英国王のスピーチ - 樺沢 紫苑

いろいろな意味で、見ごたえのある一本だと思います。(点数 90点)


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ウィリアム王子とケイト・ミドルトンさんの世紀のロイヤル・ウェディングが4月29日に迫り英国王室への注目度が高まる、とともに
映画『英国王のスピーチ』に、再び脚光が当たってます。

『英国王のスピーチ』の主人公ジョージ6世は、ウィリアム王子の曽祖父にあたります。

ご存知のように『英国王のスピーチ』は、今年のアカデミー作品賞を受賞しています。

『英国王のスピーチ』は、誰が見ても感動する手堅さがあります。

王室という特殊なシュチエーションを使いながら、そこに描かれるのはコンプレックスの克服であり、夫婦愛です。

それは、誰もが共感できる普遍的なテーマと言えるでしょう。

コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム=カーターら主演の3人の演技が素晴らしい。

おそらくは、今後、彼らの「代表作」と言われるようになりそうな、そんな傑出した出来栄えです。

ただ映画としては、落ち着いた安定感のあるストーリーを、俳優の演技をじっくりと、安定感のある映像で見せる、という映画の古典的なパターン。

そこに、目新しさや斬新さがない、という点はしかたがありません。

アカデミー作品賞の対抗馬であった『ソーシャル・ネットワーク』の方を私は応援していましたが、Facebook創設者のマーク・ザッカーバーグの成功ストーリーを、「藪の中」風の謎めいたストーリーに書き換え、登場人物が早口で喋くりまくるという、見たことがないほど
スピーディーな展開の映画でした。

じっくり見せる『英国王のスピーチ』に対して、猛スピードでかけ抜ける『ソーシャル・ネットワーク』。

Facebookを知らない高齢者が多いと言われるアカデミー会員が選ぶ、アカデミー賞ですから、『英国王のスピーチ』が受賞したのも納得がいきます。

『英国王のスピーチ』で私がおもしろかったのは、吃音の治療の過程です。

ラジオが普及し始めた時代、吃音に悩むジョージ6世が、国民にメッセージを伝えるために、吃音を克服しなければいけない。

そんな状況の中、スピーチ矯正の専門家・ライオネルと出会い、二人三脚で吃音治療を開始します。

吃音というのは、その原因として精神的な要素が大きくからんでいるといわれるように、「吃音の治療」とはいいながら、そこでくり広げられるのは「心理療法」そのものです。

ジョージが、ライオネルに治療をまかせるか悩むシーンは、「この病院、この先生に任せて大丈夫なのか」と精神科を初診する患者さんの心理にも通じます。

また、治療は進んでいるのに、ジョージとライオネルの対立が深まり、決裂を迎える場面など、まさに心理療法そのものと言えるでしょう。

心理療法が進んで行くと、自己開示がすすみ、クライアントとセラピストの親密度は深まっていきますが、同時にクライアントの甘えや依存なども引き出され、クライアントの怒りや葛藤など、ネガティブな感情もドンドンと出てきますから、クライアントとセラピストで怒鳴り合うような場面も出てきますし、治療が中断に至ることもあります。

まさに、ジョージとライオネルの関係もそうで、事実を元にした映画ではありますが、細部にいたっても心理描写が緻密で、心のドラマとして凄いリアリティを感じました。

ジョージを支えるエリザベスの献身ぶりも感動的です。
セリフは少ないながらも、その演技でジョージを気遣い影から支える妻を熱演しています。

ヘレナ・ボナム=カーターといえば、私にとっては『ファイトクラブ』のマーラ・シンガー役ですが、本格女優へと大きく成長したなあ・・・とつくづく思います。

ヒトラーの記録映像。饒舌な演説で人々を先導するヒトラー。
吃音のジョージとは、実に対照的。

「マスメディア」が政治や世界を動かす時代になった!
あるいは、第二次世界大戦の勃発直前の緊張感が、映画のスパイスになっています。

いろいろな意味で、見ごたえのある一本だと思います。

樺沢 紫苑

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