釣りバカ日誌20 ファイナル - 福本次郎

◆不況、リストラ、給料カット。オフィスの空気はよどんでいくのに、ハマちゃんだけは危機感ゼロ。経営者のスーさんも、利益より従業員の幸せを考えている。こんな会社などないと分かっていても、映画のノリに引き込まれてしまう。(60点)

ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。

 不況、リストラ、給料カット・・・。暗い話題にオフィスの空気はよどんでいくのに、ハマちゃんだけはどこ吹く風と釣り新聞に目を凝らし、危機感ゼロ。一方の経営者であるスーさんも、自分の死期を間近に感じ、目先の利益よりも従業員の幸せを考えている。巧みに現在の世相を取り入れリアリティを持たせることで、こんな居心地のいい会社などないと分かっていても、ついつい引き込まれてしまう。せめて映画館の中にいる間だけは世間の憂さを忘れて、人生を謳歌しているハマちゃんとともに映画を楽しんでもらおうという作り手に好感が持てる。高齢者にはスーさんの生き方を通じて鮮やかな引き際を示す。夢を売るという映画の本質を忠実に実行する姿勢は心地よい。

 大型契約を結んだハマちゃんはスーさんと料亭の女将・葉子とともに北海道に釣り旅行にでる。そこで葉子の娘・裕美が地元の酪農家と同棲していたと知り、葉子はショックを受ける。ハマちゃんは両家の間に入り、ふたりの仲を認めさせようとする。

 物語の底辺に流れているのは他人への思いやり。ちょっとした感情のもつれもあるが、それはお互いを理解しようとしなかったり言葉が足りなかっただけで、筋を通して話し合えばきちんとわかりあえるのだ。葉子母娘の葛藤を通じて、優しさを失わない登場人物たちの人柄に安心できた。また、幻のイトウを釣りたいというハマちゃんが地元の釣り師に諌められるが、自然を愛する北海道の人々の気持ちをハマちゃんもまた大切にし、釣ったイトウをリリースするする。このあたり、釣りのだいご味より人情、あくまで松竹映画の味わいを残している。

 東京に戻ったスーさんは急に倒れて入院し、三途の川の渡し船に乗ろうとしてひと悶着起こす悪夢を見る。そのシーンはベタな笑いと安っぽいミュージカル仕立て。観客の年齢層を西田敏行と同年代以上に想定しているのだろう、CGを使った刺激の多い映像にするよりも、昔ながらの合成処理で最近の映画を知らない老人層にも受け入れられるような見せ方だ。退院したスーさんの会長退任演説をもってこのシリーズも大団円を迎えるが、彼の潔さこそ世代交代を促し景気を刺激するのではないだろうか。

福本次郎

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