Beautiful Islands ビューティフル アイランズ - 渡まち子

◆寡黙なこの内容は、作品としての強さはないのだが見終わった後に余韻となる(50点)

 やがて消えてゆくであろう美しい場所を巡る静かなドキュメンタリーだ。ナレーションやBGMを排除した作りは、一般観客に訴える力は削がれているものの、その分、作り手の“本気”を感じる。気候変動による悪影響を直接受ける、南太平洋のツバル、イタリアのベネチア、アラスカのシシマレフ島を舞台に、そこで暮らす人々、とりわけ子供たちにスポットをあてながら、今やグローバルな懸案事項になっている地球温暖化という問題を無言で訴えていく。

 3年の歳月をかけて撮影された映像は、その場所で育まれる暮らしや人々を結びつける祭り、独自の文化を紹介するものだ。ことさらに地球温暖化の危機を叫ぶようなセリフはいっさいなく、環境破壊の原因である企業や文明の悪しき点も描かない。映像詩のようにつづられるのは“美しいもの”ばかりだ。寡黙なこの内容は、作品としての強さはないのだが、見終わった後に余韻となる。水辺の暮らしの不思議な癒しとともに、優しく響いてくる波や風の音。白状すると、試写室で見ている時に、心地よすぎて睡魔が襲ってきたほどだ。何しろドキュメンタリーにしては1カットがとても長い。冗長な印象になるこの撮影スタイルをあえて選択しているところに、受信料で成り立つ国営放送・NHK出身の監督の、採算度外視のこだわりがあるように思う。強い主張や刺激よりもじっくりと被写体に向き合う姿勢を重視する海南友子という監督、記録するという行為そのものに魅せられているのかもしれない。3つの地域の中では世界で最初に水没するといわれる島ツバルの映像が一番訴える力があるように思うが、個人的には、爛熟した文化の残り香のような島ベネチアの悲哀が心に残った。水没が日常化しているベネチアの住民は、やがて海に帰っていくのではないかという気すらしてくる。

渡まち子

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