、日本のように“異質なものを排除する”タイプのいじめが存在しないのが新鮮だった。(60点)
14~5歳の少年少女が集う教室、生徒たちは少しだけ世界の広さを知り、それまで絶対的だった大人に疑いを持ち始め、先生や親も実は欠陥を持つ人間であることに気づいている。そして自分のわがままがどこまで許されるのか、自分の声をどう受け止めどんな答えを返してくれるのかを観察して、常に大人を試すような挑発的な態度を取り続ける。映画はあるクラスの9ヶ月間の出来事をカメラに収め、今学校で起きている問題をリアルに再現する。もともと個人主義が徹底している上に、多種多様な人種・民族・宗教が混在している状態。人は違っていて当たり前という考え方のフランスでは、日本のように“異質なものを排除する” タイプのいじめが存在しないのが新鮮だった。
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◆あれこれと詰め込みすぎて何もかも舌足らずになっている(35点)
全米で大人気のトップ・アイドルが主演の青春物語だが、ストリーがおそまつな上、主演のマイリー・サイラスの魅力がまったく伝わらない。両親の離婚で傷つき、誰に対しても素直になれないロニーは、父と夏休みを過ごすために、幼い弟と共に海辺の町にやってくる。かつてはピアノの天才と呼ばれ、父とも音楽の絆で結ばれていたロニー。だが今はピアノに向かうこともない。父と一緒の時間が気詰まりなロニーは、海岸で知り合った青年ウィルと親しくなる。それはロニーには初めての恋だったが、ウィルにはある秘密があった。さらに父が病で余命僅かだという事実を知り、ショックを受ける…。
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◆これはまさしくゾンビ版「大いなる西部」である(65点)
ゾンビ映画のマエストロ、ロメロの新作は、まるで西部劇のようでワクワクする。突如、死者が蘇り、人々を襲いはじめて4週間。世界は地獄と化していた。混乱状態の中、元州兵のサージと仲間たちは、強盗を繰り返す日々を嫌悪しながら安全な場所を求めてさまよっていた。ある時、ゾンビのいない島があるとの情報を耳にする。わずかな望みをかけて島に辿り着いた彼らだったが、そこで目にしたのはさらなる衝撃の現実だった…。
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◆欧州を感動させた映画ではあるが……(15点)
くせもの揃いのカンヌ国際映画祭。そこで2008年の最高賞(パルムドール)をとったとなれば、映画好きならば誰だって興味がわく。しかも審査委員長の映画監督ショーン・ペンは満場一致と絶賛するし、考えてみれば純粋なるフランス映画がパルムドールをとるのは久しぶりな気もする。これは見逃せないと試写に出向いたが、これが残念な肩透かしであった。
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© 2010「アウトレイジ」製作委員会
◆北野監督らしいトンガリが感じられず(55点)
近年の内向きな作品「TAKESHIS’」(2005)「監督・ばんざい!」(2007)「アキレスと亀」(2008)をへて北野武監督は、もうひとつの顔、バイオレンス作品に戻ってきた。最新作『アウトレイジ』は群像ヤクザ映画で、全編にあふれた暴力シーンが見所となっている。
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© 2010 映画「FLOWERS」製作委員会
◆説明的台詞の雨あられ、各女優はそれぞれの女優にしか見えず(30点)
資生堂のCMでおなじみの6人の女優を競演させる企画もの映画。とはいえメガホンをとるのが好編「ガチ☆ボーイ」の小泉徳宏監督ということで、多少の期待とともに試写室に出かけた。
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◆まるで自分の人生を繕うように丁寧に針仕事をする姿が何よりも切ない(55点)
演技初挑戦のアントニオ猪木の存在感なしには成立しない作品だが、北の町・函館の風景が一人の登場人物のような役割を担っている。時代に取り残されたようなさびれた団地には、生活保護を受ける住人たちが暮らしている。元・覆面プロレスラーの大魔神は、用心棒の役を務めていた。学校でイジメを受け、母親からもかまってもらえない孤独な少年タクロウが、偶然、ひと夏を大魔神のもとで暮らすことに。親の愛を知らない少年と、事故で死んだ息子に十分な愛を与えられなかったことを悔やむ初老の男は、いつしか心を通わせていく…。
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© 2010 映画「FLOWERS」製作委員会
◆夫への愛や尊敬は結婚してからでも十分に育むことができ、家族が増えるとともに喜びとなってわが身に返ってくる。映画は3世代6人の女の生き方を通じて、人生とは人を愛し人に愛されて初めて豊かになれることを教えてくれる。(50点)
花嫁衣装に身を包んだまま自宅を飛び出し、あぜ道を走り出すヒロイン。親同士が決めた結婚にどうしても納得がいかず、こらえてきた感情が爆発する。それは真実の愛をいまだ知らない若さと自由への憧れ。このプロローグが、旧弊に満ちた戦前から21世紀の自立した女性の系譜の始まりとして象徴的に描かれる。愛や尊敬は所帯を持ってからでも十分に育むことができ、家族が増えるとともに喜びとなってわが身に返ってくる。映画は3世代6人の女の生き方を通じて、人生とは人を愛し人に愛されて初めて豊かになれると教えてくれる。
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© 2009 Twentieth Century Fox
◆漫然と日々を過ごす老境に差し掛かった主人公に突然降ってきた恋と復活のチャンス。長髪にジーンズ、バーを渡り歩く旧世代の残骸のような彼のライフスタイルが、砂漠と太陽に彩られた米国中西部の風景にとてもマッチしていた。(50点)
街から街をおんぼろSUVで旅し、酒とタバコを友に場末のステージに立つ男。若き日の栄光はすでになく、わずかなギャラでやる気のないライブをこなしている。そんなドサ回りのカントリー歌手の前に現れたシングルマザー。過去を忘れられない一方で漫然と日々を過ごしている老境に差し掛かった主人公が、突然降ってきた恋と復活のチャンスにもう一度賭けようとする。長髪にジーンズ、バーを渡り歩く旧世代の残骸のような彼のライフスタイルが、砂漠と太陽に彩られた米国中西部の風景にとてもマッチしていた。
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◆殻にこもっていたヒロインが、濃密な人間関係に心地よさを感じる過程は、米国南部の観光用広報フィルムのよう。ウミガメが産卵する海岸、ビーチバレーを楽しむ若者、水族館とショッピング、すべてが思い出作りの演出に見える。(40点)
家族と離れて暮らしていた父と過ごした夏の日々。固く閉ざしていた少女の心が徐々に明るさを取り戻していく。あらゆる大人はうざい、ナンパしてくる男も目障りなだけという自分の殻にこもっていたヒロインが、小さな街の濃密な人間関係に心地よさを感じていく過程は、舞台となった米国南部の観光用広報フィルムのよう。ウミガメが産卵する美しい海岸、ビーチバレーを楽しむ若者、水族館とショッピング、すべてが思い出作りのための演出に見えるほど安っぽい。
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© 2010 映画「FLOWERS」製作委員会
◆物語は大河ドラマというほど大げさなものではないが、ひとつひとつの物語が丁寧で、演じる女優たちも力まずにさりげない演技をみせているのが好ましい(60点)
今の日本映画界を代表する若手美人女優がここまで勢揃いしてくれるとは、何とも豪華な企画だ。昭和11年、進歩的な娘・凛(りん)は親同士が勝手に決めた結婚に納得できず、式の当日に花嫁姿のまま家を飛び出してしまう。昭和30年代、凛の3人の娘、薫(かおる)、翠(みどり)、慧(さと)は、それぞれ悩みを抱えながらも、高度経済成長を遂げる日本で懸命に生きていた。そして現代、平成の時代を生きる娘・奏(かな)と佳(けい)は、母である慧からの手紙によって生きる素晴らしさと母の愛を知ることになる…。
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◆ゾンビを殺すのは簡単だが、もしそれが愛する家族だったらためらわずに止めを刺せるか。その問いに即答できない人間たちがゾンビを調教しようとする。緊急事態にもかかわらず、自分のプライドにこだわる人間たちの姿が滑稽だ。(50点)
死人がよみがえって人間を襲うようになった世界、絶海の孤島では「ゾンビは殺すべき」派と「ゾンビを飼いならす派」の二派に分かれて壮絶な主導権争いが起きる。頭部を破壊しないと活動をやめないゾンビを殺すのは簡単だが、もしそれが愛する家族だったらためらわずに止めを刺せるか。その問いに即答できない人間たちがゾンビを鎖につないで調教しようとする。しかし、本筋はあくまで島で勢力を二分する男同士の確執、そこになんの思考や打算もないゾンビが敵味方を問わず歯をむき出しにしてくるからややこしい。そんな緊急事態にもかかわらず、自分のプライドにこだわる人間たちの姿が滑稽だ。
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