「狂馬・巴里」です。世界的なハダカ・アートショーの裏表を魅せるフィジカル・エンターテインメント・ドキュメンタリー。(点数 80点)
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ヌードが猥褻なら、第一にそれを創った神こそが断罪させなければならいわけで、そんな思いでパリへ行った折に「Crazy Horse」に吸い込まれてしまうのは、健康な人間にはごく自然なのだと思います。
びっくりしたのは訓練した女性の動くヌードの美しさは目から鱗が落ちる思いでした。世にミスなんとかだのと美しい健康美のコンテストが存在するのならば、水着なしで踊るべきではないのだろうか?と妄想させられました。
さて40本近い長編ドキュメンタリー映画を監督してきた『BELLET アメリカン・バレエ・シアターの世界』、『コメディ・フランセーズ/演じられた愛』、『パリ・オペラ座のすべて』で知られるフレデリック・ワイズマンの最高傑作です。
1951年にアラン・ベルナルディンによって設立された世界一有名なパリのストリップバー・キャバレークラブ「Crazy Horse」は、筆者的にはルーブル美術館と共に一度は訪れたい名所です。その「Crazy Horse」に二ヶ月以上はり付いて撮影したドキュメンタリー映画。本編では振付師フィリップ・ドゥクフレ氏が演出をした新たなるステージのリハーサル風景、下克上的踊子オーディション、最高のパフォーマンス、バックステージの様子を追います。
かつて浅草のフランス座でストリップを見に出かけると、顔色ひとつ変えずに一点集中視線のオジさんの姿が妙に可笑しかったりしました。日本というところで長い間、性の罪悪感を抜きがたく植えつけられて育つと、いくら理屈でそれをはねのけながらも、あたまの中のどこかでは深く曲がったワイセツ感がこびりついてしまうのでしょう。それをパリのダンサーたちが少しずつはぎとってくれます。
■2011年 フランス=アメリカ映画/上映時間:134分/製作:イデアレ・オーディエンス/監督:フレデリック・ワイズマン
オフィャルサイト:http://crazyhorse-movie.jp/
(中野 豊)