56人を殺害した呪われた部屋にホラー作家が滞在する…(65点)
スティーヴン・キングの短編小説を映画化した『1408号室(原題:1408)』は不気味な作品だ。西洋では13は不吉な数字、忌み数とされている。ゆえにホテル等には13階が存在しないことも少なくない。『1408号室』に登場する数字は13を連想させる。まず1408号室の位置する14階が実際の13 階に当たる点、それから1+4+0+8=13という事。とにかくこの映画で用いられる数字は13を連想させる様に巧みに計算されているのだ。この様に物語に登場する数字に気を配ると多くの13を発見することが出来るだろう。
マイク・エンズリンはホラー小説家。超常現象を信じない彼は依頼された幽霊屋敷等を実際に調査し執筆している。幽霊屋敷の推薦状を多く受け取る彼だが、差出人不明のニューヨークにあるドルフィンホテルのポストカードに目が留まる。それには「1408には入室するな」と書かれていた。これを挑戦と受け取り、エンズリンはニューヨークに向かうが…。
スウェーデンの映画監督ミカエル・ハフストロームは『1408号室』をクラシックな作品風に仕上げた。台詞等もリアルではなく、舞台演劇風に近い。またこれは、ホラー映画と称される事もあるが、恐怖が迫り来る物語と言うよりは、コミカルな部分もあり、観る者の心理を弄ぶ作品だ。
主人公エンズリンを演じるのはジョン・キューザック。共演に、ホテルの支配人に扮するサミュエル・L・ジャクソン等がいるが、これはほとんどキューザック氏の1人芝居と言っても良いだろう。なぜならマイク・エンズリンの滞在する1408室というホテルの1室で物語が展開して行くからだ。そしてその中でまるでアクション映画並みにキューザック氏が体を張って演技をしなくてはいけない出来事が次々とノンストップで起こる。
1408号室は純粋に邪悪な部屋。この部屋に入った者は誰1人として1時間持ちこたえた者はおらず56人がその生け贄になった。マイク・エンズリンはまさに最悪の状態の時に、一般客に開放される事のなかったその部屋に無理矢理チェックインする。疑心暗鬼の彼にも1408号室は容赦はしない。彼の亡くなった娘までもゲームの1要素に加え、エンズリンを翻弄する。
一体1408号室とは何なのだろうか。それは悪霊の取り憑いた部屋とも言えるが、人の記憶をコントロールするシステムの様なものにも見受けられる。1度人がそのシステムに捕らえられると、逃げる手段はただ1つ、それを破壊する事。さもなくばそのシステムの中で地獄を味わい殺されるか、自ら命を絶ち、苦悩から解放される他ない。西洋で不吉な数字とされる数字13。この映画を観るとなんとなく13という数字が気になってしまうかもしれない。本作は米国では2007年6月22日公開だったのだが、本来7月13日が公開予定日だった。
(岡本太陽)