3時10分、決断のとき - 町田敦夫

◆ハリウッドの乱暴者同士が久々の西部劇で共演(80点)

 エルモア・レナード原作の西部劇『決断の3時10分』(57)のファンだったというジェームズ・マンゴールド監督が、半世紀越しでリメイクを実現させた作品。故意か偶然か、ともに暴力沙汰で世間を騒がせたことのあるラッセル・クロウとクリスチャン・ベイルが、本作で初めての共演を果たした。

 干ばつと借金に苦しむ牧場主のダン(ベイル)は、強盗団の首領ベン(クロウ)の護送を200ドルで買ってでる。旅の途上、先住民に襲撃されたり、民警団と撃ち合ったりする中で、仲間が次々と倒れていくが、ダンはどうにか目的地のコンテンションまでベンを連行。しかし3時10分発の護送列車を待つうちに、ベンの手下に包囲され……。

 埃っぽい牧場、フロンティアの町、スイングドアの酒場といった道具立てがいい意味で古典的。オープニングの駅馬車強盗からクライマックスとなる街中での銃撃戦まで、久々に西部劇らしい西部劇を堪能した印象だ(主演の2人はどちらもアメリカ人ではないのだけれど)。57年版ではコンテンションの町に着くまでの行程はあっさり処理されていたが、このリメイク版では山あり谷あり。おかげで上映時間は2時間を超えたが、冗長さはまったく感じられなかった。

 とはいえ本作の真価は、そうしたアクションシーンではなく、人間ドラマの中にこそある。一般に「二大スターの競演」などと銘打たれた映画では、両者の出番やセリフの数、キャラクターの魅力度などに差がつかないよう、脚本や演出に細心の注意が払われるのが通例だ。ロバート・デニーロとアル・パチーノが共演した『ヒート』然り、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーのなれそめとなった『Mr.&Mrs.スミス』然り。本作の元ネタである57年版からして、ベンとダンの力量や、それぞれを演じたグレン・フォードとヴァン・ヘフリンの見せ場は対等だった。

 ところが面白いことに、マンゴールド監督はそうした配慮にはすっぱりと目をつぶっている。早い話、悪党のベンの方が、実直なダンより明らかに人間としての器が大きいのだ。腕が立つのは言うに及ばず、スケッチをたしなみ、人を引きこむ会話術にも長けている。悪事は働くが、堅気の衆にはむしろ寛大。ラッセル・クロウは、飄々としたユーモアをも漂わせたそんな悪党を、魅力たっぷりに造形してみせた。終盤、ベンがダンに施す“恩恵”には感服。しゃれっ気のあるラストシーンにも頬が緩んだ。

 ただ、クリスチャン・ベイルにとっても、ダンという役柄は決して男を下げるものではない。思うに任せぬ牧場経営、戦場で傷めた脚といった鬱屈を抱えながらも、家族のために黙して働くダンは、いわば観客の分身だ。そのダンが身の丈を超える(かもしれない)使命に全身全霊をかけて取り組む姿は、自然に私たちの胸を熱くする。200ドルや浅薄な正義感のためではなく、家族に誇れる姿を見せるために、ダンは困難に挑んだ。うだつの上がらない父親に厳しい目を向けていた14歳の長男が、いつしかダンへの敬意を取り戻すシーンには、息子を持つ身ならずとも涙腺を刺激される。

 脚本のマイケル・ブラントとデレク・ハースは、ウィットに富んだ57年版のセリフを大幅に継承したうえで、新たなアクションやより深みのある人間関係を書き加えた。リメイクした意義を感じさせないリメイク作も少なくない中、本作は幸福な成功例のひとつと言えるだろう。

町田敦夫

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