龍三と七人の子分たち - 中野 豊

元ヤクザじいさんたちの平均年齢70歳超え、よって採点も……。(点数 75点)


(C) 2015「龍三と七人の子分たち」製作委員会

北野武監督はヤクザを絡めたコメディ映画を創りたかったのではと深読みすると、芸人畑の名匠が遂に偉業を成し遂げてしまったのです。

北野映画のイメージは、寡黙で映画の世界が絵画のようであり、どんな絵を描こうとしているのかラストまで予測不能でした。
対象をキャメラが捉え、四角いフレームの中にショートセンテンスの連続性を構築し、多くを語らないイマジネーションと不意に訪れるバイオレンスのカタストロフに特に初期の作品では衝撃を受けたものです。
ところが、本作は初めて脚本の読み合わせをしたということから、寡黙な作品ではないことがわかります。

それがうまくいったのかは観客が決めることですが、元ヤクザじいさんvs詐欺集団のガキという基本ラインから台詞の応酬からなるジェネレーションギャップの可笑しさが湧き出してきます。

元ヤクザの組長「鬼の龍三」は、ある日 家族の留守中に一本の電話を受けます。相手は「お父さん?(略)500万用意しないと会社をクビになってしまう」と……。龍三は金をかき集めて待ち合わせに場所に出向き、息子のヘマの詫びとして指をつめようとすると、オレオレ詐欺師の方かビビッて逃げてしまうのです。詐欺集団は表向きはIT企業ですが、その実態は悪徳商法で稼ぐ組織だったのです。
ある日、かつての仲間が商店街で不良に絡まれているところに遭遇し、その場を治めた顔見知りの刑事と一杯ひっかけながら、オレオレ詐欺集団の存在・やり口を知り、昔のヤクザ仲間に召集をかけて「若い奴らに勝手な真似はさせねぇ」と世直しに乗り出そうとしますが、みなもう高齢のためヨボヨボのヨレヨレ。それでも、これだけ生きてれりゃ何も怖くないじいさんの反撃開始とあいなるわけです。

映画の見所のひとつに、商店街のオープンセットの中 バスに役者を乗せたままのバス(カー)チェイス・チェイスが痛快です。
いままでの北野映画と大きく違う作風で、新たな北野映画の誕生が嬉しい。『アウトレイジ3』ならばヒットは確実かもしれませんが、一つにジャンルにはまり込まない映画作家の挑戦と見えます。

次回、その次の作品に北野武は何をしてくれるのか、楽しみが増えました。

■2015年 日本映画/上映時間:111分/監督・脚本・編集:北野武/出演:藤竜也、近藤正臣、中尾彬、小野寺明、品川徹、樋浦勉、伊藤幸純、吉澤健、勝村政信、萬田久子、ビートたけし ほか

オフィシャルサイト:http://ryuzo7.jp/

中野 豊

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