3時10分、決断のとき - 福本次郎

守るべきものは家族か名誉か。囚人護送を請け負った男が、命より大切なものがあることを、身をもって息子に伝えていく。駅馬車、銃撃戦、裏切りと騙しあい、汗と埃にまみれたガンマン・・・。本格的な西部劇の風格を備えた作品だ。(70点)

3時10分、決断のとき

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 守るべきものは家族の生活なのか己の名誉か。カネために囚人の護送を請け負った主人公が、命より大切なものがあることを、身をもって息子に伝えていく。さらに正義を振りかざす男たちの浅薄さと、悪党でありながら人間の真実により近い男との交流を通じて、混迷する価値観の中では何が一番大切かを問う。ヒーローでもアンチヒーローでもない、ただ、1人の男が変わらぬ信念と誇りを持って生きたといえる人生を取り戻すまでの過程が、荒涼とした風景の中で展開する。疾走する駅馬車、派手な銃撃戦、裏切りと騙しあい、汗と埃にまみれたガンマン・・・。久々に本格的な西部劇の風格を備えた作品だ。

 借金返済のために強盗団のボス・ウェイドを3日後の列車に乗せる役を買って出たダン。数人の護衛と共に駅のある町に向かって出発するが、ウェイドの手下・チャーリー率いるならず者たちが追ってくる。

 南北戦争で負った肉体的精神的な傷ゆえか、妻子の安全を最優先させるためなのか、ダンの態度はいつも煮え切らない。そんな彼の姿に息子のウィリアムは物足りなさを感じている。力なきものは淘汰されていくという現実、そのなかでダンは覚悟を固めていく。人の心のすき間にすっと入ってくるようなウェイドの誘惑に決して屈せず任務を完遂することで、父が息子に伝えようとしたもの、それは人間としてのプライドだ。

 ウェイドはダンに、他の男たちとは違う正直な部分を見たのか、時にダンを救ったりもする。何度も買収しようとするが決して応じないダンにむしろ共感を覚え、彼の職務に協力しようとするのだ。だが、自分に忠誠を誓ってきた部下を殺してまでダンを男にする必要があったのか。このあたりのウェイドの心変わりが少し分りづらく、なぜ、自ら監獄列車に乗り込んでまでダンに花を持たせたのか理解できない。ダンの決意がウェイドの気持ちを動かしたのだろうが、ウェイドほどの頭の切れる男ならダンの顔も立ちウェイド自身も無事脱出するような妙案を提示して欲しかった。

福本次郎

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