常識では測りきれない善悪の彼我を越えた登場人物の葛藤を描く。(点数 50点)
(C) 2010 Blitz Films Limited.
所かまわずタバコを吹かし誰彼となく酒をせびるが、己の定めた正義
に対するこだわりは人一倍強い刑事。犬を焼き殺し、“マイケル・ジ
ャクソンの排泄物”を保管するなど歪んだ精神を持ちながらも鋭い洞
察力で警察を手玉に取る連続殺人犯。そんな強烈な個性の2人の前では、
良識派刑事のゲイという性癖が清潔に見えるほど。映画は、ロンドン
の犯罪多発地区、自分のルールに従って行動するはみ出し刑事と、マ
スコミを利用して警察を挑発する犯人、さらに犯人から情報を買うジ
ャーナリストといった、常識では測りきれない善悪の彼我を越えた登
場人物の葛藤を描く。
【ネタバレ注意】
巡回中の女性警官が射殺され、捜査に当たるブラントは新任のナッシ
ュとコンビを組む。犯人のブリッツは新聞記者にネタを売り、紙上で
犯行声明を出した上、ブラントの親友・ロバート警部を惨殺する。
ブラントの頭の中にはあるのは悪党をぶちのめすことだけかと思いき
や、同僚へのきめ細かい配慮を見せたりする。本当は気の優しい男な
のに時に暴力の衝動が抑えきれない、だからこそあえて狂犬のように
悪ぶっているブラントの複雑なキャラクターが非常に魅力的。
マスコミをあおり警察の無能をあざ笑う構図は「ダーティハリー」に
通じるところがあるが、この作品では対極にあるはずのブラントの闇
とブリッツの闇が底流でつながっているかのごとき不気味さを漂わせ
ていた。
(福本次郎)