エド・ハリスとヴィゴ・モーテンセンが西部劇で再び共演!(60点)
今日、映画館で西部劇を観る機会が少なくなっている。それでも昨年は『3:10 to Yuma』や『ジェシー・ジェームズの暗殺』等の良質な西部劇映画が公開された。秋は良い映画が公開されるシーズン。今年もぞくぞくと賞レースに向けて映画が公開されているが、その中で犯罪小説家ロバート・B.パーカーの2005年に発表した小説が原作の『アパルーサの決闘』という西部劇映画が異彩を放っている。
なぜならトロント国際映画祭でプレミア上映された本作の監督は俳優のエド・ハリスだからだ。彼は他に製作、脚本、主演も務めており、彼がロバート・B.パーカーの小説にどれだけ惚れ込んでいるのかが伺える。エド・ハリスは2000年に『ポロック 2人だけのアトリエ』を初監督し、今回が監督としては2作目にあたる。
舞台は1880年代、保安官ヴァージル・コールと彼を支えるエヴェレット・ヒッチはアパルーサと呼ばれる町をランダール・ブラグ率いる悪者カウボーイ達から守るために雇われている。しかし、アリー・フレンチという魅力的な未亡人が町にやって来たからコールとヒッチは彼女に振り回されてしまう…。
本作での話題の1つはエド・ハリスが『ヒストリー・オブ・バイオレンス』で共演したヴィゴ・モーテンセンが出演している事。彼は昨年の『イースタン・プロミス』でアカデミー主演男優賞にノミネートされているので、本作での彼の演技には注目が集まる。ヒッチはコールにとって信頼のおけるパートナー。彼らは常に良い距離感を保っている仕事の同僚であり友人でもある。ヒッチはだいたいにおいてはあまり大きく行動を起こさず、コールを側から見守る冷静沈着なカッコいいガンマン。そのクールなヴィゴ・モーテンセンの存在感はエド・ハリスを上回っている。
そしてエド・ハリスとヴィゴ・モーテンセンの良いコンビを邪魔するのがレニー・ゼルウィガー扮するフレンチ夫人。彼女が初めてこの映画に登場した時、わたしは笑ってしまった。フレンチ夫人は魅力的な未亡人のはずなのに醜いのだ。彼女はとにかく1人ではいられない寂しい女性で、誰とでも寝てしまう。彼女はコールと恋仲になるが、ヒッチにもアプローチする。彼女の出演シーンはだいたいコメディなのだが、彼女はトラブルメーカーなため、どちらかというとこのキャラクターには苛立ちを覚えてしまう。もともとダイアン・レインにこの役はオファーされていたそうで、ハリス、モーテンセン、レインの3人だったらもっとバランスの取れた映画になっていたかもしれない。
本作はシリアスな面も持ち合わせつつユーモアを感じさせる映画。ウェスタンコメディと言ってもいいだろう。しかしコール&ヒッチ組とジェレミー・アイアンズ扮するブラグの決闘シーンはあるものの、本作は西部劇でありまがらそれに欠かせない銃撃戦のシーンがあまりない。よりドラマ性を持たせた映画にしたかったエド・ハリスの意向でガンファイトのシーンは随分早く終わってしまうのだ。『アパルーサの決闘』は『3:10 to Yuma』等に雰囲気は似ているが、内容は従来の西部劇とは異なる作品である。ヴィゴ・モーテンセンは本作でも良い演技を披露しているが、映画自体にはこれといった強いインパクトはない。
(岡本太陽)