魍魎の匣 - 福本次郎

◆膨大な情報量を持つ原作のイメージを損なわずに映画化する苦心が映像からにじみ出ているが、一本の作品として鳥瞰すると物語が非常に分かりづらく、結局何について語られ、どんなストーリーなのか一貫した答えが得られない。(30点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 凝りに凝った背景や小物、繰り返されるカットバック、非常に早い台詞回しなど、膨大な情報量を持つ原作のイメージを損なわずに映画化する苦心が映像からにじみ出ている。そしてその雰囲気は見事に表現できているのだが、一本の作品として鳥瞰すると物語が非常に分かりづらく、結局何について語られ、どんなストーリーなのか一貫した答えが得られない。原作を読んだ人にしか理解できないというのではなく、原作を読んでいても理解するのが困難。京極夏彦の世界観は描けていると思うのだが・・・。

 探偵の榎木津は元映画女優の陽子から失踪した娘の加奈子の捜索を依頼される。作家の関口はバラバラ殺人について調査するうちに新興宗教に行き当たる。そして美馬坂というマッドサイエンティストの研究所がすべての事件の鍵を握っていることを突き止める。

 「世の中に不思議なことなど何もないんだよ」という京極堂のセリフのように、バラバラ殺人と加奈子の失踪を合理的に結びつけ犯人にたどり着くというのが本来あるべきミステリーのはず。しかし、京極堂、榎木津、木場、関口の4人の関係を説明するために、4人が同時に自分の思っていることを口にして誰が何を言っているのか断片しか聞き取れず何がなんだか分からないというシーンが象徴するように、この映画は多くの要素を詰め込みすぎて混沌としてしまい、まったくまとまりを欠いてしまっているように思える。解説書片手に何度も見れば理解できるのだろうが、これほどのデータ処理能力を求められても見るほうは戸惑うばかりだ。

 手がかりを求めて箱型の研究所にもぐりこむが、そこで手足を切断されたまま生きている加奈子を発見したり、バラバラ殺人犯の久保を追い詰めたりと活劇は続く。さらに不死身の兵士を作る科学者や箱に憑りつかれた男、加奈子と陽子の秘密が暴露されたりと内容は二転三転するが、もはやその展開の速さには付いていけない。小さな箱に生きたまま閉じ込められた、人形のような加奈子の美しさだけが余韻を誘う。

福本次郎

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