96時間 - 小梶勝男

◆シンプルなストーリーとリーアム・ニーソンの好演、質の高いアクションの連続で見ごたえのある作品(75点)

 パリで東欧系マフィアに拉致された娘を救うため、元CIAの父親が、かつて秘密工作員として培った技術を使って組織を追い詰める。リュック・ベッソンが製作・脚本を務める本作は、「プロ」がプロの技を使って誰かを守り抜くという点で、いつもの「ベッソン映画」だ。だが、冒頭から結末まで一直線に進むシンプルなストーリーと、主演のリーアム・ニーソンの好演、そして質の高いアクションの連続で見ごたえのある作品になった。

 ニーソン演じる元CIA工作員は、やや異常とも思えるほど17歳の娘に執着している。妻とは離婚しているが、娘に会いたいがために仕事をやめて元妻の近くに引っ越しし、娘が女友達とパリに旅行すると知ると、自分も一緒に行って安全を見守ると言う。完全に娘を自分の「所有物」だと思っている。ニーソンのまじめな顔つきが、かえって狂気を秘めているように見え、単純な「善人」と描かれていないのがいい。もっとも、家族や恋人を「所有物」と思ってしまう気持ちは程度の差はあれ誰にもあるもので、共感できる範囲ではある。

 結局は旅行に行ってしまった娘は人身売買組織にさらわれてしまう。これまでのデータから、96時間以内に見つけないと取り戻せないと判明する。原題は「TAKEN」だが、邦題はここから取っている。

 そこでニーソンの秘められた狂気が爆発する。娘を救うため、法律も犯し、人も殺し、拷問もする。無関係な人間も傷つける。目標に向かって一直線、全く迷いがない。ここが本作の素晴らしいところだ。その一直線の行動が、映画のスピード感になっている。とてもテンポがいい。そして、多かれ少なかれ、他人を所有したいと思っているが、そんな欲望を常に抑えなければならない我々にとって、ニーソンの狂気の爆発は気持ちがいい。欲望の解放につながっているのである。

 主人公のオヤジがめちゃめちゃに強い。同じように「めちゃめちゃに強い父親が時間内に娘を救う」映画として、シュワルツェネッガーの「コマンドー」(1985)があった。シュワルツェネッガーは過剰な筋肉で強さに説得力を与えていたが、強そうに見えないニーソンは、「動作」で説得力を出しているのが凄い。格闘術は相手の手首を取って押さえ、攻撃は確実に首や心臓を狙う。その動きが実に様になっている。銃の撃ち方など、派手な見せ場はもちろん、点滴をつるすのにハンガーを使う場面などの細かいところの動作も、非常に手馴れて見える。プロの動作をニーソンがほぼ完璧に演じているのである。

 主人公が女性歌手を救う冒頭のエピソードなどはややもたつく感もあるが、アクションが好きな人なら十分に楽しめるだろう。

小梶勝男

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