指先からつま先までぴんと筋が通ったような身のこなしと、鋭い視線はまるで野生の豹のよう。ヒロインの動きはしなやかさとスピードにあふれ、時に力強さすら感じさせるが、本格的に踊るシーンは代役を使っているのがミエミエだ。(30点)
指先からつま先までぴんと筋が通ったような身のこなしと、獲物を狙うような鋭い視線はまるで野生の豹のよう。その動きはしなやかさとスピードにあふれ、時に力強さすら感じさせる。バレエという優雅さを表現するアートの陰で酷使される肉体は研ぎ澄まされた美しさをまとい、身体能力の高さには瞠目する。しかし、ヒロインを演じた黒木メイサにバレエの素質がなかったのか、本格的に踊るシーンは代役を使っているのがミエミエ。なぜバレエを描く映画なのに、きちんとバレエの修練を積んだ女優を使わなかったのか。
双子の弟の死がきっかけでバレエを始めたすばるは、ストリップ小屋で踊っているところをアメリカンバレエシアター所属のリズという有名ダンサーに声をかけられる。「白鳥の湖」のオーディションでうまく踊れなかったすばるは、他人の空気を読む修行のためストリートダンサーの集いに顔を出す。
このリズというバレリーナの存在が謎だった。すばるとの不自然な出会いに始まり、すばるの行く手にちょくちょく現れては挑発したり助けたり励ましたり。原作に倣っているのかもしれないが、米国のトップバレエ団に所属するダンサーが場末のストリップ小屋に来るなどは考えられないし、そのステージに立っているすばるの才能を一瞬で見抜くなどということがありえるのか。しかもリズに扮したAraという女優は信じられないほど演技が下手で、ただでさえ現実と乖離した物語を絵空事にみせるという負の相乗効果。まったく勘違いしたキャスティングだ。
さらにすばるとライバルの両親との複雑な関係、時折差し込まれる記憶障害への恐れ、黒猫に象徴される運命の転換点。そういったものが思いつきのように羅列された後、クライマックスの上海でのコンクールに舞台は移る。そこですばるはストリップ小屋の社長が死んだという知らせを聞き、自失のあまりずぶ濡れになる始末。大切なコンクールの前にコンディション管理もできないようではとてもプロにはなれないだろう。おまけに高熱を押して出場したのに優勝してしまう。まあ、ここまでありえない設定が続くと、かえって面白くはあるが。。。
(福本次郎)