BANDAGE バンデイジ - 小梶勝男

◆90年代の音楽業界を、愛情を込めて描いた佳作。映画初出演の赤西仁が軽薄だが憎めないロッカーを好演している(73点)

 若い頃、誰でも音楽に夢中になった経験があるだろう。自分自身のそんな時代を思い出させてくれる作品だった。

 90年代のバンドブームの中、女子高生アサコ(北乃きい)はふとしたきっかけでロックバンド「LANDS」のリーダー・ナツ(赤西仁)と知り合い、やがてバンドのマネージャーとして関わっていく。「LANDS」はヒットを飛ばし、チャートのトップに躍り出るが、アサコを巡るメンバー間の対立、音楽観の違いなどが次第に表面化していく。

 手持ちカメラが人物を追う。カットを割らず、かなりの長回しが続く。ドキュメンタリーのような撮り方が、観客と登場人物たちとの間に、一定の距離を保つ。この距離感がとてもいい。今起こっていることをそのまま描いているのではなく、少し時代を置いてから当時を振り返る回想のような雰囲気を出していて、それが90年代の青春を描いた物語によく合っている。

 主演がジャニーズのアイドルグループKAT-TUNの赤西仁と聞いて、タレントありきのスター映画かと思っていたが、そうではなかった。音楽への愛も、音楽業界の人々への愛も感じさせる佳作だと思う。

 ミュージシャンたちの描写に生々しいリアリティーがあるのは、自身が音楽プロデューサーで、音楽の世界を知り尽くしている小林武史が監督しているからだろう。小林監督は岩井俊二と共同でプロデュースを務めるほか、音楽も担当している。90年代に現実に活躍した小林監督だからこそ描ける世界が、ここにある。

 だが、物語はバンドのメンバーや業界人の視点ではなく、あくまでも女子高生アサコの視点で描かれているのがいい。音楽業界という非日常的な世界に、観客がファンの立場からスッと入っていけるのだ。

 赤西仁はあまりカッコいい役ではないが、軽薄に見えて、意外と音楽に純粋な等身大のミュージシャンを好演している。北乃きいはいつもながら巧い。そして、ミュージシャンとしての夢を諦め、LANDSのマネージャーとなった女性を演じる伊藤歩がとても良かった。バンドを売るため商売優先で動いてはいるが、どこかに純粋に音楽を愛する気持ちも持っていて、自分に嫌気が差している。そんな気持ちが切々と伝わってきた。

 青春の夢に別れを告げ、大人の世界に入ったアサコは、ラストで、かつての青春の夢がまだ消えずに残っていることを知って、涙する。その場面に、若いころに夢中になった音楽に、突然再会したような感動を覚えた。

 本作はかつて、北村龍平監督で映画化が計画されたことがあった。岩井俊二に影響を受けたと思われる小林監督の作風も悪くなかったが、岩井作品とは全く違う北村版も見てみたかった気がする。

小梶勝男

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