もうひとつの『アンネの日記』を知っていますか?(点数 90点)
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2001年に実話を元にした小説がイスラエルで発表され、世界中に波紋を投げかけました。
2年後に、日本でも『走れ、走って逃げろ』のタイトルで出版されましたが、そこには信じられない事実が書かれていました。
第ニ次世界大戦中に、わずか8歳のユダヤ人少年が名前をいつわり、ポーランド人孤児として終戦までの3年間を生き抜いたというのです。
ポーランドのユダヤ人強制収容所から逃げ、行き倒れたスルリックは、ヤンチック夫人に助けられます。
一人でも生き延びられるよう「ポーランド人孤児・ユレク」としての身の上話を覚えた彼は、寝床と食料を求めて、農村を一軒一軒訪ねていきます。
救いの手を伸ばす者、扉を閉じる者、さらに利用する者。
人間の本質は、善なのか? 悪なのか?
ここまで人は残虐になれるのかと目を背けたくなる場面もありますが、本当に考えさせられる作品です。
ポーランドの美しい四季を背景に、これでもかこれでもかとつらい日々を送るスルリック。
自らの人生をあきらめることなく進んでいく強さと賢さを体現しました。
見ているだけで、もっと頑張らなきゃと勇気がわいてきます。
彼を演じたのはオーディションで選ばれて双子のトカチ兄弟。
外交的なアンジェイと内向的なカミルがアクティブなシーンと情緒たっぷりのシーンを見事に演じて分けています。
ラストにはモデルとなったヨラム・フリードマン氏の現在の姿が描かれます。
家族に囲まれている彼を見ていると、生きることの大切さ、命をつないでいく喜びを感じずにはいられません。
毎日の生活がちょっぴりつらいと感じている方に特にオススメです。
(小泉 浩子)