◆一風変わった設定がユニーク(60点)
この世に多く存在するヴァンパイア系ホラー作品。先般公開された『トワイライト初恋』と後に公開が控えている二本の続編は、従来のこの手の作品とは全く異なる作風で新種のヴァンパイア映画として記憶に新しい。そんな中、またもや異質のヴァンパイア映画が生み出された。原作は、スティーヴ・ナイルズによるグラフィック・ノベルの人気シリーズでこれを監督としても名高いサム・ライミがプロデュースし、『トワイライト』シリーズ第三弾を手懸けることが決定しているデヴィッド・スレイドが監督を務めた。
アラスカ州の小さな街バロウ。ここは、冬になると太陽が24時間昇らない極夜(白夜の反対)が訪れる。ヴァンパイアたちは、30日間にも及ぶ極夜シーズンを狙って街に出没し、人々を襲撃しては生血で欲望を満たす。保安官エバン(ジョシュ・バーネット)が街と生き延びた仲間を守るべくヴァンパイアたちと壮絶なバトルを繰り広げる。
ヴァンパイア映画と言えば暗い夜のシーンでお馴染みだが、本作では一日中太陽が昇らない、それが30日間続くという同じ暗いシーンでもこの一風変わった設定がユニークだ。おまけに外は雪がチラチラ、挙句の果てには吹雪が吹き荒れるのだからかなりキツい状況。トドメとしてヴァンパイアたちの仕業で街中が停電し、電話も不通になってしまうという最悪事態となってしまう。このような工夫を施した設定が劇中で描かれるホラー、サスペンス、サバイバル劇を面白くさせるのである。
また、登場するヴァンパイアたちも定石通りにならないように工夫が施されている。観た目はごく普通の人間に尖った牙、鋭い爪という感じ。これがまた凄まじい身体能力、怪力、そして残酷さと凶暴さを持っており、ヴァンパイアの要素にゾンビの要素をプラスしたような感じである。ヴァンパイアが魅せつける血生臭い恐ろしさが第一の見せ場となるが、スプラッター系のようにグロテスクを追求しすぎたりせず、魅せるべきところは魅せてそれなりに抑えるという感じだから丁度良い描き方だと言える。
淡々としたタッチでストーリーは展開され、ヴァンパイアによる襲撃シーン等で相応しいBGMを使用し、全体的に緊迫感を張り詰めさせたりという具合はサスペンス・ホラーならではの雰囲気が味わえる。また、アクションシーンはヴァンパイアたちを銃で撃退したりといった近年のゾンビ映画っぽい感じの描き方となっている。これを斬新な映像で魅せつけ、テンポ良く勢いのあるシーンとして仕上げている。
とにかく本作や『トワイライト』シリーズのようにヴァンパイア作品は趣向を凝らせば新しいモノが出来上がるのである。今後も従来のモノとは違った風変わり系ヴァンパイア作品が生み出されていくことだろう。
(佐々木貴之)