反逆のシンボルとしてのロックではなく、真摯に音楽に取り組む“音楽家”としての姿が非常に新鮮だ。(点数 50点)
(c)2009 Steel Curtain Pictures, LCC, All Rights Reserved
板に打ち付けた釘にワイヤを巻き付け、コーラの瓶を押し込んでピン
と張れば即席の弦楽器の出来上がり。音楽なんて誰でも作れるしどこ
でも演奏できるとジャック・ホワイトが実証するオープニングは、最
高にエスプリが効いている。映画は、ロックの黎明期から活躍するジ
ミー・ペイジ、電子的なアレンジでギターの表現に革命をもたらした
ジ・エッジ、ロックの現在を担うジャック・ホワイトの3人が、各々歩
んできた半生を振り返る。反逆のシンボルとしてのロックではなく、
真摯に音楽に取り組む“音楽家”としての姿が非常に新鮮だ。
【ネタバレ注意】
ジャック・ホワイトが、テクノロジーを多用するジ・エッジと顔を合
わせたら「殴り合いになる」と予言するが、ページを加えた3人はごく
自然に打ち解け、お互いの音楽へのリスペクトを隠さない。
特に、ジ・エッジが、最新機器に囲まれたスタジオで己が頭に描いた
音がスピーカーから生まれるまで数十もあるスイッチを調節する現場
は、楽器の演奏技術とはまた異次元のセンスが必要とされることを饒
舌に物語る。ひとりエコーのような効果など、演奏そのものも大切だ
がそれ以上に電子的な加工でサウンドがより豊かな表情を見せるのに
気づき、実践してきたジ・エッジならではの音楽理論は参考になった。
最後に3人でギターを奏でメロディをハモらせるシーンには、ロックに
人生を捧げてこられた感謝と喜びが満ち溢れ、改めて彼らの偉大さを
認識させられた。
(福本次郎)