No.1ウエスタンムービー。ラッセル・クロウ、クリスチャン・ベール主演(70点)
全米で週末の興行収入No.1を記録したウエスタンムービーがある。『3時10分、決断のとき』がそのタイトルだ。ウエスタンムービーは格好いいけれど、いまいち好きではなかった上に、前からあまり好きではなかった俳優ラッセル・クロウが主演という事で、期待はしていなかったのだが、わたしの大好きなクリスチャン・ベールがダブル主演ということでチェックがてらに観に行った。
この『3時10分、決断のとき』の監督を務めたのはジェームズ・マンゴールドというニューヨーク出身の監督である。彼は過去に『17歳のカルテ』や『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』などを手掛けており、数々の賞を受賞している監督である。今回の作品も何かしら賞レースに引っ掛かってきそうだが、今秋からクリスマスにかけて大量の良質映画が公開されそうなので、話題性をキープできるか否かで、賞獲得できるかが決まってくるだろう。
牧場主のダン・エヴァンス(クリスチャン・ベール)は彼の牧場経営や家族を養うことに困難を極めていた。そんな折、金が必要なダンは重犯罪者ベン・ウェイド(ラッセル・クロウ)を刑務所のあるユマに流刑にするという任務を請け負った。
3時10分発ユマ行きの電車の通る駅を目指すダンとベンそして数人の仲間。ベンの残忍な仲間達が彼らを追跡する。刑務所に送る側と送られる側という関係だったダンとベンだが、道中に次第に彼らその関係に変化が生まれる。果たしてダンは無事犯罪者ベン・ウェイドを3時10分ユマ行きの電車に乗せる事ができるのだろうか…。
クリスチャン・ベールは希少価値のある変態であると豪語するわたしだが、今回の役所はあまり捻くれてなかった。しかしながら物語の所々で葛藤する事の多い役故、演技力を要される役であった。やはりクリスチャン・ベールは良い役者である。彼が再びバットマンになる『ダークナイト』が楽しみだ。ところで、わたしとしては非常に問題だったラッセル・クロウが主演ということなのだが、彼は想像通りチョイ悪であった。極悪人なのに、ラッセル・クロウを使うとチョイ悪にならざらるを得ない。しかしながら、物語が佳境に入ると、ラッセル・クロウの演技力がモノを言うというか、急に彼の存在が大きくなるのである。さすがアカデミー賞俳優である。その他共演者にはグレッチェン・モル、ダラス・ロバーツ、ピーター・フォンダ、アラン・テュディック、ベン・フォスター、ローガン・ラーマン等が名を連ねる。あと、何故か、ルーク・ウィルソンがちょい役として出演していた。あれは一体なんだったのだろう…。
このエルモア・レナード原作の『3時10分、決断のとき』という映画、実は1957年アメリカ制作同名映画のリメイクなのである。その当時の邦題は『決断の3時10分』である。1957年当時もこの映画はカウボーイウエスタン映画だったのだが、1つ決定的に違う所があるとすれば、それは主演俳優がアメリカ人ではないという点だ。ラッセル・クロウはニュージーランド出身であるし、クリスチャン・ベールはイギリス出身だ。映画『SAYURI』の主役をチャン・ツィイーが演じた様な感じに近いかもしれない。アメリカ人がカウボーイにならなかったことに、アメリカ人はどう感じているのだろうか。主役にアメリカ人を起用しなかった点から、この映画がコテコテのアメリカウエスタンムービーでないことは伺い知るだろう。
ストーリー自体はそこまで新鮮さは感じられないのだが、それでも尚、観客を楽しませる事ができるのは、ラッセル・クロウとクリスチャン・ベール2人のお陰かもしれない。
(岡本太陽)