◆緩急の利いたフランス版『プリズン・ブレイク』(80点)
無実の殺人容疑で逮捕された妻。裁判では濡れ衣が晴らせないと知った夫は、妻を脱獄させようと周到な計画を練り始め……。あらすじだけ書けば、人気の海外ドラマ『プリズン・ブレイク』のフランス版といった趣だが、この作品、ただの“亜流”には終わらない、見事な人間ドラマになっている。妻のリザに扮したのは『イングロリアス・バスターズ』『ナショナル・トレジャー』のダイアン・クルーガー。夫のジュリアンはフランスの名優、ヴァンサン・ランドンが演じた。
◆緩急の利いたフランス版『プリズン・ブレイク』(80点)
無実の殺人容疑で逮捕された妻。裁判では濡れ衣が晴らせないと知った夫は、妻を脱獄させようと周到な計画を練り始め……。あらすじだけ書けば、人気の海外ドラマ『プリズン・ブレイク』のフランス版といった趣だが、この作品、ただの“亜流”には終わらない、見事な人間ドラマになっている。妻のリザに扮したのは『イングロリアス・バスターズ』『ナショナル・トレジャー』のダイアン・クルーガー。夫のジュリアンはフランスの名優、ヴァンサン・ランドンが演じた。
◆イーストウッドが79歳にして新たな引き出しを披露(70点)
私は元来「サッカー村」の住人で、ラグビーにそれほど詳しいわけではないのだが、それでも1995年のラグビーW杯で、開催国の南アフリカが優勝を果たしたのは衝撃だった。アパルトヘイトのために長らく国際社会からつまはじきにされていた南アは、その数年前の政策転換で、ようやく国際試合ができるようになったばかりだったからだ。切磋琢磨のないところに強化はないというのがスポーツ界の常識。それを覆してあっさり優勝してしまう南ア代表は、何という怪物的なチームなのかと思った。国内の試合だけで、いったいどうやって代表の強さを維持してきたのか、と。だが15年後の今年、『インビクタス 負けざる者たち』を観て、事実は少し違っていたらしいと知った。
◆世界観は見事だが、ストーリーは?(60点)
本日(2010年1月26日)のNHKニュースで、『アバター』の全世界興収が18億5,500万ドルを突破し、公開39日目にして歴代1位の『タイタニック』を抜いたと報じられていた。芸能ニュースではなく一般ニュースで伝えられるのだから、この作品のヒットはもはや社会現象だ。私としては本作の批評はスルーしようと思っていたのだが、こうなっては仕方がない。遅ればせながら一筆書いておきますか。
◆タフで優しい女2人が、人種を超えた絆を結ぶ(70点)
サンダンス映画祭でグランプリを獲得、アカデミー賞で脚本賞にノミネートと高い評価を受けながら、地味なるがゆえに日本での公開が危ぶまれていた作品。遅ればせながらも公開された背景には本来、配給は専門外である映画館「シネマライズ」の尽力があったらしい。その英断を称えたい。
◆多様な海の生物の愛らしさやヘンテコさは必見(60点)
2001年製作の『WATARIDORI』は、邦題だけ見ても(そう、邦題です)どんな映画なのかさっぱりわからないが(字面はホラー映画みたいですね。配給各社様、邦題を付ける際は客観的な目を持ちましょう)、飛翔する渡り鳥を空中撮影でとらえた特異なドキュメンタリーだった。その『WATARIDORI』の製作・総監督を務めたフランス人俳優のジャック・ペランが、今度は海とその生物をテーマに新たなドキュメンタリーを撮り上げた。
◆若き女王の愛と葛藤を活写(70点)
ケイト・ブランシェットがエリザベス1世を演じると聞いても、多くの映画ファンは特に驚かなかったと思うが、エミリー・ブラントがヴィクトリア女王を演じるというニュースには、多くのファンが首をひねったのではないか。ヴィクトリア女王といえば、イギリスを「太陽の沈まぬ国」に発展させた同国きっての名君である。対するエミリー・ブラントは、『プラダを着た悪魔』でメリル・ストリープに奴隷扱いされていたアシスタントだ。あるいは『サンシャイン・クリーニング』で人生を投げていたフリーターだ。とても偉大な女王を演じる器とは思えなかったのだが……。
◆コメディ専科の女性監督が迷える女性たちにエールを送る(80点)
50年前に活躍した料理研究家のジュリア・チャイルドと、現代のブロガーのジュリー・パウエル。初めは「ただの人」だった2人の実在の女性が、料理を通じてそれぞれに自己実現を果たしていく様子を描いた、心温まる良作だ。
◆孤独な老人が亡き妻との約束を果たすために冒険の旅へ(70点)
カンヌ映画祭のオープニングや、東京国際映画祭のクロージングを飾ったディズニー/ピクサー10作目の長編アニメ。アニメの主人公らしからぬ無骨な顔をした老人の冒険を、カラフルで生き生きとしたCGアニメを使って描いている。
◆マイケル・ムーアがウォール街にアポなし突撃!(70点)
『ボウリング・フォー・コロンバイン』では銃規制を、『華氏911』ではブッシュ政治を、『シッコ』では医療制度を俎上に載せ、米国の抱える諸問題や矛盾点に鋭いメスを入れてきたマイケル・ムーア。その彼が新たな題材として選んだのは、「冷戦の勝者」たる資本主義だ。私たちは普段、資本主義と民主主義を同じもの、あるいは不可分のものととらえがち。でも、それは大きな間違いだよと、ムーアは強く訴える。
◆年上女は奪わない(70点)
太平洋のあちらとこちらで時ならぬ“年の差恋愛”ブームが起きている。つい先日、サンドラ・ブロックがライアン・レイノルズを婿にしたと思ったら、TBSでは観月ありさが小池徹平を前におひとりさまの我が身を顧み、NHKでは黒木瞳が向井理をつかまえた。そして今度はキャサリン・ゼタ=ジョーンズが、ジャスティン・バーサ(『ナショナル・トレジャー』シリーズでニコラス・ケイジの手伝いをしていたお調子者ですね)の中に理想の彼氏を見出そうとしている。
◆タランティーノが歴史を変えた!(90点)
クエンティン・タランティーノは、この作品で映画の定石をいくつ破っただろう? ナチス占領下のフランスを舞台に、2つのヒトラー暗殺作戦を同時進行させるという筋立てからして破格。魅力的なキャラクターを次から次へと登場させては、華麗なる死と暴力の激発の中で、惜しげもなく退場させていくのもぜいたくだ。観客は予想を裏切られ、大いに驚愕することになるが、それでいてストーリーの緊迫感やパワーが落ちることはない。おまけにタラちゃん、するに事欠いて、しまいには“歴史”まで変えてしまった。ブライアン・シンガーとトム・クルーズのコンビでも越えられなかった史実という名の厚い壁を、これほどあっさりぶち壊してしまうとは、タラちゃん、やはりあんたはただ者ではない。
◆謎だらけ、美人だらけのベルギー製密室推理劇(70点)
ベルギー国民の10人に1人が見たというヒット作。5人の男が浮気の場所として共有していた部屋で、手錠をかけられた女の死体が発見される。部屋に集まった男たちは、疑心暗鬼の中で事の真相を探り合うが……。
◆B級ながらポール・マクギガン印は歴然(70点)
政府機関に養成された超能力者が善と悪に分かれて対決・・・と言ってしまえば、いかにもベタなB級映画に聞こえるが、そこは『ホワイト・ライズ』『ラッキーナンバー7』などの洒落た作品を作ってきたポール・マクギガン監督。魔界のような香港を舞台に、彼らしいシャープな一作に仕上げている。
◆良作『サイドウェイ』を日本人向けにアレンジ(70点)
小品ながらもアカデミー賞、ゴールデングローブ賞など数多くの賞に輝いたハリウッド映画『サイドウェイ』(04)のリメイク版。冴えないシナリオライターの道雄(小日向文世)とお調子者の大介(生瀬勝久)が、カリフォルニアのワイナリー巡りをする中で、麻有子(鈴木京香)とミナ(菊地凛子)に出会う。大介とミナは早々にデキてしまうが、小心な道雄の方は……。
◆掟やぶりの変形タイムトラベルSF(70点)
この映画はひとりのタイムトラベラーを主人公にしている。が、だからといって正統派のSF映画を期待して劇場に出向くと、冒頭から客席でのけぞることになる。過去に戻った主人公が、あろうことか少年時代の自分とあっさりコンタクトしちゃうからだ。幾多のタイムトラベルSFが絶対のタブーとしてきたその行為を、彼はいとも簡単に犯してしまう……。