「バカコール」は彼らには最高のほめ言葉、それをそのままこの作品の作り手にも贈りたい。(点数 70点)
(C)2011「行け!男子高校演劇部」製作委員会
子供じみたギャグからナンセンスなボケ、そして意表を突くパロディ。
俳優たちの大げさな演技と相まって、思わずイスから転げ落ちてしま
うほどのユニークな世界観を構築している。映画は、高校の演劇部に
入ってしまった新入生が芝居の楽しさに目覚めていく過程で、バカに
なりきることで自分らしさをさらけ出すだけでなく、一緒に夢を追う
友情の大切さにも触れ、さわやかなカタルシスさえ味あわせてくれる。
【ネタバレ注意】
男子高に入学したオガは演劇部に入部、引退した3年生に代わっていき
なり部長を任される。部を存続させるために部員を勧誘するが、集ま
ったのは演劇に興味はないがクセのある連中ばかりだった。
オガが部員の頭数をそろえようと親友のカジに入部を頼むシーンがケ
ッサクだ。ファミレスで隣席のカップルとシンクロし、断り続ける相
手の首を縦に振らせるために半ば脅してお願いする。あまりのくだら
なさに、見ている方も噴き出してしまった。全編にわたり、練り込ま
れたショートコントのようなエピソードの連続はベタと洗練が表裏一
体、最後までそのテンションは落ちない。
やがて彼らは演劇コンクールに出場を目標に猛稽古を始める。演目は
「最後の一葉」。正統な演劇とはほど遠い、それでも客席と一体にな
り、緊張感を共にする点においてまさにライブパフォーマンスの醍醐
味だ。会場から発せられる「バカコール」は彼らには最高のほめ言葉、
それをそのままこの作品の作り手にも贈りたい。
(福本次郎)