50歳の恋愛白書 - 福本次郎

◆妻と母の役割をきちんとこなし、豊かな暮らしを送る50歳の主婦がふとした瞬間に感じる空白は更年期からくるものなのか。愛や幸せなど幻想で本心に嘘をついている、そんな家族の虚構に気付いた彼女の心理がリアルに再現される。(50点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 優しい夫、気さくな隣人、少し反抗的だが一応まともに育った子供たち。妻と母の役割をきちんとこなし、それなりに豊かな暮らしを送る50歳の主婦がふとした瞬間に感じる空白は更年期からくるものなのか。不眠と夢遊病、刺激的な都会から老人人口率の高い退屈な住宅地に引っ越してきたヒロインは、あり余る時間の中で過去を振り返り、漠然とした不安と不満を心に抱いてしまう。愛や幸せなど幻想にすぎず、本心に嘘をついている、そんな家族の虚構に気付いてしまった彼女の心理がリアルに再現される。

 売れっ子作家の妻・ピッパは「理想の妻」として周囲に知られているが、現実感のない毎日に違和感を覚えていて、ことあるごとに情緒不安定な母やドラッグに明け暮れた若いころを思い出している。ある日、35歳のフリーター・クリスと出会って日常に変化が現れる。

 肉体的にも精神的にも不調を隠しきれないけれど、まだまだ1人で活動できる微妙な年齢。ピッパはクリスに恋心を持っていいのかどうか迷っているよう。30歳年上の夫はまだ元気で愛してくれているが、どこか物足りない。子育てが終わりやっと自由に使える時間を持てるようになった彼女が、もうひと花咲かせようともがいているけれど、何をしていいのかわからないというジレンマが、奔放に過ごしていた若いころの記憶をよみがえらせるのだろう。結婚前の素顔のピッパと仮面をかぶった現在のピッパの落差が、彼女が本音を抑えて生きてきた歳月の長さを物語る。

 ピッパはいわゆる「略奪婚」で、夫の前妻がピッパの目の前で拳銃自殺したことがピッパを苦しめているのだが、夫が浮気をして自分が前妻と同じ立場になって初めてトラウマを克服する。夫の死と共にピッパは身辺整理をして、クリスと長いドライブに出る。他人に頼るのではなく自分の意思で未来を選択する、それでも1人では寂しいのでパートナーは必要。決して夢や希望に満ちた旅立ちではないが、それでも新しい人生を始めるのに50歳は遅くはないと示唆してくれるラストシーンは、豊かな老後の指標になっている。

福本次郎

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