頭を丸めて煩悩を払おうとする候杰の決意は、人は何歳になってもやり直せることを教えてくれる。(点数 60点)
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拳銃や小銃を持った兵士に対しても手にする武器は棍棒や剣。武術鍛
錬を通じて己を高めようとする僧たちは、圧倒的な不利にもかかわら
ず敵に背中を見せない。それは西洋の物質文明には屈しない、科学力
では劣っていても4000年の歴史を持つ文化の力では決して負けていな
いという中国人の矜持。革命と内戦・欧米の介入、時代の荒波は外界
とは隔絶した寺院の中で修業を積む僧たちにも襲い掛かり、容赦なく
戦乱に巻き込んでいく。
【ネタバレ注意】
辛亥革命直後、軍閥の指揮官・候杰は少林寺に逃げ込んだ敵将を殺害
する。その後、義兄でもある将軍を暗殺しようとするが、腹心の部下
・曹蛮の裏切りにあい、重傷の娘を抱えて少林寺に助けを求める。
かつて土足で蹂躙した少林寺の僧たちに救われて、候杰は過去を見つ
めなおす。権力のみを目的に生きていた人生が、自分を信頼してくれ
ていた将軍の寝首をかくつもりが信頼していた部下に足元をすくわれ
る結果に終わった皮肉。一方で僧たちは慈善事業に励み、武術を学ん
でもそれを自己の欲望を満たすために使わず、魂の高みを目指してい
る。そんな彼らの生き方に触れ、頭を丸めて煩悩を払おうとする候杰
の決意は、人は何歳になってもやり直せることを教えてくれる。
人が作ったものはいつか壊される、しかし、人が伝え守ってきた少林
寺の精神は途絶えはしない、雪の降る中修練に励む少年僧たちの姿は
1500年受け継がれてきた少林寺の思想と次世代への希望を象徴する。
(福本次郎)