◆人形たちと機械獣のバトルを大きな見せ場にしており、派手なアクションシーンとして描いているのが何よりも良い(75点)
第78回アカデミー賞で短編アニメ部門にノミネートされたシェーン・アッカー監督の同名作品をティム・バートンが大いに気に入り、彼の製作で長編化された。監督は短編同様にシェーンが務めた。
古びた研究室の片隅で麻布を縫い合わせてできた人形“9”が目覚める。9が外に出たとき、世界は既に荒廃していた。9の前によく似た人形の“2”が現れ、仲間であることを告げられるが、巨大な機械獣に襲撃された挙句に2は拉致されてしまう。他の番号の人形と出会った9は2を救出しようとするのだが……。
荒廃しきった街並、ダークな世界観が魅力的だ。従来の冒険ファンタジー・アニメでよく観られがちだった明るい雰囲気とはまったく正反対であり、この世界観が異色感と新味を味わわせる。
だが、内容は決して暗い上に重苦しい作品ではない。劇中で繰り広げられる人形たちと機械獣のバトルを大きな見せ場にしており、派手なアクションシーンとして描いているのが何よりも良い。これがダークな作風に明朗快活さを与えており、しかも観る者を存分に楽しませてくれる。これならアニメに馴染み深い子供たちにもオススメできるし、大人でも「所詮アニメだから…」といって軽蔑することなく楽しめることだろう。
戦争が作品の根底にあり、これが作品に重厚さを与え、ストーリーにも幅を利かせて更に見応えを感じさせてくれる。
(佐々木貴之)