◆マヤ暦の終わりにヒントを得たとんでもないディザスタームービー!(20点)
ローランド・エメリッヒの新作が出ると聞いたら観ないわけにはいかない。エメリッヒは『インデペンデンス・デイ』『GODZILLA』『デイ・アフター・トゥモロー』等、金のかかったトンデモ映画を作り続けるドイツ人映画監督で、昨年の『紀元前1万年』も事実無根のエピソードを入れ人々を唖然とさせた。特に批評家ウケの良くない彼だけに、一体どれ程ヘンテコリンな内容になっているのかと興味津々で、彼の新作映画『2012』を観たが、これがまたエメリッヒらしさ溢れるというか、ある意味期待を裏切らない強烈なものだったのだ。
2009年にアメリカ人科学者エイドリアン・ヘルムスリー(キウェテル・イジョフォー)がインドの友人サトナム(ジミ・ミストリー)を訪ね、大きな太陽フレアのせいで地球核の熱が急激に高くなっている事を知ってしまうところから物語は始まる。その後ヘルムスリーはワシントンDCに赴き、大統領補佐カール・アンハウザー(オリヴァー・プラット)に事実を報告し、すぐさまアメリカ大統領トーマス・ウィルソン(ダニー・グローヴァー)に会う。2010年にはG8主要国首脳会談が開かれ、地球の終わりについての話合いが設けられ、そこで10億ユーロ払える者だけが避難船に乗る事が出来るという事業の取り決めがなされる。
そして2012年、ロサンゼルスに住む主人公・リムジン運転手として働く売れない作家ジャクソン・カーティス(ジョン・キューザック)は別れた妻ケイト(アマンダ・ピート)と暮らす、息子ノア(リアム・ジェームズ)と娘リリー(モーガン・リリー)を連れてイエローストーン国立公園にキャンプに来ていた。そこで、彼は怪しげな風貌をしたラジオのパーソナリティ・チャーリー(ウディ・ハレルソン)に出会い、地球が滅亡すること、そして政府は密かに限られた人間だけを乗せる巨大船を製造している事を知る。全くチャーリーの話を信じないジャクソンだが、彼がロサンゼルスに戻ると、そこで今まで見た事もない地震が街を襲う…。
マヤ暦が終わる2012年12月21日。それを世界が終わる日と解釈する人も多い。そしてそれをエメリッヒ監督はあらゆる天変地異が地球を襲うのかもと大胆予測をする。しかし、現在起こっている気候変動に関するエピソードを一切語らず、ただ「マヤ人は前からそう言っていた!」とだけ映画の中に含むのはいかがなものか。映画の中には古代マヤの研究者すら出て来ないのだ。それに加え、アメリカ人はやっぱりロシア人が嫌い、アフリカに住むのは最後の手段というアメリカ人の深層心理を入れ込むエメリッヒ氏。この映画はまるでたくさんのアイデアを無理矢理含んだ浅はかな映画という印象を受けずにはいられない。
大地震、大噴火、大津波、とジャクソンと彼の家族(+トム・マッカーシー扮するケイトの恋人ゴードン)は行く先々で、大災難に巻き込まれてしまうが、彼らはいつも命辛々逃げ切れる幸運の持ち主達。彼らが遭遇する災難のCG映像は嘘だと分かってしまうが、本作の見所の1つで、冷や汗もののシーンが満載。それでいて、こんな映画にちょっとしたお涙頂戴シーンを入れつつ観客の感動を煽ろうするエメリッヒ監督のセンスの悪さが光る。大統領の娘ローラに扮するタンディ・ニュートンが涙ながらに父と話すシーンがあるが、そこも涙するどころか苦笑してしまう。これが今流行の3Dだったら、脚本の醜さを特に気にする事無く、本作を思う存分ディザスタームービーとして楽しむ事が出来たが、それはきっと予算の関係で無理だったのだろう。本作もいつもの様に観客にとってのディザスタームービーになっているのがやっぱりエメリッヒ監督作らしい。
(岡本太陽)