コズモポリス - 中野 豊

マンハッタンを走るリムジンを主舞台とした金融ホラー。(点数 80点)


©2012-COSMOPOLIS PRODUCTIONS INC./ALFAMA FILMS PRODUCTION/FRANCE 2 CINEMA

色白で吸血鬼然とした風貌の、28歳にして巨万の富を得たエリック・パッカーは、散髪へ行くとリムジンに乗り込みます。
クローネンバーグ初期の作品で『ラビット』(1977)を連想すると、いつ彼が吸血鬼に変貌してもおかしくないのですが、実はエリック自体が金という血を吸い肥大化したサイバー・ヴァンパイアなのだとわかってきます。
エリックを演ずるロバート・パティンソンが『トワイライト』シリーズのヴァンパイアだという確信犯的配役。

全編の大半がニューヨーク・マンハッタンを移動する白いリムジン内の密室劇とした閉塞感はバーチャル外世界から逃避したコミュニケーション障害のエリックの心の病巣を浮き彫りにします。

大統領がニューヨークを訪れるという日、市民デモが起りモラルなき拝金主義が格差を増長していると暴動寸での状態です。
そんなことに興味のないエリックは2マイル先の理髪店に行くことが何より重要なのです。
エリックは理髪店に向かう道すがら、最近結婚した妻と朝食とランチを共にし、娼婦と車内でセックスに耽り、リングルマザーと舌戦を繰り広げ、格差社会に抗議する男たちがネズミの死骸を手にしてダイナーに乱入し「幽霊が世界に取り憑く」とわめきちらす現場に遭遇するのです。

次にリムジンに乗り込んでくるのはエリックの理論主任をつとめる女性ヴィジャで、彼女から不吉な言葉を聞かされたエリックは、更にボディガードからも「何者かがあなたの暗殺を計画している」と警告されるのです。

ホテルで新人ボディガードと体を重ねたその夜に、妻とのディナータイムにエリックは告白します。
自分の命が狙われていること、人民元の大量投資の失敗により数百億ドルもの損失を被っていること……。
妻は言う「私たち、これでおしまいね」。

バブルははじけ、妻が去ったエリックの身に決定的な破滅の足音が忍び寄ってくるのです。

アメリカで2003年に発表されたデリーロの原作小説は、まるでリーマンショックを予見するような金融パニックの傑作で、その驚愕のストーリーと詩的なダイアローグの数々にインスパイアされたクローネンバーグ監督がわずか6日で脚本を書き上げた、新たなクローネンバーグの代表作になったクールな金融ホラー映画。

■2012年 フランス=カナダ映画/上映時間:109分/監督・脚本:デイヴィッド・クローネンバーグ/原作:ドン・デリーロ/出演:ロバート・パティンソン、ジュリエット・ビノシュ、サラ・ガドン、マチュー・アマルリック、ジェイ・バルリェル、ケヴィン・デュランド、ポール・ジアマッティ ほか

オフィシャルサイト:http://cosmopolis.jp/

中野 豊

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