◆フェアレディZを巡る因縁話。Zへの偏執狂的な愛が語られ、車好きには楽しめる(59点)
講談社「ヤングマガジン」連載の同名マンガの映画化。監督は「GUN CRAZY」シリーズや「SCORE」の室賀厚。
高校3年生の朝倉アキオは、所有者が次々と事故死するため、「悪魔のZ」と呼ばれるフェアレディS30Zに魅せられていた。そのZがスクラップになりかけていたところを発見し、新車同様によみがえらせる。一方、かつてのZのオーナーの友人で、「ブラックバード」と呼ばれるポルシェ911を走らせる外科医の島達也は、よみがえったZを再び眠らせるため、首都高湾岸線で朝倉アキオとのバトルに挑む。
主演は中村優一、加藤和樹のイケメン2人。一方は高校生でZ、もう一方は外科医でポルシェに乗っている。周りは美女ばかりで、当然ながらモテモテだ。
他の登場人物も、モデルやカメラマン、留学を控えた美人女子高生など、余りに自分とは無関係なカッコいい人たちばかり。懐かしいバブルの香りが濃厚に漂ってくる。最初は共感どころか反発さえ覚えてしまった。
だが、Zを巡る因縁話がなかなか面白い。Zに対する偏執狂的な愛も素直に語られていて、次第に引き込まれた。
見どころの首都高バトルだが、「ワイルド・スピード」シリーズなどのハリウッド的なカー・アクションの迫力を期待するとガッカリさせられるかも知れない。アクロバティックな走りはないし、クラッシュシーンも派手ではない。しかし、それがかえってよかった。見慣れている首都高なので、余りに非現実的なカー・チェイスではしらけてしまうだろう。車好きにはこの描写が正解だ。地味でも、スピード感は伝わってきた。
確かにバブルのころは、スポーツカーが身近だった。自分の周囲を考えても、フェアレディZ、RX-7、ポルシェ、スープラ・・・などに乗っていた。だが、今はそのほとんどがスポーツカーを手放し、ファミリーカーに乗り換えている。原作マンガの連載がスタートしたのがバブルの時期だから仕方ないのだが、今となってはこういう話はどうもピンとこない。
とはいえ、決してダメな映画ではない。車は「物」であっても、ときに「物」としての存在を超え、所有者の一部になっていく。車と所有者の間には独特の関係がある。その「関係」がきちんと描かれている。登場人物のバブリーな薄っぺらさはどうしようもないが、主役はあくまでも人ではなく車だ。車好き、特にZが好きな人にはたまらないと思う。首都高から見る夜景も美しく描かれていた。
(小梶勝男)