永遠の僕たち - 青森 学

有限の命に対してどう向き合うのか。その解答のひとつが提示されている。(点数 85点)

他人の葬式に参列するのが趣味という人がいたら多くの人は眉をひそめるだろう。死者への冒涜であるし、故人と親しかった者の心の傷に塩を擦り込むような行為でもある。
この映画の主人公イーノックもそのような不謹慎な青年だと最初は思っていた。
だが、本当は彼には他人の葬儀に参列し続ける深い事情があった。

その理由は映画を観てもらうとして、そこである少女(アナベル)と出会い知り合いになるが彼女も不治の病を患い余命は限られていた。この映画で興味深いのは他人の死を遠目から観察するのが趣味という共感出来ない動機を持つイーノックが余命3ヶ月の恋人を持つことで死を観察する者から、その悲しみを引き受ける当事者になっていく心の変遷がダイナミズムを生んでいることである。中盤まではぐいぐい引っ張っていき、終盤でノーイックの深い苦悩も明らかになって、実は輻輳した哀しみがこの映画には横溢していることを鑑賞者は知ることになるのだ。

また、ノーイックだけに見える幽霊のヒロシ(加瀬亮)の存在もおろそかにできない。日本軍の特攻隊員だったヒロシはノーイックのメンターとなって孤独な彼を支えるのだが、その特殊性ゆえにノーイックの孤独を深めるジレンマになっている。

ノーイックとアナベルの恋が単なる甘ったるいだけの物語にならないのは、お互いが深い問題を抱えながらも平静に振る舞おうと努力するいじましさというのだろか。ふたりの恋にはのどかさを装いながらも決められた期限が迫る緊張感が潜んでいる。その限られた時間を懸命に生きるふたりの生が、死とコントラストを成してふたりの時間に彩りを添えるのだ。

ガス・ヴァン・サントといえば、私は『グット・ウィル・ハンティング』を筆頭に寡作ではあるもののその高い問題意識と世に問う問題の切り口の鮮やかさに舌を巻く思いだったが、今回もまた観る者の心の琴線に触れる作品を送り出してきたことを言祝ぎたい。

映画の最後でヒロシが特攻前夜にしたためた想い人へ宛てた手紙を読むモノローグがあるのだが、ここはぜひ心して観ていただきたいシーンだ。ここでもヒロシを通してクリエイター側の死生観が要約して述べられている。皮肉な事だが、死があるからこそ生きることが狂おしいほど愛おしくなるものなのである。

この作品は登場人物の死を通して生きることの意味を真摯に見つめた秀作である。

この映画を観て有限である人生を悟ることができたら、きっとこれから見る風景はもっと鮮やかに見えてくることだろう。

青森 学

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