◆裏金疑惑の証人と美人警官殺人事件。裏切りと欺瞞、出世争いと保身、個人にとっての正義と警察の体面が正面からぶつかり、二つのスキャンダルが結び付く。そして謎が明らかになる過程でうちに刑事たちは疑心暗鬼に陥っていく。(40点)
裏金疑惑に関わる証人喚問と美人警官殺人事件。警察に巣食う巨大な悪と、腐敗した上層部に挑む刑事たちの奮闘をアンニュイなジャズの旋律に乗せる。裏切りと欺瞞、出世争いと保身、キャリアと現場、理想と現実。個人にとっての正義と警察の体面が正面からぶつかり、二つのスキャンダルが結び付く。そして、謎が謎を呼び、誰が誰と通じているのか、その過程が明らかになるにつれ刑事たちは疑心暗鬼に陥っていく。しかし、どんでん返しに次ぐどんでん返しの連続はとっててつけたような印象で、驚きよりも失笑を漏らしてしまう。
北海道警の婦人警官が他殺体で発見されるが、現場に赴いた所轄の町田は道警本部に追い返される。犯人は元恋人の津久井巡査部長と特定、射殺命令が出る。一方、本部の動きに疑問を感じる所轄の佐伯らは独自に捜査を開始、津久井が道警裏金問題で百条委員会に召喚されている事実を知る。
6人の刑事たちが組織にはびこる不正を暴くために自らのクビをかけて動くのか、と思いきや各人に温度差がある。証拠が集まるうちに事件の真相だけでなく、同僚たちの裏の顔も浮かび上がってくる構成は非常にミステリアスで息をのむ。だが、登場人物みな腹に一物抱えていて、本来の主人公かつ語り部である佐伯までが仲間をだましている設定では、見る者はどこに軸足を置いて推理すればよいのか戸惑う。観客の意表を突こうとする脚本の意図は理解できるが、これは単なるご都合主義に過ぎない。
やがて佐伯らは津久井を百条委員会に出席させるために一芝居打つ。その際も、ヒットマンが佐伯を狙撃したり、ヒットマンが雇い主であるキャリア警官を始末したり、さらに本当の黒幕が姿をあらわしたりする。ここまで来ると物語は収拾がつかず混沌を極めるばかり。とどめは警察内部の敵味方・死者も生存者も入り乱れてのジャズセッションには、もしかしてこの映画自体が壮大なギャグなのかと思った。いずれ、角川春樹という強烈な個性が反映された“珍品”として再評価されるかもしれないが。。。
(福本次郎)