ノーベル文学賞受賞作家 トーマス・マンの原作を総合芸術=映画へと昇華させた、ヨーロッバ映画の最高峰!(点数 95点)
DEATH IN VENICE (C) 1971 Alfa Cinematografica S.r.l. Renewed 1999 Warner Bros., a division of Time Warner Entertainment Company, L.P. All Rights Reserved.
映画は本+画(え)の匠。
ゆえに感動した小説でも映画化されてガックリという経験をされた方も多いと思います。
成功例(本を凌駕した)で今 頭をよぎったのは『ゴッドファーザー』(原作:マリオ・プーゾ/監督:フランシス・フォード・コッポラ)と『2001年宇宙の旅』(原作:アーサー・C・クラーク/監督:スタンリー・キューブリック)や『ショーシャンクの空に』(原作:スティーヴン・キング/監督:フランク・ダラボン)、『マディソン郡の橋』(原作:ロバート・ジェームス・ウォラー/監督:クリント・イーストウッド)です。
「そう言えばノベルもあったの?」と言わせてしまうほど原作のイマジネーションを超越した本作!
さて、どこが素晴らしいのかを考察してみます。
例1)
・原作:この少年の美しさに、アシェンバハは唖然とした。青白く優雅に静かな面持ちは、蜂蜜色の髪の毛にとりかこまれ、鼻筋はすんなりとして口元は愛らしく、やさしい神々しい真面目さがあって、ギリシャ芸術最盛期の彫刻作品……。
・映画:監督自らが探しあてた素人、ビョルン・アンドレセンの登用。その容貌に言葉は不要です。
例2)
・ダーク・ボガード演ずる主人公なる中年男。原作の小説家から、映像化に栄える「指揮者」に変更 。
それをそのまま‘大作曲家グスタフ・マーラー(1860~1911)’に置き 換えてしまうヴィスコンティ監督の人物設定の妙に唸るばかりです。
航海中の客船で憔悴しきった中年男の横顔にマーラーの「アダージェット」が重なる名シーン。
この映画のために作曲されたのかと思うほどにマッチgood.
例3)
劇中の滞在リゾートは原作の舞台をそのまま継承。リド島のリゾート 文字通りホテル「デ・パン」♪ 旅行気分が味わえます。
例4)
美への畏れと憧れは映画・原作ともにわかります。それプラス男色傾向も感じられる本作……。
原作者トーマス・マンはホテル「デバン」へは奥さまとお子さま連れで実際に行ったそうです。
故にマンはヘテロということになります。
対して貴族出身 ヴィスコンティ監督は、魔性の美男子ヘルムート・バーガーを育てあげ、晩年は愛人関係にあったそうで、ナチュラルボーン・ゲイだと思っていいでしょう。
アシェンバハに自らを重ね合わせたのかもわかりません。
映画ファン必須映画の一本。ご覧あれ!
※カタカナ表記は他の媒体・ドキュメントと異なっていることがあります。
■1971年 イタリア映画/上映時間:131分/監督:ルキノ・ヴィスコンティ/出演:ダーク・ボガード、ビョルン・アンドレセン、シルヴァーナ・マンガーノ
オフィシャルサイト:http://www.death-in-venice.net/
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(中野 豊)