ガッツがその自慢の長剣を振りかざし敵をなぎ倒しながら前に進む姿はまさに血路を開くと形容しても差し支えないだろう。(点数 75点)
(C)三浦建太郎(スタジオ我画)・白泉社/BERSERK FILM PARTNERS
今作のキーを強いて挙げるならば「夢」。
グリフィスもガッツも己の夢に殉じようとしている。だが、夥しく流れる血と飛散する脳漿の代償として与えられる「夢」がグリフィスは一国の主人になることであっても、その犠牲は仲間の死であったり自分が受ける傷であったりと対価は大きい。
それぞれが夢を掴むために足掻きその代償として伴う多くの痛みはその夢があまりにも大きく、まさに血肉と引き換えにしなければ得られないものであることを痛感させられる。
今回はアクションシーンが多めで、ガッツの剣豪ぶりやキャスカの流麗な剣さばきが見れるのも今作の特長だ。
後半で、グリフィスはガッツと真剣仕合をして辛くも敗れるのだが、その後のグリフィスの破滅的な行動があまり納得がいかない。そこはグリフィスにとってガッツの存在がいかに大きかったのかの傍証となるようなのだが、彼にとって本当の友とはお互いに自分の夢を持ちそれに向かって進むライバルを言うのではなかったのだろうか。本来ならば仕合に勝ったガッツを呵々大笑し褒め称えガッツの新しい人生の門出を祝福するのが、私の思うグリフィスの人間的度量のはずだった。しかし、このグリフィスの行動はその後のストーリーの流れを決める大きなターニングポイントなので外せないエピソードだったのだろう。だが、グリフィスらしからぬ人間的な誤ちではあった。おそらくグリフィスにとってこの事件が唯一の失敗だったのかも知れない。
物語の佳境はグリフィスたち鷹の団が仕掛ける難攻不落の要害であるドルドレイの攻略なのだけれど、鷹の団を河を背に配置して文字通り背水の陣を敷くのだが、兵士に腹をくくらせる効果だけを期待するのではなく、城攻めにはもう一つの作戦があった。作戦としてはそれ程新味は感じなかったものの序章で虜囚となった憎めない将校がまた脚光を浴びていて面白い。そして、登場人物が口にする科白の端々に男尊女卑の思考を匂わせており、それについて何か箴言するつもりは無いのだが、中世の殺伐とした人間観がにじみ出ていて、心を異世界へといざなう。女性にとって辛い時代なのだろうけれど、男にとっても命が安く買い叩かれるこの世界は御免こうむりたい。ファンタジーという異世界を描きながらもそこはベースとなっているのは中世なのだからこのような人生観が現代に生きる人間にも逐一身に堪えるのである。
荒涼とした世界の中で築かれる仲間との友情には胸を熱くさせられる。それは夜の海に浮かぶ灯台の光のように微かだが、心を奮わす確かな希望だ。
バイオレンスと性描写がどぎついので見る者を選ぶ映画かも知れないが、彼らが嘱望しつつもそれに振り回される「夢」の軌跡に注目しても良いだろう。
(青森 学)