時をかける少女 - 渡まち子

◆70年代の過去を特別に良い時代とも悪い時代ともとらえていないのがいい(65点)

 「時かけ」が何度も映画化されるのは、物語の骨格が魅力的な上に何通りものバリエーションが可能なためだ。高校3年生の芳山あかりは、薬学者の母・和子が交通事故に遭ったと聞いて病院に駆けつける。母は「1972年4月の土曜日の実験室、深町一夫に会いにいく」とうわ言のようにつぶやいた。和子は初恋の人・深町にメッセージを伝えるため、時間を越える方法の研究をしていたのだ。母に代わって過去へ行く決心をしたあかりは、和子が開発した薬を飲んでタイムリープに成功するが、間違って1974年に着いてしまう。あかりは偶然出会った大学生で映画監督志望の涼太を強引に巻き込んで、深町一夫を探しはじめるが…。

 実写、アニメと何度も映像化されているので物語の大筋は承知しているのに、なぜか毎回ワクワクするのはタイムトラベルもの特有の笑いと切なさが自然と胸に立ち上がってくるからだろうか。この物語には、甘酸っぱい青春映画のきらめきが詰まっている。2010年版の本作は、大林宣彦監督作品のリメークではなく後日談という設定で、大林版のヒロイン芳山和子の娘・あかりが主人公。同じく後日談だったアニメ版でヒロインの真琴の声を担当した仲里依紗が本作で主役を務めるということも、映画同士の不思議なつながりを感じて嬉しくなる。

 70年代の過去を特別に良い時代とも悪い時代ともとらえていないのがいい。過剰なノスタルジーにひたることなく物語を活写するので、21世紀の現代っ子あかりが程よい異化効果となり、生き生きとして見える。彼女は、目的を達成するべく積極的に70年代に順応し、いつしかサイケな服を着こなして、楽しそうに銭湯に通ったりするから逞しい。演じる仲里依紗のみずみずしい演技がとても魅力的だ。やがてあかりは涼太に淡い恋心を抱くが、二人にはやるせない運命が待っている。タイムリープが終われば記憶はなくなっているのに、心では覚えている不思議。人が人を大切に思う心と、時さえも越えてみせる出会いの素晴らしさを感じる。「時かけ」の少女はいつの時代も時間を駆け抜けてさわやかな風を届けてくれるのだ。

渡まち子

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